見出し画像

【こんな映画でした】80.[影なき殺人]

2021年 1月23日 (土曜) [影なき殺人](1947年 BOOMERANG! アメリカ 88分)

 エリア・カザン監督作品。「サスペンス映画 コレクション 脱獄の掟」の一枚。主役の検事をダナ・アンドリュース、撮影当時35歳、[我等の生涯の最良の年](1946)で観ている。無実の罪で逮捕された男性について、起訴をする前の綿密な調査で不起訴にもっていくという内容。

 原題はあのブーメラン。動詞としては「〈計画・行動が〉〔発案者に〕はね返ってくる, 害を及ぼす(backfire)」、と。解説には「コネティカットの街で、神父が銃殺される。ウォルドロンという男が容疑者として捕まり、誰もが犯人と決めてかかる中、州検事ハーヴィーは彼の無罪を主張し……。1924年に実際に起きた事件をもとに描かれている。」

 この映画を観ていると、アメリカ合衆国の司法制度は政治がらみで、とても公正かつ明朗なシステムとは思えない。現今の大統領選挙の有様を見てもそうだが、根本的に腐敗しているのか、ワザとそういうシステムにしているのか分からない。不可解だ。

 不可解なのは神父銃殺の拳銃のこと。殺されたシーンでは、使われた拳銃が遺体の横に落ちていた。女性がそれを手に取る映像がある。警察が来るまでは触るな、と言っている。ところが予審の際に、警察は拳銃が落ちていたことには一切触れない。あくまでも容疑者が連行された際、拳銃を所持していたとするのだ。そこで検事はその拳銃について調べて、結果、無罪というか不起訴の決定的な証拠としていく。

 となると検事も犯行に使われた拳銃が、遺体とともにあったということを警察から知らされてなかったということになる。つまり警察は容疑者の有罪を証明するために、落ちていた拳銃のことをわざと隠していたとしか考えられない。

 刑事はなかなかの人物のように描かれているが、最後は自白強要と同時に証拠の隠滅・捏造をしたということになる。それが警察の本質なのだと、暗に知らしめるためかもしれない。そのように考えていくと、なかなか一筋縄ではいかない内容の映画である。なお容疑者が裁判所から出てきて移送される際、地元住民が取り囲んでリンチしようとするシーンも描かれている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?