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【こんな映画でした】267.[セックスと嘘とビデオテープ]

2021年 3月28日 (日曜) [セックスと嘘とビデオテープ](1989年 SEX, LIES AND VIDEOTAPE アメリカ 100分)

 この題名でひいてしまい、なかなか観るに至らなかった。それは私自身の偏見だろうが。もっともこの題名のおかげで観客は動員できたかもしれない。ということでこれは一体何が出てくるのかと疑心暗鬼で見出した次第。結果として、きわめて真面目な映画であった、と感心させられたのだが。

 スティーヴン・ソダーバーグ監督作品。主役のアンはアンディ・マクダウェル、撮影当時30歳。初めて。一般的な美人とは言えない地味な個性的な女優だ。この映画で認められたようだ。

 男優はグレアム役をジェームズ・スペイダー、撮影当時29歳。好感が持てる。この映画で、カンヌ映画祭主演男優賞とのこと。なるほど、と。夫役はピーター・ギャラガー、撮影当時33歳。アンの妹シンシアはローラ・サン・ジャコモ、撮影当時26歳、これで映画デビューとか。ちょっと変わった感じの個性がある。

 さて内容は、衝撃的な原題にもかかわらず、真面目に男女間の愛情というものを見つめ、考えようとしている。男女間の愛情というとそれは直ちにセックスに還元されてしまう風潮があるが、はたしてどうなのかと問いかける。

 私も男性であり、魅力的な人を見たらそういった気持ちになることは否定できないだろう。しかし立場をかえて、女性はどう考えてるのだろうか。愛があれば当然のようにセックスを、と男性は一般に考えるように思われている。

 しかしグレアムは過去の(エリザベスとの)痛手のせいか、不能となったことがあるにせよ、女性の見方が変化したようだ。不能といってもそれはかなり精神的なものだろう。だからラストでアンと二人並んで話すシーンは、それが克服され解消するのではないかと予想させるものだ。

 同時にオルガスムスを感じないというアンは、おそらく真の愛情というものをこれまで持てなかったせいであろう。ラストシーンでは、彼女もそれを克服できていくことを示唆しているようだ。

 結局は、男女間の愛情というものを簡単にセックスに置き換えてしまう愚を指摘しているということになるか。真摯な男女間の愛情こそがやはり大事だということ。この映画では触れられてないが同性間の愛情もあるが。

 あと姉妹間の愛憎、大学時代の友人との人間関係といったことも少し触れられてある。所詮、人間は人と人との間でしか生きていけないということ。そこでの様々なトラブルは、それぞれが解決していくしかない。グレアムのようにずっと逃げていた人も、アンという人間に出会って変わっていくことができたという話でもある。

 アンとグレアムが話をしている時も、グレアムはなかなか心を開こうとしなかったが、ついにアンのまずは博愛的な愛情によって癒やされていくことになる。先述のように、その人間存在に対する博愛が、いずれ男女間の愛情というか、グレアムという人間に対する個別的な愛情へと変化していくことになるのだろう。良い映画であった。

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