見出し画像

【こんな映画でした】87.[みかんの丘]

2021年 2月18日 (木曜) [みかんの丘](2013年 MANDARIINID TANGERINES エストニア/ジョージア 87分)

 ザザ・ウルシャゼ監督(撮影当時47歳)の作品。初めて。2019年に54歳で亡くなっている。ジョージア(昔はグルジアと覚えていたはず)出身。これは見事に男性だけの映画であった。女性は主人公の孫娘だという女性の写真のみ。

 主人公のエストニア人イヴォをレンビット・ウルフサク(撮影当時65歳)、傭兵アハメドをギオルギ・ナカシゼ(撮影当時41歳)。この二人がメインであり、最後まで生き残ることに。

 舞台背景は1992年に勃発したアブハジア戦争と言われるアブハジア自治共和国とジョージアとの戦いである(2年後の1994年には停戦合意がなされたとのこと)。これでほとんどのエストニア人はエストニアに戻ったようだが、主人公とその隣家のマルゴスはその戦乱の地に残ったまま暮らしている。

 そのマルゴスが蜜柑を栽培しており、折角生った実を腐らしたり放置したままは申し訳ない、とせっせと摘み取りをしている。イヴォはその収穫した蜜柑を入れるための木箱を作っている。オープニングシーンがそうだ。

 この映画を見ながら思いだしたのは昨年(2020年)4月に観た[トンマッコルへようこそ](2005年 WELCOME TO DONGMAKGOL 韓国 132分)である。敵同士が同じ場所で面倒をみてもらうことになり、.....という設定である。

 今作もそれぞれ一人ずつではあるが敵対している。その二人が徐々に人間らしさを取り戻していく様子を描くことになる。そして、その背景にある戦争の悲惨さが浮き彫りにされていく。

 ラスト近くジョージア人の兵(ニカ)は、もともと俳優だったと分かり、イヴォは戦争が終わったらアハメドと二人でお前の芝居をトビリシに見に行こう、と話す。そしてそれが悲しい出来事の伏線であるのが直ちに分かるように。そして、最後に事件が起きる。

 別の軍人(ゲリラ?)がやって来て、アハメドのことを疑い、撃ち殺そうとする。そこで室内にいたニカが銃で応戦して彼を守ることに。ただその際、アハメドの横にいたマルゴスは射殺されてしまう。家の陰に逃げ込んだアハメドは銃をニカから受け取り応戦する。

 ようやく終えたかと、ニカが倒れている兵たちのもとに近寄ると銃声。ニカは倒れる。まだ死んでなかった兵に撃たれたのだ。すぐにアハメドがその兵を射殺する。私見だが、俳優でありプロの兵ではないニカの油断だったと思う。

 かくしてイヴォは隣人マルゴスを失い、アハメドはようやく理解し合えるようになっていたニカを失うことに。二人をそれぞれ埋葬するシーンで、アハメドはイヴォに問う。もし自分が死んでいたらどこに埋葬してくれたか、と。イヴォはニカをそうしたように、自分の息子(戦乱直後に戦死。反対したのに志願して)の墓の横に、ただ少し離して、と。

 アハメドは苦笑いをして去っていく。おそらく戦線に戻っていく。あと何年この戦乱が続くのか具体的な年号の記載がないので分からない。しかし、彼も無事に家族のもとに帰れたかどうか。それは分からない。イヴォのその後も分からない。
 ラストシーンは、アハメドが車で向こうの方へと夜の闇を切り裂いて走っていくのを俯瞰でとらえて終わる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?