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10 なれそめ

「君ってモテるでしょ。土筆みたいにすくすく育って素直で今時珍しいぐらい素直そうだもんね。彼氏いるの?」「いません」「じゃあ俺とつきあわない?」いえいえ店長つきあえません。だって面接中やないですか。たった今あったばかりやないですか。それともただの冗談ですか?これ何かの拷問ですか?

「……っていうのが馴れ初めらしい」
放課後のマックで、ふと両親の出会いについて友人に話した。
友人の両目が大きく見開く。
「ま、マジで……?! それってセクハラじゃん?」
「同じこと思った。でも昔は普通だったんだって」
「へええええ」
「ママ、よくそれでバイトする気になったよね。私だったら帰るなあ。怖いもん」
「確かに」
友人は頷きながらもこう続けた。
「でもさーあんたのパパって素敵じゃん。帰らなくて良かったよね」
……確かに。

マックを出て、友達と別れ電車に揺られる。
正面に制服姿のかっこいい男の子が座っていた。
「君って素朴で可愛いね。彼氏いるの? いないなら俺と付き合わない?」
なんて、もし彼に突然言われたら……。

私は苦笑した。

今時、土筆みたいな素朴な子に、いきなり付き合おうなんて声をかけるメンズなんていない。
ママたちが青春を過ごした時代とは違うんだ。
電車を降りてしばらく歩くと、駆け足の音が迫ってきて「あの」と誰かが声をかけてきた。
振り向くと電車の中のイケメン君。
どきん、と心臓が大きく跳ねた。

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