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【こんな映画でした】7.[モンスター]

2021年11月 8日 (月曜) [モンスター](2003年 MONSTER アメリカ/ドイツ 109分)

 パティ・ジェンキンス監督作品。女性監督、初めて。アイリーン・ウォーノス役はシャーリーズ・セロン(撮影当時27歳)が体重を増やして演じている。映画[スタンドアップ]のキリッとした美しさは微塵もないメーキャップである。セルビー役はクリスティナ・リッチ、撮影当時23歳。[耳に残るは君の歌声](2000)で観ている。

 内容的に観ているのが辛い映画の一本であ.る。簡単に言うと売春婦として生きざるを得なかった一女性が、身を守るために殺人を犯し、死刑となった半生を描くもの。最後まで救いようのない悲しいストーリーであった。実話とのこと。

 そんな彼女を「モンスター」として、世間は非難するわけだ。世間とはなんとも非情な人たちの集合体であることか。以下、アイリーン・ウォーノスの話していることから抜粋。

(55分~)最も純粋なものこそ、何より深く人を傷つける。いかにも恐ろしいものはそんなにつらくない。経験した人間でないとわからない。
【純粋とか無垢、つまりザックバランに言うと世間知らずの人間というのは厄介なものだ。彼らの好意あふれる発言と行動は、いたく人を傷つけることになる。】

(65分~)人は誰でも娼婦を見下す。自堕落な生き方だと思うからだ。でも、この仕事には、強い精神力が要る。たった独りで夜ごと町を歩く。何があっても切り抜ける。私はそうやって生きてきた。何かを信じたら、私はそのためにすべてを捧げる。
【見下すなど、そんなつもりはないと私自身は思っている。しかし彼女たちからすれば感じ取れるレベルで、私たちは「見下」しており、彼女たちは見下されているのだろう。道徳を振りかざして彼女たちの生き方を非難してしまうのだ。それこそ何の権利もないのに。後段はまさしくその通りだろう。生きるということは、信じるということだから。】

(75分~)あんたにとって人間は善良で親切な存在でしょ。それでいい。そこがあんたの良さだから。(人を殺すのはいけないこと)。誰が言った。私は神様に対して何も恥ずかしくない。あんたが属する世界の考え方は承知さ。みんな偉そうに教えてる "汝、殺すなかれ" って。でも現実は甘くない。私は体を張って生きてる。.....人は日々、殺し合ってる。何のために? 政治? 宗教? そいつらは英雄? 違う。でも私にとって殺しは "方法" (註、生きていくための術、の意か)なんだよ。暴力男やレイプ魔は許しておけない。.....この私にほかのやり方があると思う? 私は悪人じゃない。とてもいい人間なんだ。私たちのような人間は虐げられる運命だけど、負けやしない。
【世間知らずの人間は単純に、そして根拠なく人間というものは善良かつ親切な存在だと認識しているのかもしれない。しかし実際、この世の中でまさに泥にまみれて生きていけば、決してそのような楽観的な人間観は持ち得ないだろう。むしろ人間というのは、悪意の塊であり、普段、表向きにはそれを隠しているだけなのだ、と認識すべきか。だから少し前の「いかにも恐ろしいもの」は分かりやすいので、ちゃんと警戒できるのだ。自分のことを悪人ではない、good person だと言っているのもその通りだろう。】

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