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思い出を語るでもなく夏蜜柑

「グレースの履歴」の話を書いたら彼女の絵も描きたくなりました。A4の用紙で描きましたが、だからと言って絵が上手になるわけもありません。尾野真千子さんは特に美人と言うわけではないのに「殯の森」での演技がとても印象的でそれ以来ずっと見続けています。

思い出を語るでもなく夏蜜柑

誰にでもありそうな若い頃の二人だけの甘酸っぱい思い出、でも時が経ったある夏に偶然再会した二人は「何も言えなくて、夏」状態でした。そんな青春の甘酸っぱい俳句ではありません。でもどう読んでもらってもオーケーですね。

実はドラマのワンシーンからの連想の句です。亡くなった妻の愛車グレースのカーナビ履歴の最後の目的地は松山でした。そこには夫が結婚前に何年も付き合っていたのに彼を裏切って転勤先の海外で結婚した元婚約者が住んでいて、素敵なフラワーショップを経営していました。彼女は結婚に破れ帰国した後、友人と二人静かな松山で都会の喧騒から逃れた生活をしているのでした。難病に冒された尾野真千子演ずる美奈子が最後に訪ねたのがその彼女だったのです。そして美奈子は私が死んだら夫を頼むと言うのです。向かい合った二人はそれぞれの思い出を語ることもなく対峙していました。そんなことドラマを観てないもんに分かるか〜〜!ですね。

ネタバレついでですが、その後、美奈子は旅先のパリから元婚約者に電話をしてあの時の話はなかったことにしてくれと言うのでした。実は美奈子は不妊治療の最中に偶然難病に冒されていることを知りますが、皮肉なことに難病治療中は絶対に妊娠してはいけないと医者に言われていたのです。しかし、たまたま旅先で妊娠したことを知った美奈子は事故に合う1日前に元婚約者にこの覚悟の電話をかけたと言うわけです。残された夫と元婚約者がその後どうなったのかわかりません。美奈子が海外旅行に行く前のことですが、不妊治療中の美奈子が何故避妊するのか病気のことを知らない夫はかすかな疑念を持ちました。またカーナビ履歴の最初の目的地が元彼の店だったりと不信や疑問から始まった彼のカーナビ旅ですが、最後は彼女の究極の愛と覚悟を知ったのですから結末の予想はつきそうですね。

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