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【こんな映画でした】31.[終着駅]

2020年 2月20日 (木曜) [終着駅](1953年 STAZIONE TERMINI INDISCRETION OF AN AMERICAN WIFE アメリカ/イタリア 89分)

 ヴィットリオ・デ・シーカ監督作品。主演はジェニファー・ジョーンズとモンゴメリー・クリフト。ほとんどこの二人だけを描いているといえる。そして観ている途中で、もしかしたらこの映画は、映画の時間と実際の彼らの行動時間がほぼ同じではないか、と思った。

 イタリア語の原題は、邦題通り。アメリカでは「INDISCRETION」を使って、「不謹慎な行為」「無思慮」「無分別」「軽率」といった意味を加味している。ということで「アメリカ人、人妻の過ち」ということか。これはややどぎつく、露骨すぎるだろう。

 ということで原題どおりの「終着駅」というのが、ムードがあっていい。終着駅では様々なドラマが起こり得るのだから。ここでは年の頃三十一、二の人妻と独身男性が一月前に出会って、その恋が頂点に達した時の、その別れの数時間を描くわけだ。

 人生には分かっていても、つまりそれは先に進むべきではない・選択すべきではないと分かっていても、どうしようもなく、その波に呑まれてしまうことがある。「運命の人」に今、こうして出会ったのだと思いたい。それが人情だ。それが人生だ、と。

 独身男性からしたらその通りなのだが、女性は既に結婚し子どももいるのだ。頭では分かっていても、どうしようもないこと。多少、事情は違っても、平凡な人生を送る私たちにもあり得ないことではない。それを美女と美男子で美しく描いてみせる、というのがこの映画だろう。見事なものだ。

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