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海運業界について思う事(EV編)

まず初めに断っておきます。私はEVの将来は明るいと考えています。しかし昨今のリチウムバッテリーをめぐる海運業界の動きで気になった点が数点ありましたので調べてみました。
現状海運目線で見た場合にEVがどのような立ち位置であるかだけ確認してください。お読みいただきそういう意見もあるのかと考えていただければ幸いです。あくまで個人の見解です。

リチウムバッテリーは度々爆発事故をおこしています。これは昨今のGM,LGの問題でかなり明るみに出てきています。数日前にも充電中のEVが爆発して、約30台ほどのEVがダメになったニュースもありました。

実は2,3ヶ月前に上海で危険物梱包を行っていたにもかかわらずリチウムバッテリーがドライコンテナの中で爆発炎上してしまいました。
それも原因の1つですが、現状上海ではリチウムバッテリーはDG(危険物)扱いに指定されています。そのため現在リチウムバッテリー(を含む全ての製品)の海上輸送はReeferContainer(冷凍冷蔵コンテナ:以下冷蔵コンテナと記載)での運用になっています。少なくとも上海→日本は全てです。上海ルールですが、後々中国全土での運用になる可能性が非常に高いです。今のところは12月までの予定ですが、それ以降どうなるかはわかりません。夏場が1番危ないので個人的には継続運用の可能性が高いと思っています。
ちなみにMaerskのHP上の2021年6月24日の記事ではリチウムはリーファーという記載がすでにあります。
https://www.maersk.com/news/articles/2021/06/24/ev-battery-logistics-are-powering-the-sustainability-revolution
ここまでで、で?って思った方多いと思います。
問題は「リチウムバッテリー搭載の全ての製品の中にバッテリー着脱ができないEV車も含まれる。現状冷蔵コンテナでの輸送になる」という事です。
携帯電話あたりも冷蔵コンテナでしょうか🤔
もちろんメーカー出しは自動車船で大量輸送になるので問題無しです。
自動車船とは中が10階建ての立体駐車場みたいになっていて6000台以上の自動車を一度に輸送できる船です。

現在は国際海上輸送危険物規程(IMDGコード)の特別規定961によりEVは危険物対象外です。
じゃあEVはセーフじゃん?と思われる方いらっしゃると思いますが、個人輸入のように自動車をコンテナに入れて輸出入する場合はドライコンテナでの輸出入ができなくなり全て冷蔵コンテナで搬入しなければいけません。

まず自動車船運航業務を行っている日本の海運会社に問い合わせのメールを送ってみました。
(3社のうち2社より回答あり。残り1社はまだですがおそらく回答は同内容と予想)
回答はだいたいこんな感じです。
艘内は最上部でだいたい50℃前後まで気温が上昇。船内の温度計で各自動車メーカーとデータ共有し、高温になるのが良くない自動車は艘内でも下部のようなあまり温度が高くならないエリアに積載する。排気ガス対策で排気換気システムはあるけど、空調は搭載していない。
現状EVの積載数割合は変わっていないとの回答でした。もう1社は今後増えていくだろうとの予測です。

メーカーからの輸出に関しては自動車船を利用しておりそれは変わりません。しかしもしNIO車が日本で乗りたいとかになると個人輸入になると思いますので、冷蔵コンテナを用意して搬入しなければなりません。おそらく国内でNIOを見かけれるようになるのはかなり先の話になりそうです。(少なくとも日本法人ができてからとか)でないとかなり面倒くさいでしょうし梱包とかたいへんだろうからかなり輸送料金取られそうです。
ちなみに50℃と記載がありますが連日40℃越えで電動バスが爆発という動画もYouTubeにあがっていますので案外まずいラインまではきているような気もします。

以前toroさんが貼ってくれていた資料ですが中国出しのEVは現状こんな感じでテスラがダントツです。

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今私が不安に感じているのはドライコンテナは夏場で70℃近くまで上がります。自動車船は最上部で50℃。温暖化の影響もあるので実際はもう少し上がる可能性ありと予測しています。温度差はかなりありますが、もし某国のいやがらせをかねてとかで輸出ルールが改定してEVは全て冷蔵コンテナ出しなんて言われた日には大混乱になってしまいます。まず大丈夫だと思うので問題無いと思っていますけど💦
先程も書きましたが、現在は国際海上輸送危険物規程(IMDGコード)の特別規定961によりEVは危険物対象外です。ただしバッテリーを外して輸送の場合はリチウムバッテリー部分は冷蔵コンテナでないと輸出不可です。
中国から国外出しのEVの8割超がテスラです。そしてそのテスラ車は今まで自動車船で一気に大量に出ていたのが、これからは冷蔵コンテナに1台ずつ乗せて(40ftなら2台乗るかも?たぶん無理だと思う)コンテナ船で出さなければならなくなるとしたら?梱包作業もたいへんですし、月間約1万台出荷していますので、このペースを維持しようとしたら欧州航路の往復日数を考慮すると同じく1万台超の冷蔵コンテナが必要になります。無理です。はっきり言って無理です。世界中の食品輸送が終わります。北海道のバターや牛乳が関東で手に入らないレベルです。

そういう風にならない為にはどうしたらいいか?コンテナの生産を増やすか?出荷台数を抑えるかのどちらかになると思います。まずただでさえ生産をある程度抑えてるコンテナ製造業界でコンテナをいきなり大量生産する可能性があるでしょうか?しかもコストのかかる冷蔵コンテナなんて???
可能性としてはテスラ社からの依頼で専用の冷蔵コンテナみたいなのが用意されるかもしれません。
しかしこちらの予想は中々難しそうなので、どちらかと言うと出荷台数を抑える可能性が高そうです。
中国出しのテスラは極端に数字が落ちるかもしれません。それこそベルリンなど新工場が完成するまではテスラは苦渋を飲まされるかもしれません。
どちらにしてもあまり良い未来が想像できません。
自動車船が空調対応したらOKのような気もしますが、現時点で空調付いている船は無いと思います。また事故が明るみになってから初めて設計が動き出すので船が出来上がるまでに2年以上はかかります。その間は冷蔵コンテナ必須です。
あくまで最悪のシナリオの場合です。

今後リチウムバッテリーの爆発事故が相次ぐようであれば可能性は薄いですがEV車は冷蔵コンテナ搬入のみになる可能性はあるかもしれません。
輸送中の自動車船内で爆発事故なんてあったら1発アウトだとは思います。消火も一般的な自動車と比べても難しいですし。
そこかしこで爆発連鎖とかしたら損害賠償やばい事になりそう😅

調べきれてないですが現状のルールではすでにNIUの海外輸出は影響あるかもしれません。
現状コンテナにバイク突っ込んでいたのがバッテリーだけ外して冷蔵コンテナでの輸出になっているor今後なるはずなので輸出コストが増えます。
今後の決算でわかるかもしれません。
今までドライコンテナで何台も積めていたのが、バッテリーだけ外して冷蔵コンテナ輸送になっているはずです。(現状上海港からの輸出であれば)
NIOはそこまで影響なさそうですが、自社or他社バッテリーの爆発事故が原因で1番ダメージくらいそうなのはテスラかなぁ?と個人的には思います。それ以外にも中国出しのリチウムバッテリー搭載商品は近いうちに冷蔵コンテナになる可用性が非常に高いので注意しておいた方が良いです。

以上海運目線からのEV(リチウムバッテリー)の現状の問題点になりそうな点の調査結果と足りない部分は脳内想像でした。

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