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クレソンやあの日も同じレストラン

春の季語「都わすれ」を描きました。
父、後鳥羽上皇と共に起こした承久の乱に破れ、佐渡に流された順徳天皇がこの可憐な花を見ることで都を忘れようとしたことから「都わすれ」と言う名前が付いたそうです。当時、順徳天皇はまだ24才でした。実は挙兵の1月前に4才の息子仲恭天皇に譲位していたので正確には順徳上皇です。息子の仲恭天皇は3ヶ月持たず廃位されているので歴史上最短の天皇となりました。順徳上皇は佐渡で21年間暮らし45才で亡くなりましたが、最後の望みであった佐渡配流の翌年に都で生まれた五男・岩倉宮が幕府の反対で天皇になれなかったことを悲しみ自死したとも言われています。

都わすれと似た名前の「忘れな草」も小さい紫色の花を咲かせますね。忘れな草は明治になって日本にやって来たムラサキ科の外来種ですが、都わすれは日本原産のキク科植物と書いてあるのでずっと昔からあったように思えますね。でもキゴサイの説明では「都忘れ」は「深山嫁菜」の改良種で園芸用とあります。え〜!名前の由来が鎌倉時代のことなのに園芸用とはどういうことでしょうか?さらに調べると都忘れの栽培が始まったのは江戸時代と言うことです。ということは江戸時代にも伝えられていた順徳天皇の悲劇から発想した誰かさんによる命名と言うことですかね。まあ冷静に考えれば故事に因んで命名するなんてことは当たり前なのかも知れません。でも嘘も百万遍言えば本当になるの例え通り、本当に順徳天皇が見ていたに違いないと思ってしまいます。紫色は「京の色」と言われますが、「都わすれ」は「忘れる」というより都を忘れようとして忘れられない「都に対する未練」を表しているのでしょうね。

さて私には全く縁のない都忘れの花からどうやって俳句を詠みましょうか?景色が浮かばないのでイメージだけを戴いて、自分の日常の句にして見ます。

クレソンや思い出よぎるレストラン

青春時代のほろ苦い思い出を季語のクレソンと重ね合わせ、レストランで食べたクレソンからふと昔の思い出が蘇ったことを詠いました。でもクレソンなら洋食のイメージがあるのでレストランと言わなくても「店」くらいでいいかも知れません。思い出もベタなので「あの日」くらいにしてみます。

クレソンやあの日の店のスパゲッティ

折角レストランを止めて店にしたのに結局スパゲッティです。スパゲッティで読み手は何を想像するのでしょう。高いフランス料理など食べられない時代のややオシャレな食べ物、いやいや喫茶店のナポリタンかな?でも今となっては家食の代表、めちゃくちゃ庶民的ですね。スパゲッティにしたら「店」も邪魔になって来ました。

クレソンやあの日のスパゲッティ
3文字浮いたので何に使いましょう!

クレソンやあの日も同じスパゲッティ

3文字に「同じ」を入れてみました。でも同じ「同じ」でも「たまたま同じ」と「またまた同じ」では意味がだいぶ違いますね。さらに「あの日と同じ」だと「わざと同じ」にしたとも思えます。どうしましょう?クレソンの苦味で何か感じてもらえるか、力不足なので、これ以上出てきません!レストランでも自宅でも、いい思い出でも悪い思い出でも、読み手次第ってか!最早投げやりですね。

でも句友よりクレソンとスパゲッティの食べ物2つはどうかなとの控えめなコメントがあり大納得です。そこで最初に登場したレストランに替えてみました。

クレソンやあの日も同じレストラン


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