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第一話 あわい小さな恋物語


「渡辺さん。これ書いてくれない?」
新しい学年になり、五年二組になった渡辺未海は教科書をランドセルから出しているところだった。
新学期の席順はまだ名前順なので、耳の席は廊下側の一番後ろ。
未海が顔を上げると、前の席の女の子がカラフルな色の一枚の紙を差し出していた。
その紙は最近流行っているプロフィール帳だ。
名前や血液型、好きな食べ物やハマっているものを渡して書いてもらうものだ。
友だちはもちろん、友だちになりたい人に渡して会話のきっかけにすることができるもので、未海も何度か書いたことがあった。
「私、希っていうの。これからよろしくね」
希は未海が受け取ると、返事も待たずに近くにいた女子グループの輪に入っていって同じようにプロフィール帳を配り始めた。
まだ学年が上がって二日しかたっていないこの時期は、前からの友だちで固まっている人が多い。
希は仲がよかった友だちとクラスが離れてしまったようで、新しい友だちを作るためにプロフィール帳を配っているようだ。
「未海も渡されたの?」
声のした方に視線を向けると、幼馴染の神谷美穂が希から貰ったプロフィール帳をペラペラと振りながら希の椅子を跨ぎ、椅子の背に両肘を置いた。
「美穂も貰ったんだ? みんなに渡してるのかな」
「そうみたいだよ。東城たちも貰ってたし」
心臓がキュッとしまった気がした。
東城くんは未海が三年生の頃に転校してきたスポーツ万能な男子だ。
すぐにクラスの人気者になり、「好きな人は東城くん」という女子がたくさんいた。
美穂も東城くんが好きらしく、どうやったら付き合えるかという話を相談される。
大人から見たら小学生は子どもに見えるかもしれないけど、未海の周りでも彼氏ができたという話を聞くことがある。
その人を独占できる付き合うという行為は、その人が学校の人気者であればあるほど子どもながらに優越感がうまれる。
だから女子たちはより人気者な男子と付き合って、自慢するために好きになっている。
その証拠に嬉しそうに付き合ったと報告していた次の週にはもう別れている、なんてことも多かった。
「希ちゃんも東城のこと狙ってるのかな」
未海の机に置かれた教科書をペラペラとめくりながら、美穂が小さな声で呟いた。





こんにちは。空沙です。

久しぶりの小説を書きました。
完結まで時間がかかりそう…。
一応プロットは考えましたが、登場人物が予想の倍ぐらいに増えたので自分でびっくりしています。
ラストは決めているのですが、基本思い付きで書いてしまったので修正する可能性があります。
そのときは都度noteの別記事でも書こうと思うので、気長に、大きな心で読んでいただけると嬉しいです。


今日も読んでいただいて、ありがとうございます!!!



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