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【こんな映画でした】111.[ウェイバック -脱出6500km-]

2018年 5月 5日 (土曜) [ウェイバック -脱出6500km-](2010年 The Way Back 134分 アメリカ/アラブ首長国連邦/ポーランド)

 ピーター・ウィアー監督作品。お目当てのシアーシャ・ローナンの出番は、映画開始後の50分経過あたりから、正味50分くらいであった。当時15.6歳くらいだろう。

 内容は凄まじいのだが、その前提となったスターリン時代のソ連のあり方も凄まじい。政治犯やスパイ容疑でシベリアに送られた人たちの収容所からの脱出劇。1941年の実話とのこと。

 人間のやることの愚かさは、一般の人たちにどれほど酷い仕打ちをしてしまうか、と。ここでは共産主義という政治思想によるものだが、世界的にはこれに限らない。いつの世の歴史にも登場してくる悲劇である。今も形を変えて、そのようなことがあるだろう。

 当初、脱出を図ったのは男7人であったが、まずは夜盲症の一人が凍死。なかなか面白いキャラクターであったヴァルカは、モンゴルとの国境線で一人別れてソ連に戻っていく。彼は言うなれば右翼であり、収容所送りになっているにもかかわらずスターリンを信じている。このあと途中から加わったイリーナ(シアーシャ・ローナン)は、ついに日射病でか、砂漠で力尽く。

 三人目は料理にうるさい男性であったが、病死のようだ。生気のなくなった顔の描写のあと、粗末な木製の十字架の映像に変わったことで、その死を描いていた(一度目観たときには気が付かなかった。その後人数が一人少なくなっていたので分かった)。

 ということで残り四人が無事その目的を果たすことに。ただ主人公・ヤヌシュは祖国ポーランドに戦後すぐに帰国することはできず、1980年代まで先延べされることに。これはひとえに冷戦下の政治状況のためである。

 歴史に翻弄された庶民を描いた映画であった。なお原作は『脱出記 シベリアからインドまで歩いた男たち』(The Long Walkスラヴォミール・ラウイッツ ソニー・マガジンズ 2005年)。

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