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【こんな映画でした】30.[ALI アリ]

2022年 2月11日 (金曜) [ALI アリ](2001年 ALI アメリカ 157分)

 マイケル・マン監督作品。ウィル・スミス主演、ジョン・ヴォイトも出ていたが年を取っていたので分からなかった。モハメド・アリの半生を描いたもの。私が知っているのは二つ。例の「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と言われたのと、徴兵拒否をしたこと。

 彼の結婚生活のことも出てる。結局、四度結婚。最初の女性とは、宗教上の問題で別れたようだ。彼がムスリムに入信したため、その教えに反する妻に対してシビアであったようだ。で、この宗教のことだが、彼が属したムスリムのグループ(ネーション・オブ・イスラム)では、かのマルコムXも聖職者としていたようだ。交流があったことが紹介されている。

 マルコムXはキング牧師と出会っているシーンも写真で挿入・紹介されていた。マルコムXは非暴力というわけではなく、暴力を振るわれたらその相手がもう再び暴力を振るえないように対処すべきだとする。ある程度の、抵抗としての暴力は肯定していたのだろう。そのせいでもあるかもしれないが、アリとマルコムXがアフリカ(ザイールか)で出会った後、マルコムXはテロに遭い死亡する。

 その背景にはムスリムのグループの上層部と権力側との取引があったようなことを描いている。つまりマルコムXは、白人や政府に直接殺されたのではなく、同じ黒人の、しかも同じムスリムに殺されたのかもしれない。このあたりはまさしく政治の世界のことである。

 ボクシングのファイトシーンは、典型的なものが映像化されていたようだ。映画の最後では、勝利を収めた彼のリングから身を乗り出しているシーンのストップモーションで終わっている。もちろんその後も何戦か試合はしているのだが。

 何にせよボクシングを見ているのはなかなかしんどいものだ。知らないうちに手をグッと握りしめて見ている。こうしてみてくると、アメリカ映画では結構このボクシングものがあるということだ。

 徴兵拒否についてのシーンは次のように描かれていた。
「一般国民軍事訓練法違反で懲役五年の服役刑に処せられ、罰金は一万ドル」と宣告され、FBIがやって来て「徴兵拒否で逮捕します」として、後ろ手に手錠をはめられて連行されていく。

 映画の中で紹介されているアリの発言をいくつか。
(65分~、アリに電話が)「保釈された。銃なんか撃ったことない。カモもシカも撃ってないぞ。ベトナムの場所はテレビで知った。東南アジア? そこにもベトナムが? どう思うかって? ベトコンを? 彼らと戦う理由なんてない。俺を "ニガー" と呼ばないぞ」

 同じ部屋にいたスタッフがアリに、「分かってるのか、自分の言葉が。世界各地の人間が、王者は自国の戦争に反対だと知る」。対してアリは「だから何だ。人が望む自分になるのはご免だ。恐れずに理想を追う。思うがままに」。

(試合参加の可否についての査問会にて)「戦争への反愛国的な発言を謝罪しますか」「いいえ」

(その査問会から出てきてマスコミのインタビューに歩きながら答える)「徴兵逃れか?」「それは違う。カナダへ逃げずにここにいる。投獄したいならしろ。400年の投獄を思えば平気だ。別の貧しい人々を殺すなんて冗談じゃない。ここで政府と戦ってて死ぬ。お前たちこそ敵だ。ベトコンや日本人じゃない。お前らこそ自由の敵、正義の敵、平等の敵だぞ。国のために戦え? 俺の権利を認めてもいないくせに。露骨に差別してるだろ」。

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