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【こんな映画でした】64.[特別な一日]

2020年12月 9日 (水曜) [特別な一日](1977年 UNA GIORNATA PARTICOLARE A SPECIAL DAY イタリア/フランス 105分)

 エットレ・スコーラ監督作品。初めて。ソフィア・ローレン、撮影当時42歳。マルチェロ・マストロヤンニは撮影当時52歳。[ひまわり](1970)のコンビでもある。この二人の映画はかなり観ている。

 オープニングシーンはいきなり記録映像。ヒットラーがローマにやって来た時のもの。その特別な一日での出来事。といっても正味は、起き出した朝6時から夜、寝に付くまでの半日ということになる。1938年5月6日のこと。イタリアの政治情勢と、当時の女性の置かれた立場、さらに同性愛者に対するファシスト政権の強烈な差別を扱う。

 6人の子持ちの主婦役を演じるソフィア・ローレンは、日々の生活に疲れ切っている様子をメイキャップで。折角の良い顔が台無しなのだが。そしてマルチェロ・マストロヤンニも、その愛人と別れたばかりのようで、ピストルが机上にあることから人生に絶望的になっていることが分かる。

 ラストシーンは男がそのアパートを立ち去り、船に乗ってどこかへ行ってしまうということに。その姿を階上の女が見送る。男は振り返りはしないので、それに気がつくことはない。女は各部屋の電気を消していき、ベッドに入る。それをロングで見せて映画は終わる。そう、何事もないいつもの一日と同様の一日が終わる、といった風に。

 しかし彼ら二人の男女にあっては、生涯にただ一日だけの特別な日であったということ。誰も知らない秘密である。(私は思う。あのあと彼女は妊娠し、7人目を出産したかもしれない。夫のではない子を、と。)

 大層なことを扱った映画ではない。小品というべきか。しかし、じんわり訴えかけてくるものがある佳作であった。

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