CLIL志向の授業の定期考査

突然ですが、以下のカーリングに関する文章を読んで、後に続く問いに答えてみてください。


    An end in which neither team scores is called a blank end.  A team that scores even one point gets to go first in the next end and loses the hammer; however, after a blank end, the team that went last in that end gets to go last again in the next end.
    Imagine that the eighth end has finished and the score is 3-3.  In the ninth end, team A has the hammer.  However, the stones are arranged so that they will likely score only one point.  What should team A do?

New Treasure English Series, Stage 4, Lesson 5 より(一部抜粋)

Question:
太字の問いに対する答えとなるように、以下の文中の空所を埋めなさい。
They should [                    ] so that [                    ].


どうでしょうか。もちろんカーリングに精通している人でない限り、そう簡単には答えられないと思います。本文中に解答の根拠が十分に示されているわけではないので、問題には相応しくないと言われてしまうかもしれません。

ですが、私は実際にこのような問題を定期考査で出題しています。内容を中心に置いた授業を進行するためには、考査にこのような問題を出題するのが適していると考えているからです。

英語「で」学ぶCLIL志向の授業

高校の英語コミュニケーションの授業では、題材内容を授業の中心に置くようにしています。教科書の英語を学ぶのではなく、英語「で」題材内容を学んでいくスタイルの授業を心がけています。いわゆるCLIL(内容言語統合型学習)のようなアプローチとも言えます。(実際にこれがCLILと呼ぶに値するものかは専門知識が十分でないので分かりませんが、少なくともアプローチとしてはCLIL的なものだと考えています。)

もちろん教科書本文に出てくる語彙や構文、文法語法も学びますが、それらが主役となるのではなく、あくまで題材内容を読み取ったり話し合ったりする中で、それに必要な語彙や文法を押さえていくということを意識しています。

生徒には普段から、「英語で読んだ内容知識を自分の中に取り入れて、英語の授業を通して今まで知らなかったことを学べた、自分の知識や世界が広がったと言えるようになろう」、そして「英語で学んだ事柄について、せっかくだから英語で語れるようになっておこう」と呼びかけています。

CLIL志向の授業の考査

さて、そのような「内容中心」を謳った授業を展開していても、定期考査が従来通りの語彙問題や文法問題だらけでは生徒たちも興ざめしてしまうことでしょう。そこで、私は冒頭のような、内容知識も含めて問うような問題を出題しています

冒頭の問題を出題する背景としては、この題材での学習を通して「カーリングというスポーツのルールや戦略に精通する」「カーリングの魅力を知る」といった内容面の目標を設定し、それらを学び、自ら英語で語れるようになるために必要な語彙や構文を学ばせました。

授業ではカーリングの戦略について教科書本文やadditional readingも含め、十分に授業中にdiscussionをしました。そうした活動を通して、生徒たちはカーリングにおいて「この状況ならこうプレーするのが定石」といったことが大まかに理解できています。冒頭の問題であれば、教科書本文からの出題なので、この状況における定石は理解してあることが前提というわけです。

考査案内では、こうして授業中にdiscussionしたことを振り返り、ある程度は「予告問題」のような形で示すこともあります。

内容と一緒に英語表現を「暗記」する

このような出題では、「要するにただの暗記テストでしょ?」という批判が出ることでしょう。はっきり言って、その通りです。教科書内容を暗記してあることを前提としています。予告問題に対して、学んだ内容を振り返り、答えを暗記してくることを求めています。

でも、学びとはそもそもそういうものではないでしょうか。

例えば、海外の大学や大学院に留学したことのある人ならば、いわゆるfinalと呼ばれる学期末考査に向けて、死に物狂いで詰め込み暗記をした経験があるのではないでしょうか。詰め込み暗記をするのは、必ずしも「用語」ではありません。むしろ、用語や概念の説明を丸暗記する方が一般的でしょう。つまり、

Q: What is an approach in language education where a subject is taught through a language that is not the students' first language?
A: CLIL (Content and Language Integrated Learning).

のような一問一答ではなく、

Q: What is CLIL? Provide a brief definition and/or example.

といった問題に答えられるように「暗記」します。

そして、ノンネイティブとして英語圏に留学したならば、このように用語の説明を暗記するのと同時並行で、その説明に必要な表現を習得していくことになります(まさにCLILそのもの)

さて、もちろん高校の英語授業において、なにも上記のような「疑似留学体験」をさせようというわけではありません。ですが、「まず内容ありきで、その内容を学ぶために英語を学び、その内容について語るために英語を学ぶ」という授業(私はこのようなアプローチをCLIL志向と呼んでいます)をするならば、考査でもそのメッセージをしっかりと発信し、それに備えさせる必要があると思います。

CLIL志向で学んだ実感を

冒頭の文章内容に戻れば、このLessonを通して生徒がcurlingというこれまであまり馴染みのなかったスポーツについて、その歴史や魅力、戦略を学ぶことができたとしたら、それは英語の授業で彼らの人生がひとつ豊かになったと言えると思います。また、せっかく学んだ内容を英語で語ることができるようになるーそれこそが英語授業で目指す方向ではないでしょうか。

そうした授業を展開したならば、生徒が身に着けた力を考査できちんと発揮させてやり、学んだことの実感を与えてあげる必要があると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?