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【ネガティブ5選】恋をキリトル140字の物語 11

◇1
古いオカルト映画を見た。
呪われたリーガンとその母の話。
汚い言葉でののしられ母親の心は壊れていく。
やっと気がついた。私も悪魔に魅入られていたと。
夜になれば私のリーガンが帰ってくる。
くりだされる罵倒。
天災が過ぎるのをただ待つ私。
彼の心にいすわっている悪魔を祓うエクソシストがほしい。

◇2
夫が5年不倫してた。
『無能で不細工でつまらない女。ああ早く離婚してーよ』
探偵が集めた証拠を前に私は思わずトイレへと駆けこむ。
私そこまで嫌われてたんだ。
確かに私は平凡だ。
でも果たして罪なのか。
胃の中が空っぽになるまで吐きまくる。
この苦しみにはゲロがお似合い。
涙なんて流してたまるか。

◇3
「これが20年私を苦しめ続けた女かぁ貧相ね」
昼下がりの喫茶店。彼女の薬指には指輪がきらり。
「あなたさえ居なければ私は幸せだったのに」
何一つ言い返せない。
私はまだ彼を愛している。
「もう2度と彼に会わないでね。負け犬さん」
勝ち誇った高笑い。
私の夫を奪った女の瞳に罪悪感は欠片もなかった。

◇4
「ごめんなさい」
謝った瞬間舌打ちされて私はますます縮こまる。
目が冷たい。口調がきつい。
頭の中を怖いという言葉が駆け巡る。
誰よりも優しくされたいのに
私を好きになる人は
好きと同じくらい私を嫌いになる人ばかり。
辛い。でも離れられない。
ビクビクしながら隣にいる。
いつか愛されるのを夢見て。

◇5
仲間を奪われ四面楚歌。
「いい加減俺のものになれよ」
絶対王者のバスケ部キャプテン。
ヘラヘラ笑いに張り手ひとつ。
「アンタみたいなクズ誰が選ぶか。舐めんなくそボケがァァー!」
孤立させるのが愛情とか絶対私は認めんからな。
「このパンチ…ますます惚れた」
「知るか。変態」
歪んだ愛はよそでやれ。


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