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2021年に観た大好きな映画ベスト10本

2021年に劇場と配信で観た映画112本の中からベストを選びました。今年初見の映画で括ったので旧作も含みますが、結局上位10本は新作になりました。

10位 偶然と想像

世界的にいま大注目な濱口竜介監督の短編(中編?)×3本の会話劇。2021年は今まで以上にお笑い熱が高まって、ライブを観に行ったりキングオブコントやM-1の予選に一喜一憂した1年でした。漫才では限りある短い時間のなかでいかに多くの笑いをとるか、コントならどのように面白い設定を見つけ出して、どうストーリーを展開するかといったところにプロの凄さを思い知りましたが、この映画は「決して斬新ではない設定で、10分以上じっくりじっくり会話を重ねた先にクスっと笑えるポイントがおいてある」ような作品でした。でも観終えるとめちゃくちゃ満たされてるんですよね。「街の上で」を観たときにも同じような感想を持ちましたが、このゆったりした時間の使い方、すごく贅沢な体験でした。


9位 Everybody's Talking About Jamie ~ジェイミー~

ドラァグクイーンを夢見る16歳の男子高校生が、母親にプレゼントされた赤のハイヒールを履いてドラァグクイーンとして学校のプロムに出席することを目指す、イギリスのミュージカルを映画化したAmazon Prime Videoオリジナル作品。ミュージカルシーンがことごとく楽しくて好きだったのと、お話の着地点がとにかくちょうどよくてすっきりと観終えることができました。日本でも今年の夏に舞台化されていたそうで、もし再演されることがあったら観に行きたいです。


8位 あのこは貴族

渋谷区松濤に生まれ、箱入り娘として育った華子と、大学進学を機に富山から上京してきた美紀。全く異なる階層で暮らす2人が東京という街をサバイブして自分の人生を切り開いていくお話。観たのは2月でしたが、いまだに思い出せる大好きなシーンがいくつもあります。忘れられない台詞も。今後も折りに触れて観返したい作品でした。門脇麦さん、「浅草キッド」の演技も最高だったなぁ。


7位 映画大好きポンポさん

「映画を作る映画」で、いい映画にするためにはこうするべき、こうあるべきという持論をストーリーに載せ、しかもその作品そのものがそれを体現していて、結果超面白い作品に仕上げてるっていうめちゃくちゃカッコいい映画でした。今年も大好きなアニメ映画はたくさんありましたが、その中の1位です。


6位 まともじゃないのは君も一緒

本当にモテなさそうな予備校講師に見える成田凌、スナックでジュース飲みながらくだを巻く清原果耶、ふたりともとにかく演技が素晴らしかったです。観てる間、ずっと「おれは今めちゃくちゃ好きな映画を観てるなーー!!」と思いながら最後まで観てました。「これが私の生きる道」を歌う清原果耶さんは2021年ベストカラオケシーン部門の準優勝でした。(優勝は「ひらいて」の山田杏奈さん×芋生悠さんですおめでとうございます)


5位 由宇子の天秤

自分には正義感がある、リテラシーがそこそこ高いと思っている人ほど、この映画を観ると精神的ダメージを負ってしまうのではないでしょうか。女子高生自殺事件の真相を追うドキュメンタリー監督の由宇子は、正しさやメディアの暴力性などを世に問う立場であるにも関わらず、取材と並行して自分の身の回りで起きてしまったスキャンダラスな出来事をどう処理するのか。全編通して由宇子を演じる瀧内公美さんはほぼ出ずっぱりで、彼女の葛藤を観ながらこちら側の価値観もぐらんぐらんに揺さぶられ続けます。英題は「A Balance」です。私は「空白」と立て続けに観たのですが、2週間くらいずっとこの2作品のことを考えちゃう日々が続きました。凄かった。


4位 マリグナント 狂暴な悪夢

もともと私はつい最近までホラーもスリラーも苦手で、ゴア描写なんて極力見たくないタイプの人間でした。「パラサイト 半地下の家族」を観て「意外と大丈夫かも?」となり、「透明人間」を観て「え、めちゃくちゃ面白い!」となって、今ではこの「マリグナント 狂暴な悪夢」でテンションブチ上がりながら大興奮できるようになってしまいました。避け続けてるままだったらこんなに面白い映画もスルーしてたんだと思うと恐ろしいし、これからいろんな過去の名作も観ることができるんだと思うとワクワクします。めちゃくちゃバカだったなぁ。最高でした。


3位 サマーフィルムにのって

青春キラキラ映画だろうが時代劇だろうがSFだろうが、ジャンルに貴賤はないんだという映画愛に満ち満ちた作品でした。設定ごちゃまぜでリアリティラインもぐにゃぐにゃなのに、伊藤万理華さんのしゅんと落ち込んだ顔や弾けるような笑顔で全部をアリにしてくれる。ラストの展開から「めちゃくちゃいい映画観た!!」って思わせてエンドロールになだれ込む手法もマジで剛腕。ビート板がひそかに想いを寄せていたのは凛太郎だったのかそれともハダシだったのか、どっちだったんでしょうね。


2位 香川1区

衆議院議員の小川淳也さんに17年密着したドキュメンタリー「なぜ君は総理大臣になれないのか」(2020)のヒットを受け、2021年10月の衆院選をスピーディーに映画化した「香川1区」。前作では小川淳也という人の人柄、生い立ち、境遇、政策などを丁寧に描いていましたが、今回はそこをすっ飛ばせるため、ずっとぎらぎらしててスクリーンから熱量が迸る156分でした。小川さんの長女の開票後の挨拶にももちろん号泣でしたが、私は事務所で姉妹が「アンチ小川」と父の関係について語っているシーンが一番印象に残っています。劇中で明かされたスクープ、いまのところまだ報道されてないけどいつ問題化されるんでしょうね。

ぜひとも、次回の選挙の際には対立候補である平井陣営に密着した映画が製作されることを心から望みます。中立性(?)や信頼性(?)の問題で大島監督NGなのであれば別の監督でもかまいません。四国新聞さん、西日本放送さん、ご検討のほどよろしくお願いします。


1位 彼女が好きなものは

2021年に一番好きだった映画は小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」を映画化した「彼女が好きなものは」でした。私は山田杏奈さんのお顔立ちがとにかく好きで好きで仕方ないのですが、山田杏奈さん、神尾楓珠さんのビジュアルの強さをさておいても大好きな作品でした。ゲイであることに悩み、ゲイであることを周囲に隠しながら妻子持ちの年上男性と不倫関係にある安藤君と、世界中の男性がゲイだったらいいのにと思いながらBL好きであることを秘密にしている三浦さんの恋の話。2回映画館で観て2回ともボロボロ泣いたし、観終わった後にいろんなことを考えました。

(以下ネタバレとまではいきませんが映画のあらすじ+αにあたる話を書いていますのでご注意ください。1位なので許してください。)


私はヘテロセクシャルで、つい数年前までゲイの方を題材にした映像作品をちゃんと観たことがありませんでした。最初は「his」でした。そもそも映画やドラマをたくさん観るタイプじゃなかったというのもありますが、男性同士のベッドシーンを直視することに抵抗がありました。同性愛嫌悪というわけではなく、その関係性は尊重しますが積極的には見たくはないという感覚でした。大学時代にバイト先にいたゲイの男性がセクハラをしてきたり下品な下ネタをいう人で苦手だったという経験も影響していると思います。なので、ここ数年で増えているLGBTQを扱う映画もそんなに数多く観ているとは言えません。この2年で10本くらい観たでしょうか。その程度の私ですが、この映画に対して「海外のこの手の映画と比べてテーマや問題意識のレベルが低い」みたいな批判は当てはまらないと思っています。

「これだから腐女子は、って思ってるでしょ」「ゲイの人ってみんなそうなの?」三浦さんは自分や周囲の人をカテゴライズし、主語を大きくして話します。割と誰でもやりがちなことだし、そうした方が思考が単純になって楽なので私も幾度となくそうしてきました。ですが、ゲイの人にもそれぞれ悩みや考え方の違い、葛藤、願いがあります。(9位に出てきた)ジェイミーのように自分の生き方をまっすぐ見定めて奮闘する人もいれば、安藤君のように「なんでこんなふうに生まれてきてしまったのだ」と日々思い悩む人もいます。BL作品を読んで「同性愛に理解がある方」だと思っていた三浦さんは、次第に安藤君のことをいち個人として理解しようと想像し、他人事としてカテゴリを切り分けないように考えを改めていきます。学校の周りの人々にもそのような考え方が広まってほしいと考えた三浦さんが、自分のパーソナルな話をさらけ出して演説するシーンは本当に感動的でした。

このように「さまざまな性自認、性的指向を認め合いましょう」というところから1歩踏み込んだテーマを、丁寧に誠実に描いた今作はぜんぜん時代遅れだとは思いませんし、少なくとも2021年の私にとって重要で必要な作品でした。エンディングの着地点も様々な方向に可能性が開かれていて最高。公開初日の舞台挨拶で「ぜひ若い方々に今作を観て、楽しんで、できればいろいろなことを考えるきっかけになってもらえれば」と監督やキャストの方々がおっしゃっていましたが、世代関係なく幅広い層に届いてほしいと私は思いました。もっともっと大ヒットしてほしかったな。


1位 彼女が好きなものは
2位 香川1区
3位 サマーフィルムにのって
4位 マリグナント 狂暴な悪夢
5位 由宇子の天秤
6位 まともじゃないのは君も一緒
7位 映画大好きポンポさん
8位 あのこは貴族
9位 Everybody’s Talking About Jamie ~ジェイミー~
10位 偶然と想像

11位 クルエラ
12位 ステージ・マザー
13位 ヒメアノ〜ル
14位 映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園
15位 街の上で
16位 ベイビーわるきゅーれ
17位 キャラクター
18位 猿楽町で会いましょう
19位 BLUE / ブルー
20位 イン・ザ・ハイツ



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