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【こんな映画でした】16.[ミッドナイト・エクスプレス]

2022年 1月19日 (水曜) [ミッドナイト・エクスプレス](1978年 MIDNIGHT EXPRESS アメリカ 121分)

 1980年11月28日に梅田ロキシーで観ているようだ。今回は二度目。アラン・パーカー監督作品。やはり凄まじかった。最初に観た印象通り。酷いシーンは目を背けたくなる。国家というものの暴力装置としての刑務所はやはり酷いものだ。

 これは実話の映画化。ハシシという一種の麻薬をトルコから持ち出そうとしたアメリカの青年が逮捕され、4年2ヵ月の刑に服することになるというもの。あと53日で出所できるというところで、最高裁からの新たな指示で懲役30年に変更される。

 そこでついに意を決して「ミッドナイト・エクスプレス」に乗車する決断をするということに。もちろん簡単にはいかず、三人で企画していたが次々と脱落し、最終的にビリーひとりが脱獄に成功する。マックスに待っていろよ、助けに来るから、と別れを告げて。その後のマックスについて、どうなったかは触れてないのだが。

 この映画が作られたせいでトルコとアメリカの外交関係が悪化したようだが、それでもこれを切っ掛けに改善されたこともあったようだ。

 メイキングで本人が出てきている。若気の至りでのちょっとしたミスが、国家間のトラブルに巻きこまれて散々な目に遇うことになるこの事件は、彼にとってはとても不幸なことであった。だが、現実の世界はそういうものだろう。自由や人権が保障されていることの有難味を語っていた。

 あと別の視点だが、刑務所ではホモがやはり存在するということ。トルコではホモは罪のようだが、男ばかりの刑務所にずっと入れられていたら、そのようなことは大いにあり得ることだ。この映画でもビリーが少しそのようなことをされるシーンがある。最終的にはノー、としているが。

 恋人のスーザンが面会に来た時のシーンも強烈である。ガラス窓越しのそれで、当然手を触れることもできない。ビリーは、ブラウスを脱いで欲しいと頼む。もちろん裸になるわけではなく、ブラウスの前のボタンを一つ二つはずしただけだった。それを見てビリーが何をしたかは、画面には映し出さない。

 面会時間が終わる時、スーザンは持ってきていた彼の家族のアルバムを見せながら、最後の写真の貼られてないページ(裏表紙内側)を指して、あなたの友人のフランクリンが仕事で今ギリシアに来ている、と。

 このほのめかしを理解したビリーは、トイレで裏表紙を剥がし、中にあったドル札を手にすることに。つまり脱出のための軍資金である。このうち100ドルを所長に渡して病院に入れてくれるように嘆願する。

 ただこの所長はやはり曲者で、金を取るだけ取って病院に入れるどころか、秘密の部屋に連れ込んで性的暴行に及ぼうとする。そこでビリーは、ズボンを下ろした無防備な体勢になった所長を突き飛ばす。この時、壁の帽子掛けの金具に頭をぶつけた所長は気絶する(後で亡くなったかもしれない)。ビリーは所長の拳銃を奪い、手にして殺そうとするのだが、それはできなかった(思いとどまった)。

 そして刑務官の制服に着替えて刑務所を出ていく。道路に出て、脱出できたことを確認できた時、その喜びのあまり飛び上がるのだったが、そのストップモーション(ロング)で映画は終わる。

 重い作品である。しかしやはり存在すべき、つまり観られるべき映画の一つだろう。麻薬・不当な裁判・非人間的な扱い・刑務所・家族愛・国家間のトラブル・国家のメンツ、等々。
 なお主演のブラッド・デイヴィス(撮影当時28歳)は、惜しいことに1991年に病死している。

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