単語帳による小テストについて

多くの高校で、単語帳を指定(一括購入)し、範囲を定めて小テストを行っています。もちろん、こうした取り組みには様々な点で批判があり得ます。全員に同じ単語帳を持たせることの是非、全員(少なくともクラス全員)共通の範囲設定で小テストを行うことの是非、そして、そもそも単語帳を使った語彙学習自体の是非などなど、かなりcontroversialな取り組みであることには間違いありません。

私の勤務校はいわゆる「進学校」と位置づけられるような中高一貫校です。生徒のほぼ100%が大学進学をします。

担当する高校の学年で、単語帳の小テストを実施すべきかどうか、非常に悩みました。

全員共通で実施する必要はないのではないか。全員共通でなく、個々の生徒が自分に合った単語帳を使い、それぞれのペースで進めていけばいいのではないか。単語帳に力を入れさせるより、教科書の語彙をマスターすることに注力させるべきではないか。

いろいろと悩みましたが、結論としてはある単語帳を一括購入して持たせ、毎週小テストを実施していく形式を取ることにしました。

私の同僚がかつて担当した学年で、上記のような理由から、単語帳小テストを行わない選択をした学年がありました。単語帳の使用は生徒の主体的な取り組みに任せ、定期的(半年に一回程度)に「ボキャコン(vocabulary contest)」を実施して語彙力の伸長を見るというスタンスを取ったようです。

結果としては、自ら主体的に単語帳での学習を進めることができた生徒もいれば、やはり自分では取り組みが甘く、結局高2後半になって「受験勉強」が本格化してようやく取り組み始めるような生徒も少なくなかったようです。

そうした過去の学年の様子も聞いて、いろいろとデメリットや懸念はあれど、少なくとも私の勤務校では、学校として単語帳を用いた小テストを行っていくことは現実的に必要だと判断しました。

この辺りの判断は、学校の雰囲気や生徒の気質などに大きく左右されると思います。改めて、教師は生徒をよく見て物事を決断しなければならないと考えさせられます。

大修館『英語語彙指導ハンドブック』(門田、池村 2006)では、語彙指導における単語帳の扱いについて以下のようにあります。

基本的な語彙であれば、英単語集を1冊決めてそれをボロボロになるまで繰り返し覚えるというのも1つであろう。しかし、それだけでは、本当の英語力はつかないことも事実である。単語集は「使ってはいけない」でもないし、「使うのがよい」でもない。本書で取り上げる他の語彙学習法に並ぶ選択肢の1つとして、どのようなときにどう使うかが大切である。

『英語語彙指導ハンドブック』(p. 113)

単語帳を採用したり小テストを実施するのなら、その位置づけと狙いをしっかりと定めてそれを生徒と共有しておくことが大切だと思います。位置づけと狙いが定まれば、小テストの範囲設定や実施方法も自ずと決まってくるはずです。

(参考文献)
門田修平、池村大一郎(編著)(2006)『英語語彙指導ハンドブック』 大修館書店

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?