見出し画像

落柿舎

松尾芭蕉の弟子、向井去来が住んでいた落柿舎には芭蕉も何度か滞在したようです。入り口の簑笠が在宅の印とか。長閑な佇まいの庵です。一見すると当時のままのように思えますが実は井上某と言う俳人がのちに再建したもので当時の庵とはだいぶ違うそうです。

落柿舎という名前はこの家の庭に柿の木が多く植わっていてその柿を売る約束をしていたのに台風で一夜にして全部柿の実が落ちてしまったという出来事に因み、そう呼ばれているそうです。

落柿舎の甘酒の香の懐かしき(あまざけ:三夏)

若い頃、落柿舎を訪れたことがありました。多分寒い時期だったはずで近くの茶店で飲んだ甘酒が熱くて体が温まり美味しかったことを今でもよく覚えています。しかし俳句を始めて甘酒が夏の季語だと知りました。江戸時代は書紀を散ずるとして夏に飲まれたらしいのですが、今では冬に飲むことが多く昔と今では季節感がこんなにも違うのかと驚きました。そこで皆様は甘酒をどの季節と感じるのかなと思っての一句です。

田植時簑笠乾く落柿舎かな(たうえどき:仲夏)

私の記憶では昔は落柿舎の前に田んぼはなかったような気がします。でも今はちゃんとした田んぼと畑になっています。聞けば古代米と豆を作っているとか。でも落柿舎は農家ではないので田植時に雨が降っても落柿舎の壁にかかった簑笠は乾いたままですね。乾燥した蓑笠が印象的だったのでついついつまらない句を詠んでしまいました。

小倉山裾の庵に春の風(はるのかぜ:三春)

これは落柿舎のスケッチのような句です。短歌の聖地小倉山の麓、嵯峨野に建つ落柿舎は俳句の聖地でもあります。今は春、きっと清々しい風が小倉山から下りて来て落柿舎の草庵を吹き抜けていることでしょう。

豆腐屋に行列出来る嵯峨の春(はる:三春)

嵯峨には有名な豆腐屋があり、いつも行列が出来ています。それだけの句ですが、嵯峨野は湯豆腐で有名なのでああ嵯峨らしいなという感じを詠んでみました。

落柿舎とか小倉山、嵯峨などの地名が入ると句自体には何の感動も込められていなくても、なんとなく俳句にはなるみたいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?