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【ファンタジー.SF.ラブコメなど23選】恋をキリトル140字の物語 23

◇1
森の中でうたた寝して
目覚めたら吸血鬼の家にいた。
「天使のようにあどけない寝顔。お前はもう俺だけのもの」
広い屋敷で求められるままに血を与え
爛れた夜が過ぎていく。
贄として血を捧げるか花嫁になるか
選択の時がやってきた。
「花嫁に…なります」
血の匂いがする熱いキス。
最後の牙は蜜よりも甘い。

◇2
世紀末。突然投げ込まれたデスゲーム。
「やっぱり君が生き残ると思った」
もう喋るな。
君の輪郭が涙でぼやける。
「絶対元の世界に戻ってね。そして私を見つけてね」
腕の中で冷えていく体。
待ってくれ。
俺を置いていくな。
神よ頼む。
クソまみれなこの世界のたった一つの希望の光を
俺から奪わないでくれ。

◇3
モンスター狩りの急なお誘い。
軽い気持ちでOKしたら
思いのほかグロくてゲーゲーリバースした。
命と命のやりとりに一気に消耗してしまう。
君ってすごいね。毎日こんなことやってんの。
リスペクトとラブに満たされた私の中の君の評価。
ぐんぐんぐんぐん上がっていく。
怪我しないでね。マイダーリン。

◇4
風で下着がベランダに落ちて
付き合いが始まった隣の美女。
おすそ分けって
肉じゃがやらそら豆炊いたの分けてくれて
俺の食生活は改善された。
いい子だなあ。でもな彼がいるんだよな。
随分甘ったれな男らしく
じゃれてる声が壁越しに届く。
「えっとそれ犬のこと?」
誤解かよ。
むくり立ち上がる微かな期待

◇5
「押さないでよ」
「しっ!気づかれるでしょ」
「イケメンだな。本当に彼氏か?」
ドアの向こうでヒソヒソ声。健君が困ったように鼻の頭をかいている。立ち上がってドアを開けたら3人が重なって部屋へとなだれ込んだ。「パパ!ママ!お姉ちゃん!覗かないでよ!」
漫画みたいな光景に健君がクスクス笑う。

◇6
コンと小石の当たる音がして
窓をあけたらベランダに降り立つ君がいた。
「何も言わずについてこい。誰かを庇って犠牲になろうとしてただろ。させるかよ」
抱き抱えられてジャンプしたら龍の背中の上だった。
「全部俺のせいにしろ。世界を敵にしてもお前を守る」
今決めた。
世界を敵にしてもこの恋を選ぶ。

◇7
狩りする姿がカッコよく密かなファンになりました。
姿をチラ見するだけでいいんです。
でもねちょっと思っちゃう。
どれだけ徳を積んだならあなたの隣にいられるんだろう。
バカな私に呆れちゃう。
同じ時代の同じ場所に生きていられただけで満足なさい。
モブがヒーローに恋をして毎日胸きゅん止まらない。

◇8
洞窟になんて入らない。
お宝欲しいなら師匠が行ってよ。
やらなきゃ捨てるって酷すぎる。
鬼悪魔。バカバカバカ。
震えながら足を踏み入れる。
ほらっ!ドラゴンが襲いかかってきた!
シュバッと一撃師匠の剣。
血の雨が降りアイテムはいつの間にか私の手に。
本当は優しい私の師匠。
飴と鞭に翻弄ダンジョン。

◇9
鬼にさらわれて1週間。
3つ上の男の子と一緒にいた。
どちらを食べようかと鬼が視線を巡らせた時、
俺にしろ、この子は助けてくれと
強い眼差しで言い放った。
でもその足は震えていた。
すんでのところで助けられ
それきり会えなくなったけど
ずっと忘れられないの。
強烈すぎる初恋の君。
早く私を迎えに来て

◇10
前世で私を殺した人と現世で夫婦になるなんて。
ある日記憶が蘇る。
どんなに優しくされていても
首に巻かれた冷たい手の感触が今もまだ残ってる。
君の全てに怒りを覚える。
君が憎い。
目には目をで殺してやりたい。
血が滲むような苦しみ味合わせたい。
唇に差し込まれた熱い舌を
噛みちぎって吐き捨てたい。

◇11
君の魂を絞り出してよこせ。
皿に乗せて食べてやる。
ああうまい。
極上だ。もうこれは手放せない。
首輪をつけて飼ってやる。
よく見りゃ見た目も絶品だな。
これは掘り出し物だったかもしれんぞ。
明日からが楽しみだ…
なんだと?息をしていない?
寂しすぎて死んだのか。
今更気づく。
俺は君を愛していたと。

◇12
意地悪な家来が私の盾になり侵略者から守ってくれる。
「俺にはもうあんたしかいないから」
囁き声に胸がときめく。
きっと何があってもこの人は私を裏切らない。
世界中が敵になってもずっと私のそばにいてくれる。
圧倒的な信頼感は過去の経緯をかき消して
新しい感情で心を満たす。
ああ、これが恋なのね。

◇13
「とったどー!」
でかい魚ぶら下げて満面の笑顔。
海やけで真っ黒な彼から成果を受け取り
ためてた雨水でざっと洗い
おこした火でこんがり焼いて。
「美味しいね」と笑い合う。
もうこのままでいい気がするの。
無人島に2人きり。
2年の月日はあっという間。
流されたのが君とで良かった。
心の底から愛してる。

◇14
俺が強いのはメンタルだけ。
こんな最弱のスペックで世界となんて戦えない。
「それでもお前しかいねーんだよ。選ばれし者のつとめを果たせ。俺が隣にいてやるから」
土砂降りの中肩を揺さぶり
お前は酷なことを言う。
「頑張れ。救世主」
惚れてなかったらぶっ飛ばしてる。
雨に萌えるずるく美しい魔性の男。

◇15
私が本当は鶴だと知れば
貴方の心は離れてしまう。
だからせっせとはたを織る。
手を動かしている間は無になれる。
空なんて2度と飛べなくていい。
人間として生まれ変わりたい。
曇りない眼で見つめ合いたい。
私の命を救ってくれた優しく強い大好きな貴方と。
無駄な願いを胸に秘め、今日も私ははたを織る。

◇16
古代ローマへ異世界召喚。
イケメン王に求婚された。
黒髪黒目。ここでは凄い価値がある。
「執着されると辛いです。貴方を騙しているみたいで」
王は私の手の甲に口付ける。
「控えめな乙女だな。そこがいい」
「王様…」
「元の世界には帰さない。俺の傍に居ろ」
王の言葉に体が痺れる。
恋の魔力に抗えない。

◇17
‪まだ恋を知らない私がアニメの君に恋をした。
魔法が使えて優しくて
誰かの為に命をかける最高のヒーロー。
クラスの男子達が一気に色褪せ、
「2次元に恋して生きていく」と私は密かな決意を抱く。
平面でもリアルでも恋は恋。
心拍数が上がり君のことばかり考えてる。
紛れもなくこれは恋。
初恋は魔法使い。

◇18
「さあ逃げろ。ゲームの始まりだ」
魔王の声にダッシュする。
路地裏から階段をのぼり屋上に鍵をかけて立てこもる。
絶対私は逃げ切ってみせる。
しかし魔王は空からやってきて私はとらえられてしまう。
「諦めはついたか?今から婚礼の準備をするぞ」
思わず涙が溢れ出す。
強い魔王の深すぎる愛が恐ろしい。

◇19
スプーンに山盛りのキャビアをえずきながら飲み込んだ。
君のためならいくらでも
高級食材を調達するよと言われて微笑み返す。
そんなものより縄を解いて。
部屋から出して。解放して。誰にも言わないから。
許してあげるから。
ねえ、お願い。
言えない言葉がキャビアと共に胃に落ちる。
監禁生活3度目の夏。

◇20
檻の中の小さな少女。
青い目。金色の巻き髪。瞳の奥の隠しきれぬ恐怖。
あれが僕にはたまらないんだ。
鑑賞するだけなんて絶対無理だ。
心奪われてしまってるんだ。
檻ごと君をここに運んで心通わせたいと願う。
無理なんだろうか。
君を独り占めするなんて。
許されない恋に身悶えする。
檻の中の君に恋した。

◇21
生きるため仕方なく貴方に声をかけた。
「吸血鬼なんです。お願い命をわけてください」
優しい貴方は月に1度首筋を差し出してくれる。
喉と心を満たす熱く甘美な貴方の血。
たまたま身近に貴方がいたから
ただそれだけで始まったのに
もう私、手放せない。
いつしかどっぷり貴方中毒。
次は心をわけてお願い。

◇22
クローゼットにバラの香り。
彼女のバースデーサプライズ。
息を潜めて帰りを待つ。
2時間ほどして彼女が戻ってきた。
特別な日だというのに直ぐにベッドへ倒れ込む。
おやおや随分お疲れだね。
ドアを開けて花束を差し出す。
「おめでとう!」
彼女の目が驚きに見開かれ小さな唇がこう呟く。
「あなた、誰?」

◇22
手作りの人型ロボット。
何でも肯定するようプログラムした。
しかしすぐに物足りなくなって
僕はロボットに当たるようになった。
惜しいんだよ君は。努力が足りない。
もっと僕を喜ばせろよ。でないと分解しちまうぞ。
ある日めざめたら彼女はいなかった。
ロボットにも心があるとやっとその時僕は気づいた。

◇23
未来からやって来た人型ロボが私を殺しにやってきた。
袋小路に追い込まれた私に金属製の手がのびてくる。
「これあげる」
差し出されたのは一輪の花。
「私を殺すんじゃなかったの?」
「そう言われてた。しかし君を愛してしまった」
私は花を叩き落とす。
温い愛など必要ない。
追われる事が快感なのだから。


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