【こんな映画でした】790.[グッバイ、レーニン!]
2023年12月24日(日曜) [グッバイ、レーニン!](2003年 GOOD BYE, LENIN! ドイツ 117分)
ヴォルフガング・ベッカー監督作品。何をどう言えばいいのだろう。何という作品なのだろう。なぜレーニン? たしかにヘリコプターに吊されたレーニン像が空を飛んでいく(運ばれていく)シーンがある。東ドイツのおそらくベルリンにあったレーニン像が、東西ドイツの壁の崩壊(1989年11月10日以降)とともに打ち毀され、撤去されるシーンだ。今すぐ思い出せないのが残念だが、別の映画でもそのシーンを観ている。
「さよなら、レーニン」とは、レーニンに象徴される東ドイツという国家・国家体制に対する「さよなら」であろう。東ドイツという国家の崩壊は、1990年10月3日。「ドイツ民主共和国に再設置された各州がドイツ連邦共和国に加盟する」という名目(実質的には編入)で、東西ドイツの統一がなされた時をもって、東ドイツはなくなった。母親はその二日後に亡くなったとのこと。
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映画は、この母親が亡くなるまでの約11年間を描く。そして彼女は肝心の「壁の崩壊」の頃(1989年10月)には、意識不明で入院していた。ようやく目覚めたのは、その八ヶ月後である。東ドイツが崩壊しつつある状況を、彼女はまったく知らないままであった。
そこで息子アレックスは姉とともに、ショックを与えないために(医師のアドバイスでもある)彼女には一切その事実を知らさないことに決め、そこから延々と「偽装工作」を始める。つまり今も東ドイツは国家として健在であり、理想的な社会主義国家であることは間違いない、とでっち上げることにしたのだ。
その涙ぐましい経緯が描写される。それこそ今はやりのフェイクニュースを捏造して、母親に見せるのだった。どこまで彼女がそれを信じていたかどうかは、ついに最後まで分からない。知らないまま死んだのかもしれないし、実は知っていたのかもしれない。
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東ドイツという共産主義国家、映画では社会主義国家といっているが、その体制が世界で一番素晴らしいと信じて疑わなかった人々が間違いなく存在した。それも少数ではないかもしれない。そんな一人がこの映画での母親か。姉弟は中立かやや懐疑的なようだが、それでも母親のために偽装をするわけだ。
死を目前にした人に、それまでの国家体制は間違っていた、あなたのやってきたことはすべて間違いであり、何の意味もなかった、と言えるだろうか。その人のことを思えば、嘘も方便であり、嘘を突き通すことも実害はなく、許されることではないか、ということになるか。
それにしても何という映画だったことか。
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