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夕星は幼い頃に事故で母親を亡くしている。家事はメイド型アンドロイドが代行し、愛情不足を…
陸軍AI研究の拠点、日本陸軍研究本部は横浜にある。夕星はアデルを連れ、その本部正門を見…
独房の中に入るなり、アデルはスッと振り返った。部屋の中から廊下の様子はうかがえない。い…
『other』そして『mother』。 アデルという名は『other』つまりは『他の・他人』という言…
「それで?」 居間の縁側から望める桜の大木を眺めながら、夕星は煙草を吸っていた。姉が煩…
「アデル~。これ見て!」 そう言いながら葉月が取り出したのは、フリルとタックがたっぷり…
夕星とアデルが向かったのは、終末期ケアを行う療養所(サナトリウム)。その施設に収容されている不治の感染症患者に対してのヒーリングが目的である。 感染率は非常に低い。都民全てが面会したとしても一人以下の確率である。ただ、羅患(りかん)したら確実に死に至る。 患者は余命幾ばくもない元陸軍兵士の老人だという。治療ではない。死出の旅に向かう前の最後の癒しだった。 今回の面談にはもちろん夕星は付き添えない。アデルの視覚を端末に無線リンクさせ、別棟で映像を見ながらの待機である。
「アデルといったね。君はいくつだい?」 「十四歳です。試験運用を始めたばかりなので、失礼…
「隣の病室にギターと楽譜があるから、それを持ってきてくれないかい?」 頷いたアデルが席…
春の終わり、夕星の元に吉澤の訃報が届いた。葬儀からの帰り道、隣を歩く管理者にアデルが難…
今年もまた、うだるような暑い夏が来た。もう何十年も前から一年の半分は夏のようなものだ。…
運用検証の一環として、アデルが全寮制高校の保健室に派遣されることとなった。夏休みである…
次にアデルが向けたのは、第二の予測である。先ほどボトルを手渡した時に触れた翔の指伝いに…
アデルのダメージは軽微なものだった。床に倒れていた男子生徒はすぐさま起き上がったが、夕星は彼の手当てをするようアデルに指示した。 生徒の名は雨宮幹(あめみや みき)。家より学校のほうが勉強に集中できるからと、残っていたらしい。小柄で中性的な雰囲気。優等生で他の生徒と問題を起こすような人物ではないとのことだ。 翔に殴られたのかと問いただす教師にも、幹は言葉を濁していた。報復を恐れてのことだろうと、追求は先送りとされている。 彼の頬は腫れていた。傷が残るような怪我ではな