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【こんな映画でした】280.[孤独な場所で]

2021年11月 5日 (金曜) [孤独な場所で](1950年 IN A LONELY PLACE アメリカ 93分)

 ニコラス・レイ監督作品。ハンフリー・ボガート(撮影当時50歳)が脚本家ディクソン、恋人の女優グレアをグロリア・グレアム(撮影当時26歳、独特の美しさか)。ディクソンが殺人事件の容疑者扱いとなり、無実だとついに信じられなくなったグレアと離別。アンハッピーエンドということになる。

 やはりこの監督の作品はシリアスだ。めったにないことだが、往々にしてあり得る事件を扱っている。難しいところだ。

 一つ私には分からない文化として「指輪」がある。ここでは結婚指輪だが、ディクソンは言う、一生付けておくものだから、と。指輪のもともとのいわれからしてそうだが、やはり支配と服従の関係の象徴かなと、ちょっと嫌な感じがした。

 人が人を信じるのは、あるいは逆に人が人を信じられなくなるのには、どういう切っ掛けや理由があるのだろうか。少なくともこの映画では、ディクソンの暴力性だろう。短気な人間は少なくないにせよ、それが直ちに暴力に結びつくとは限らない。

 しかしディクソンの場合のいくつかの例を見ると、グレアは怯んでしまったのだろう。この暴力性はちょっとしたことで自分にも向けられるかもしれない、と。そこまでは思わなくても、他人に対する極度の暴力性には耐えられなかったということか。いずれにしても悲劇である。ディクソンが自ら招いたものと言えよう。

 もしかしたらこの監督は、このような暴力性のもたらす無残な結果を示し、暴力否定の気持ちを込めたのかもしれない。「孤独な場所」とは、現実の場所ということだけではなく、彼の心の中を言うのであろう。

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