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花譜

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四季の花や植物との出会い。古道具と花、写真で綴る短いエッセイ。
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2022年2月の記事一覧

ふきのとう

『そろそろ出てきてないかな、ないかな』 今朝も冷え込み、霜が降りていた。 いつもの裏路地を歩きながら、『見つけた!』 この黄緑色の塊には、毎春心踊らされます。 蕗の薹(ふきのとう)、菜の花、さやえんどう。 冬の寒さが終わる頃には、黄緑色の野菜が多い気がします。 黄緑色は春の色。春をいただくのです。 今日は、山茱萸の枝と共に片口にいけました。 蕗の薹は、日本に古来から食用とされてきた植物だそう。 蕗の薹、ゼンマイ、土筆など、初めて食べようと思った人たちはさぞかし勇気がいっ

色彩のない季節を撮る

写真で季節、時間の流れを表現する場合、光の強さや弱さ、柔らかさ硬さなどの要素は欠かせないと思う。 私は、デジタルカラーで室内で花を撮影するときも間接照明は使わない。その季節には、その季節なりの光の要素を持っていて、季節の花はその光の下で生かしたいと思っているから。 特にモノクロになると、色彩の要素がなくなった分、そこが現れているかどうかが、後々自分のお気に入りの一枚になるかどうかの判断基準としている。 今日は、彩りの少ない2月の季節写真をいくつかご紹介。 2月の夕暮れ

一日遅れのチョコレートコスモス

今日は2月15日。1日遅れのハッピーバレンタインです。 疲れた身体にはチョコレートが一番。 疲れ眼には、チョコレートコスモス。 チョコレートコスモスは、その色のお陰で、前回投稿の『シュールな黒い花』にも掲載したように、コントラストが強く写真撮影では悩ましい花です。また、花をいけるにあたっても水が揚がりが悪く、切り花にしたらあまり長持ちしない。 しかし、色、風に揺れる繊細な茎、壊れそうな花弁、そしてチョコレートのような微かな香りと他にはない魅力が詰まっていて、放って置けない、

シュールな黒い花

私は、白い花が好きだ。 年間を通じて多く撮影している。 特に花弁が透けるような白い花。 それは、逆光で撮るとその質感がよく見えてくる。 堅そうな花弁なのか、今にも壊れそうな花弁なのか。 触れてみたいと思わせる。 では、黒い花。 厳密に言うと真っ黒な花はない。 大体が黒に近い濃い茶色か濃い紫。 撮影すると大抵黒潰れする。古いフィルムカメラだと特に調整不能。 輪郭しか残らず、なんだかわからなくなる。 でもあえて撮ったままにしておく。 ちょっとシュールで、惹かれてしまうから。

二月の菜の花

『菜の花や月は東に日は西に』与謝蕪村。 立春を過ぎました。 冷え込む毎日が続いていますが、雲が切れると日差しが強くなってきたことを感じます。2月は毎年、春の深呼吸をするために二ノ宮の吾妻山へ菜の花畑を見に出かけます。 菜の花は、牧歌的でどこか懐かしい。 どんどん陽のほうに向かってスクスクと伸びてゆく。 素直で、素朴。 でも実は、こぼれ種でどんどん増える生命力の強い植物。 今日は、戦前のイギリスアンティークのブリキのタライにいけました。ゴチャゴチャしてますが、この方が素朴