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【こんな映画でした】112.[天使の処刑人 バイオレット&デイジー]

2018年 4月23日 (月曜) [天使の処刑人 バイオレット&デイジー](2011年 VIOLET & DAISY 88分 アメリカ)

 ジェフリー・フレッチャー監督作品。デイジーをシアーシャ・ローナン(撮影当時16歳)、バイオレットをアレクシス・ブレデル(撮影当時29歳)。「comedy crime drama film」と紹介されているので、まったくのエンタテインメントだろうと予測していたが、どうもそうではないようだ。

 主人公は殺人を請負う二人の若い女性(ティーンエージャー)。その名前が原題。オープニングのシーンで彼女たちの仕事ぶり(?)を紹介。その後も、新しいドレスが欲しいということで次の仕事を引き受けることに。ところがこの仕事が妙な展開になっていくのであった。

 この二人の殺し屋のターゲットであり、結果として彼女たちの人生の先生役となったマイケルは、ジェームズ・ガンドルフィーニで、なかなか味のある演技。生憎2013年に51歳で亡くなっている。英文のウィキペディアの「批評家の反応」はこの映画全体には厳しいものばかりだが、唯一このジェームズ・ガンドルフィーニの演技を観ることが、この映画を観るべき理由だ、と。

 不評の理由を私なりに考えると、まず主人公が殺し屋であること、しかもティーンエージャーの女の子であり、死というものの重みを理解できてない、ということのようだ。殺し方もマンガチックで、非現実的。男性四人組の殺し屋が、彼女たちのお喋りの相手をして、逆に殺されてしまうなどあり得ないだろう。さらにその四人の死体の上に乗ったり、彼らをバスタブに放り込み、その上でシャワーをしたりするというのだから。

 私は本当の殺し屋がいて、それをそのまま映画化するなどグロテスクだと思う。コメディタッチで軽くそれらのシーンを描くのは、本当の狙いはそこにはないということ。つまり、この男マイケルと二人のティーンエージャーとのやりとり。そのシチュエーションは異常であるが、それ故にこそ何かが生まれる可能性があったということだろう。

 その話題は主に「家族」のこと。夫婦関係・父と娘・娘と母。彼女たちに関しては、「友達」あるいは「信頼」ということ。マイケルとの対話を通して、彼女たちは成長していく。彼の方は最後に娘への手紙を書いて(口頭で、バイオレットによる代筆)、その人生の最後に娘との和解を自分なりにつけて死んでいく。(マイケルは自殺志願者であって、殺されることによってそれを実現しようとしていたのだ。)

 そんなマイケルと二人のティーンエージャーとの思わぬやりとり。映画の最初のシーンからすると、彼がアパートに帰ってきたところを待ち伏せて、いきなり銃を乱射して終わるはずであった。
 実際はドアが開き、彼が部屋に入ってくる。彼の顔は見せない。さらに彼女たちの待つ部屋へ。ところが銃の音がするどころか、静謐。.....なんと彼女たちは、待ちぼうけのあまりソファに腰掛けたまま寄り添って居眠り。

 これは危険な状況と思わせておいて、ところが彼は(まだ彼の顔は見せない)ブランケットを持って来て、彼女たちに着せかけるのだ。これで私たち映画を観る者は、どうも話が違うと気づくことになる。以後、クッキーとミルクをご馳走になり、ぎくしゃくしながらもこの三人の間に会話が始まるという次第。

 バイオレットが銃弾を買いに出かけ、その間に彼とデイジーとの会話。彼はデイジーにとっては父親くらいの感じ、あるいは少し年のいった「友人」といったところか。ここで彼は娘へのプレゼントであったが受け取ってもらえなかったワンピースをデイジーに。そして「すぐに着てみてくれ」、と。

 そして最終的にデイジーに殺害を依頼する。(実はデイジーはこれまで空包しか撃ったことがなかった。つまり人を殺したことがなかったのだが。)バイオレットが戻ってきて、また三人でのやりとり。次いで今度はデイジーが銃弾を買いに出かける。その間、今度はマイケルとバイオレットとの会話。バイオレットには、彼はカメラをプレゼントする。手紙を口述し終えて、彼は寝室へ。
 そしてその後、帰ってきたデイジーが寝室へ。デイジーの銃を構えるシーンから、バイオレットのいる部屋へ映像が転換した後、銃声。呆然とするデイジーをバイオレットが早く出よう、と。

 ラストはなかなか粋な計らいであった。二人が鏡の前で欲しかった新作のワンピースを試着。店を出て何か食べて帰ろうというバイオレット。デイジーは散歩していく、と。そこにバイオレットに電話。長く会わない父親からであった。そこで二人は別れて別方向に。

 デイジーは「彼」の娘であるエイプリルをその学校(?)に訪ね、お父さんの友人だと自己紹介して、お父さんからの贈り物だとしていま買ってきたばかりのドレスを彼女に。

 これから先、二人はどうしていくのだろう、と思わせられながら映画は終わる。

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