単語帳による学習の位置づけと狙い

全員共通の単語帳を用いて小テストを行っていくことの是非にはいろいろな意見がありますが、私の勤務校では生徒のタイプや全体の雰囲気的に、範囲を定めて週1回の小テストを行うのが現実的に必要であると判断しました。(前回の投稿を参照)

単語帳を採用して小テストを実施するのであれば、その位置づけと狙いをしっかりと生徒に伝えて、それに則って進めていくことが大切だと考えます。

これまで偶々出会わなかった語句を拾う

単語帳での語彙学習の狙いの一つは、これまで教科書などでは触れることのなかった語句を拾って覚えるということです。その学年やレベルであれば当然知っているはずの単語でも、これまで偶々教科書などの教材で出会わなかった語句があるはずです。使用頻度順になっている単語帳(ターゲットやシステム英単語など)の場合、使用時期にもよりますが、単語帳の前半は概ねこうした狙いをもって取り組むことになります。

単語帳で「初対面」を済ませておく

もう一つの狙いは、見たこと(聞いたこと)がある単語を増やすことになります。特に、難しめの語句が並ぶ単語帳の後半に取り組む際には、この位置づけを明確にしておくべきと考えます。

語彙を習得するには、受容語彙としての獲得に限ったとしても、異なる文脈の中で繰り返し遭遇することが必要とされています。単語帳を使った暗記学習では、異なる文脈で複数回その単語に出会うことはできません。従って、基本的には単語帳での学習のみで語彙を習得することはできないということになります。

単語帳の学習に時間をかけて一生懸命定着を図っても、実際には定着しない。よって、単語帳での語彙学習は、「1回目」の出会いを提供するものと考えています。

読解やリスニングで出会った単語が、全くの初見である場合よりも、「どこかで見たことあるな」という場合の方が、その後の定着が見込めるはずです。人との出会いでも、全く顔も名前も知らない人に出会うよりも、例えば一度でもテレビで見たことある人の方が、印象は残りやすいはずです。

そうしたことを意識して、単語帳小テストの取り組みとしては、完璧な暗記を目指すのではなく、なるべく速いペースで進めていき、見たことある単語を増やしていくことを第一義としています。

位置づけと狙いを明確にして

今回は単語帳を使った学習を生徒に促す際、その取り組みの位置づけと狙いについて考えてみました。どうして単語帳を使うのか、どうして範囲を定めて小テストを行っていくのか、生徒に明示的に伝えることが重要です。

単語帳に載っている日本語訳を一字一句暗記するために時間を費やしても、結局はその後に複数の文脈内で出会って、その語を立体的に理解しない限り定着はしません。また、受験生にありがちですが、頻度順になっている単語帳の後の方に載っているかなりマニアックな単語を、綴りも含めて完璧に暗記しようとしても、無駄とは言いませんがあまり効果的な学習とは言えません。

こうした単語帳学習にあまりに多くの時間を割くよりは、多読多聴を通して語彙に触れた方が学習効果は高いはずです。他の学習法と同じく、単語帳を使った学習についても、目的を明確にして取り組むように生徒を導いてあげるようにしたいものです。

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