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蜃気楼を観て思ったこと

ライブで泣いたのは初めての経験だった。
俺が中学2年の時から、つまり8年間ぐらいサカナクションを追っているが、フロントマンである山口一郎が弱音を吐いたところを見るのは初めてだった。(大前提として、彼は2年前にうつ病を発症して以来サカナクションとしての活動を休止しており、今回のツアーも”サカナクション”としてではなく”山口一郎”としてのものだ。)
ほんわかムードでおもしろトークをした後、急に沈黙を挟み、「しんどかった。」と一言こぼした。長い葛藤だった。その時の安堵、無力感、もしくは達成感にも受け取れる彼の表情を見たら俺の目から自然と涙が溢れていた。彼が2年間耐えてきたであろう憂鬱や苦悩が俺の心に流れ込んできた感覚があったのだ。俺はうつ病ではないがうつ病になりかけたことはあって、その時の経験を無意識のうちに彼と重ねていたのだろう。そして観客席から「おかえり!」「大丈夫だよ」などの温かい声が上がった。その時の彼の心情を想像したらもう一度泣いてしまった。ちなみに彼はファンの前では泣くまいと何度も顔を上げ涙が溢れないように必死だった。その姿を見てまた泣いた。そんな空気のまま始まるピアノリアレンジの曲でまた泣いた。俺はピアノの音色に弱くてすぐ泣いてしまう。
だが彼は「弱音を吐くのはこれで最後です。これからは新しくなります。」とも言った。強い人だな、と思った。俺が彼と同じ状況だったら、きっとこんな言葉は出てこない。その強さに惹かれるし、強さ故の綻びすら人間臭くてたまらなく好きなのだ。

そんなこんなでラスト一曲が終わり、急に彼が大声で「重大発表!!」と言うので何だ、新グッズの告知かと思っていたらサプライズ的に袖からサカナクションのバンドメンバーが出てきて「サカナクション完全復活!」と言ってそのまま新宝島が始まった。
そこからは興奮熱狂阿鼻叫喚で正直あまり覚えていない。こちとら山口一郎のソロツアーのつもりで観に行ってるのにいきなり“サカナクション”としてのライブが始まったのだ。
いやしかし素晴らしかった。かつてのサカナクションを思い出させてくれるようなパフォーマンスをいきなり見せてくれた。叫び過ぎて喉が痛いし踊りすぎで明日は筋肉痛だろう。嬉しい痛みだ。本当に、最高の誕生日プレゼントを頂いてしまった。こんな誕生日になるとは思いもしなかった。

実はこのライブが終わったら色々終わるつもりだったのだが、サカナクション完全復活でしかも4月にまたライブがあると言われてしまっては、死んでも見届けるしかない。
「命あらばまた他日」だ。俺も新しくなっていこう。そう思わせてくれた山口一郎、そしてサカナクションに感謝だ。

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