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もし、昔の彼がこの映画を見ていたら


そんな風に一瞬だけ、
ほんの一瞬だけ思った。

でも、次の瞬間に、
「いや、こういう映画は好きじゃないから見ることはないか。」って安易に納得した。

ーもし、彼が「花束のような恋をした」この映画を見ていたとしたら、誰を思い浮かべるのだろうか。誰との思い出を重ねるのかな。

「私かなぁ。んー、その前に付き合ってた彼女かなぁ。うん、前の彼女の方が長かっただろうし、そっちかな。そっちだな。うん。
ーまぁ、それでも、私だったらいいなぁ。」

そんなどうしようもなくわがままな想い。

主人公の二人は、別れた後、ばったり会ったときに、昔、自分がプレゼントしたイヤホンをしていたことを思った。
雨が降ったら、髪を乾かしながら、出会った時を思った。
二人で住んでいた家の近くの多摩川が氾濫したニュースを見たとき、どう思ったかな。
二人が好きだった作家が賞をとったときどう思ったんだろう。

そう互いに思っていた。

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私は落とし穴が沢山あったけど、彼に落とし穴はあったかな。どうだろう。
私といえばなんだったんだろう。


そんなことを思ったら思い出さないようにしていた記憶が蘇ってきた。

蓋をしていたものをここに書くことで今の自分なら整理ができると思うので描いてみることにした。

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営業車にゴルフクラブを積んで仕事終わりにゴルフ練習しに行こうとしていて、まだ一度も行けてないこと。
酔っ払ったら電話かけてきたこと。
あの神社。
夜、大きな荷物持って高速バスに乗って人通りの少ない商店街を歩いたこと。
たまに走ったりしたこと。
そこから家まで歩きながら帰ったこと。
途中から自転車で二人で帰ったこと。
彼のほこりかぶった炊飯器を磨いてご飯を炊いたこと。
近くのスーパーまで二人で夜ご飯の買い物しにいったこと。
お風呂は先に入りたいよね、ってふたりでいる時は寝ちゃう前に先に入って眠りについたこと。
家の近くの炭火焼肉のホルモン。
日本酒万齢。

Netflixでお笑い芸人の番組を見てた人だった。
テラスハウスも夜中に一緒に見た。
一喜一憂した。吉本興業の闇営業問題も二人でテレビの前にちゃんとスタンばってニュース見た。

お金のことで揉めた。
朝、口をきかずに家を出た。
「今日の夜は、鍋にします!」のLINEを送った。ふたりで食べた。

買い物帰りに、お財布落ちてるの見つけて、
交番まで届けにいった。
夜ご飯に食べようって言った唐揚げを我慢できずに帰りながら頬張って食べた。

よく帰り道、コンビニでアイスかプリンかなんかデザートを買いたい人だった。
スタバではいつもホワイトラテ飲んでた。
甘党だった。


東京に行ってすぐ、縁起物として買っただるまにはもう目を入れたかな。


合鍵も全部返した。
忘れてたけど、オリンピックの当選チケットが残ってた。どうなるかなぁオリンピック。
もしオリンピックが昨年開催されてたら、私たち続いてたかな。

オリンピックに当たったこと、
車の中で二人で喜んだよね。

あ。オリンピックって聞いたら、
私を少し思い出すかな。


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心の機微な動きまできちんと、そして現実的に、描いてくれる坂元さんが私はずっと大好きなんだけど、裏切らないどころか、

また今日、坂元裕二にやられてしまった。

最高だった。号泣した。

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