見出し画像

【ショートショート】お目当ての行列

「ほれ、できたぞ助手ちゃん。これが行列のできるリモコンじゃ」
「ありがとうございます、博士。相変わらず発明の才能だけはあるんですね」
「ほっほっほ、褒めるでない」
嬉しそうに笑う博士。助手ちゃんはジト目で博士を見つめる。
「……ちなみにこれ、どんな原理なんですか」
「ふむ、よくぞ聞いてくれた。このリモコンからは人間の可聴域からは外れた特殊な周波数の電波が放出されていてな。これが周囲の人間を惹きつけるようになっておるのじゃ。しかし行列のできるリモコンなんぞ何に使うのじゃ?」
不思議そうな博士に助手ちゃんは妙に慌てた様子で告げる。
「色々あるじゃないですか、例えばほら、人気のない料理店でもこれを使えば行列が作れる訳ですよね。口コミサイトよりも確実に集客できるなんてビジネスにピッタリでしょう?」
「なるほどのう」

翌日の日曜日、駅前に私服姿の助手ちゃんの姿があった。改札口のところに立っている同級生らしき男の子のところに駆け寄っていく。
「お待たせ、待った?」
「いや、今来たところ」
「それじゃ行こっか」
二人並んで歩きだす。なんとなくお互いにぎこちなさそうな様子にも見える。
男の子が口を開く。
「だけどあれだぞ、約束通りそのパンケーキを食べたら俺は帰るからな」
「もう、別にいいじゃない。二人セットだと割引になるから一緒に行くってことに同意したのはそっちでしょ」
「それはそうだけどさ、いざとなるとなんか恥ずかしいんだよ」
「ほらほら、もう着いたよ」
目当てのパンケーキ屋の前には長い長い行列が出来ていた。
「げっ、あんなに行列出来てるのかよ」
「約束だからね、パンケーキを食べるまでしっかり付き合ってよね」
そう言って助手ちゃんは男の子の腕に抱きついたのだった。



更なる活動のためにサポートをお願いします。 より楽しんでいただける物が書けるようになるため、頂いたサポートは書籍費に充てさせていただきます。