【エヴァQ考察】新劇場版におけるアダムスの器≒ゼーレ≒第一始祖民族説 / 新劇版人類補完計画=アダムス継承計画説

 何度目かのエヴァQを観返していた際、他の考察にはあまり見られない説が組み上がったのでここに。

 以下『新劇場版におけるアダムスの器≒ゼーレ≒第一始祖民族説』です。(以下の内容は新劇世界とテレビ版-旧劇場版の旧劇世界との差異を前提にした考察のため、旧劇におけるゼーレ、第一始祖民族の設定とは異なる部分があります)

1.第一始祖民族とは何か?

 まず前提を。「第一始祖民族」とは宇宙のどこかに誕生した地球とは別の知的生命体文明です。彼らが『生命の実』=S2機関や『知恵の実』=人類の知性を開発し、宇宙へ送り出しました。

 つまり地球人類と使徒の生みの親とも言えます。(ここまでは旧劇世界と同様。公式の情報です)

2.アダムスの器とは何か?

 『アダムスの器』というフレーズは旧劇には登場しませんでした。新劇では、頭を吹き飛ばされても機能停止しない零号機などに対して呼ばれています。明らかにこの零号機はS2機関を搭載しており、つまりは「知恵の実と生命の実を両方揃えた存在」なのではないか? と考えています。

 ちなみにアダム(第一使徒アダム)のうち一人が渚カヲルです。これは新劇世界でもまず間違いなく変化のない設定ですね。

 また、ここではアダム=アダムスの二つは同様の存在で、単に呼び方が複数形なだけだと考えています。南極で発見されたアダムは当初個体だと考えられ、後に複数形に改められたのでは。(リリン=地球人類と同様アダムが大勢存在した異星の人類なら、複数形で呼ぶのは当然と言えます)

 そして『器』という表現を使うからには、アダムと『アダムスの器』は別物であるはずです。実際、第一使徒アダムであるはずの(あるいは第十三使徒にまで落とされていたとしても)渚カヲルは旧劇世界でも新劇世界でも、わりとあっけなく死亡します。新劇のチョーカーがアンチATフィールドを備えた凄いやつだったとしても……第一使徒アダムそのものには、それほど高い生命力、耐久力は無いように思えます。

 そこで、『アダムスの器』です。新劇世界において、脆弱な存在だったアダムはその乗り物としての『アダムスの器』を開発したのではないでしょうか?

 第一始祖民族=アダムスであり、アダムスが地球人類と同様にある程度脆弱な種だったと仮定すると。アダムスは自らの技術により『アダムスの器』を作り出し、S2機関(不死)と知恵の実(知性)を備えた人工の完璧な肉体としたのではないでしょうか。

 エヴァそのものが人間の魂を宿した存在であり、エヴァ世界の地球人類は魂を扱う技術を所有しています。であれば当然、第一始祖民族=アダムスは同等かそれ以上の技術を有していたでしょう。

 サイボーグの進化系のような形で、脆弱な肉体から完璧な肉体に魂を移し替えた先。それが『アダムスの器』だと考えています。

3.ゼーレとは何か?

 旧劇世界のゼーレは地球人類です。恐らく世界最大の権力を持った秘密結社であり、人類補完計画によって世界を一つにしようとしています。彼らは死海文書=第一始祖民族が遺したマニュアルを所有しており、それを元に計画を進めていました。

 しかし、新劇世界のゼーレ、これは地球人類とは考えづらいです。Qにおいて碇ゲンドウは「あなたがたが人類に知恵の実を与えてくれた」「人類を代表して感謝する」と述べています。また、ゼーレの象徴であるモノリス(黒い板)の中には脳のような物体がそのまま詰まっており、電気で稼働していました。ゲンドウと冬月が電源を落とすと停止し、おそらく死亡したものと思われます。

 これは率直に考えれば、新劇世界のゼーレ=第一始祖民族(アダムス)なのではないでしょうか?

 新劇世界のゼーレは地球に飛来したアダムスであり、彼らによって地球人類に文明が齎された、あるいは地球人類そのものが生み出された。

4.新劇版の人類補完計画=アダムス継承計画説

 だとすれば彼らが旧劇世界と同じ「人類補完計画」を目指すのは違和感があります。アダムスにとって地球人類はほぼ他人なので、一つになろうとする動機があまり見えません。

 つまりゼーレの設定が変化したことで、人類補完計画の内容もまた変化したと考えています。思うに、新劇版の人類補完計画とは、アダムスの存続を目指したものだったのではないでしょうか。

 アダムス人類は遠い異星で文明を興したが、何らかの要因で滅びつつあった。そのためその生き残りであるゼーレが地球に辿り着き、生命の実と知恵の実を使い、新たな人類と文明を築く手助けをした。

 何のためかというと、アダムス人類を存続させるためです。渚カヲルを見ればわかるように、地球人類と同じ姿のアダムスは存在します。あるいはそもそも、アダムス人類はさほど外見に執着しないのかもしれません。だから『アダムスの器』に魂を移すことに抵抗がなかったのかも。

 そして地球人類とアダムス人類は、本編時点でほぼ同様の存在になっていたと推測できます。育成が終わり、アダムス人類(ゼーレ)の目指した水準の第二の人類は完成した。

 高度な文明を受け継ぎ――S2機関を搭載した『アダムスの器』も所有している。おおよその点で、滅びつつあったアダムス人類は自らの正統な後継者を生み出すことができた。

 そう考えたから、Qのゼーレは満足げに「すべては上手くいった」と告げて死を受け入れたのではないでしょうか。

 もっともその時点で地球はニア・サードインパクトにより壊滅状態で、後継者である地球人類は滅びかけているようにも思えます。なのでそちらの心配をしないのか? という話もあります。

 なので、ゼーレの目的である人類補完計画そのものには少し違う意味があるのかもしれません。あるいは『アダムスの器』さえ所有していれば大丈夫、と考えていたのかな? 実際シンエヴァでは何だかんだで結構元気にやっているようですし。

5.まとめ

 いずれにしても、新劇版のゼーレが第一始祖民族であるという説は比較的信憑性が高いように思えます。新劇世界が旧劇世界の『並行世界』だと考えるなら、第一始祖民族の存亡の時点で変化があったのかもしれません。

 上記の考察が誰かの役に立ったり、刺激になったりすることがあれば幸いです。(勿論、逆の説、別の説が生まれることもファンとして楽しみの一つです)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?