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11 恋のマジック

私の手に玩具の蜘蛛を握らせた彼は姫大マジック部の会長さん。「も、もうっ!私、蜘蛛って蛇より苦手なんですよ!」「だろうね。パッと見、蜘蛛派だと思った」コンパでこんな悪ふざけ笑えない。「ドキドキが止まらないじゃないですか」「だろうね。それが狙いだから」意味深な目。声のマジック発動中。

マジック部のイベントが大成功に終わり、打上げに呼ばれた。
密着取材の1週間。
真面目な新聞部の私は、変人会長に振り回されてばかりだった。
今だってそう。
蜘蛛の玩具を握らされ、悲鳴をあげた私を見て、ニヤつくなんて。
かっこいいくせに意地悪なんです。
なんでこんなに見た目と性格にギャップがあるんだろ。
「私、蛇より蜘蛛が嫌いなんです」
どれほどひどいことをしたか、わからせるために怖い顔をして彼を睨む。
「だと思った。でも、僕に抱きついたりはしないんだねえ」
「当たり前ですよ」
「うーん。残念。ドキドキさせたいのになあ」
すまし顔の彼。意地悪されてばかりだからちょっとやり返したくなってきた。
「どうしてそんなに私ばかり構うんです? もしかして好きとか?」

そう。ほんの冗談。
ドギマギさせたかったんです。私。

ただそれだけだったのに。
「ああ、謎解き得意なんですね。あたり、です」
そんな風に返されてしまった。

ええと、その。

どういうこと?
仕掛けたのは私なのに赤くなっているのも、また私。


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