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【こんな映画でした】122.[夜よ、こんにちは]

2020年 6月30日 (火曜) [夜よ、こんにちは](2003年 BUONGIORNO, NOTTE GOOD MORNING, NIGHT イタリア 102分)

 『続 ヨーロッパを知る50の映画』(狩野良規 国書刊行会 2014年) に紹介されていたもの。やはりしんどい内容である。イタリア現代史。マルコ・ベロッキオ監督作品。初めて。映画の視点は、23歳の女性キアラ(マヤ・サンサ)。誘拐されたモロ元首相をロベルト・ヘルリッカ。いずれも初めて観る俳優たちだ。

 事実に基づく映画なので、当時のニュースフィルムが使われているようだ。またロベルト・ロッセリーニ監督の映画[戦火のかなた]から捕まえられたパルチザンがボートから突き落とされ、溺死させられるシーンが挿入されていた。

 ラストシーンは、キアラの願望とそれによる幻想のような描き方がされている。つまりモロがその監禁された部屋から、一人外へ出て歩いて行くというものである。その直後に目隠しされた現実のモロが、部屋から連れ出されるシーンが続くのだが。

 モロを殺すことに疑問を持ち出したキアラが反対するも、組織の決定は非情かつ不合理かつ絶対なものであった。結果としてモロの暗殺は、政敵たちを喜ばしただけに終わる。そして彼ら誘拐犯・殺害犯は逮捕され、終身刑となったとのこと。

 それにしても目的の遂行のためには、人を殺してもいいという考え方は、普遍的なようだ。日本の優生保護法やナチスの断種法などから、右翼・左翼の集団の思想も。「赤い旅団」のメンバーに「労働者階級による支配」と言わせているが、誰が・どの集団が上に立つことになっても、所詮、それは一方による他方の支配であり、服従・従属させることである。そしてその手段は、必然的に暴力となる。そこには真の解決も人々の安寧・幸福もないだろう。

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