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【こんな映画でした】487.[巴里の屋根の下]

2020年 1月21日 (火曜) [巴里の屋根の下](1930年 SOUS LES TOITS DE PARIS フランス 95分)

 データによっては「75分」とあるのもある。しかしクライテリオン社版では「95分」とあるので、これがもっとも正確なところかもしれない。今回観たコスミック社版では、正味92分でラストにテロップなし、音楽で終わっている。前後のテロップなどの所要時間でそれくらいの誤差は出るのかもしれない。

 監督のルネ・クレールは既に[自由を我等に](1931)を観ているが、[奥様は魔女](1942)も購入済みなのでまもなく観ることに。

 監督の初のトーキーということで、いろいろな試みがなされているとのこと。オープニングからいきなり、この映画のテーマソングが流れるのがまず象徴的。しかし、登場人物たちの会話をすべて録音して私たちに聞かせてくれるわけではない。

 ラストの方で酒場のドアが閉められて、それを外から観ることになる私たち観客には、アルベールとルイの会話の中身は聞こえない。何をやりとりしているかの推測はもちろんできるようになっている。ドアが開くと音楽と会話がまた私たちに聞こえてくるといった具合。

 小競り合いのシーンでは、機関車の蒸気の音が挿入されている。そして銃声も。一般的に今の映画ならすべて観客の観ることのできるシーンの会話は、聞くことができるようになっている。その常識が覆されて、新鮮だ。

 なおすぐに分かることだが、オープニングとエンディングとは同じカメラワークを逆転させている。このDVDではオープニングのほうがじっくり時間を掛けて空から地上へと降り立つ。エンディングは地上から空の方へカメラが上がっていくことに。

 オリジナルと思われるシャンソンが二つ。あとラストシーンの酒場では、ロッシーニの「ウィリアムテル序曲」が流れる。

 主人公たちの商売は、ある解説によると「艶歌師」と。もっともこれは明治時代に演歌師たちがバイオリンの伴奏で演歌の歌集を売っていたところからくるものだろう。フランスではどのように言われていたのか。

 で、アルベールが歌いながら楽譜を1フランで売る。ルイは盲目の人のような黒いめがねをかけて、アコーディオンで伴奏する。後にクロード・ルルーシュ監督作品の映画[恋人たちのメロディー(スミック・スマック・スモック)](1971)で、音楽を担当するフランシス・レイがまさに同じ格好をしてアコーディオンを弾いていた。オマージュなのか、盲目の人にアコーディオン弾きが実際に多かったのだろうか。

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