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【ヤバい奴12選】恋をキリトル140字の物語 14

◇1
振られた。
鮫の話に夢中になって
退屈顔に気づけなかった。
仕方なく1人で水族館へ。
シャチのショーで憂鬱をぶっ飛ばす。
最前列でポンチョも着ずに
巨体が生み出す波をばしばし受ける。
ほんの少し愛があったらさ、趣味話くらいのってくれればいいじゃん。
ブールの水で涙を洗い、さあ次の恋探すとするか。

◇2
さほど親しくもない誰かのために
借金5億背負うバカ。
ひょんな事から知り合って相棒になって
毎日ピュアさに呆れるばかり。
そんなに人を信じきってたら
また騙されるだろうがよ。
俺がいなきゃダメなんだろうなあ。
しゃあない一生守ってやるか。
この苦海から抜けたとしても
俺お前からは抜けられないんで。

◇3
Xマスにあげた手編みのセーター。
元カレはネットで売っぱらい
私は二つの気づきを得た。
「あいつはやっぱりゲスだった」
「私の手編みには五万の価値がある」
手編み作家になったのはそれがキッカケだったから涙の元は十分とった。
彼のおかげなんて口が裂けても言わないよ。
でもどんな恋にも意味はある。 

◇4
「美男美女やし、なんかあんたらお似合いやん」
あの日の一言がきっかけや、って
結婚式でスポット当たりサプライズでお礼言われた。
そうか。私がキューピットか。
大好きな2人やししゃーないな。
初恋の兄貴幸せにしてな。
号泣してもーたけど祝福の涙って勘違いされて
新婦めちゃくちゃもらい泣きしとる。

◇5
街中でばったり彼に会った。
嬉しくて正面へ飛び出す私。
「うわっとー」
キョドる彼に
「ラッキー!今丁度あんたのこと考えてたんよ」
満面の笑顔でそう言うと
「やめろや。俺、勘違いするで」
彼は頬を赤くする。
ああこの反応たまらない。
焦る君がご馳走なの。
ずっと惑わせ続けたい。
恋の手前の小悪魔気分。

◇6
「俺あんたがめちゃくちゃ好きやわ。一生友達でいてな」
つぶらな瞳で囁く彼。
ハートを射抜きにかかってる。
この後何が出てくるか。
壺か鍋か札か。怖いわ。
「私、男と友達にはならんの」
ぷいと顔を横に向ける。
「えーじゃあ俺らの関係は?」
「ただの知り合い」
「3時間も話すかな」
「気の合う知り合い」

◇7
「時効だから言っちゃうけど君の事が好きだったんだ」
クラス会で告白された。
「私もよ。今日は君に会いに来たの」
「返しがうまくなったねーでもサンキュ。嬉しいよ」
微笑む君の薬指には指輪がきらりと光ってる。
「本当よ。ちなみに私一般常識気にしないから」
上目遣いに攻めたてる。
試合開始は君次第。

◇8
歌ってる時だけ自由になれる。
だから心の声を歌にしたら
「怖い」と君にばっさり言われた。
「ミュージカルじゃあるまいし」
私はいつも他人とズレてる。
変って事が自覚できない。
しょげてる私にくすりと笑い
「けど好き」と頭ポンポンされた。
告白OKって事ですか?
乙女の勇気を受け取ってくれてありがとう。

◇9
チャラ男の君とタクシーに。
クラス会では話さなかったけど帰りは一緒の幼馴染。
君の口から零れるのは仕事の話に夢の話。
女子を手当り次第口説いてた
さっきとはがらりと態度が変わる。
やっぱり酔ったふりなんだ。
私には演技する気もないってわけ。
悔しくて君の手を握ってみる。
君の真似して酔ったふり。

◇10
‪自意識過剰で人見知りで赤面症で
うまく笑えなくて
嫌なことあるとすぐ顔に出る。
なんでこんな私が好きなの?
「いいところあるだろ。他人を絶対傷つけない」
生きてくことに精一杯で爪を研いでる暇がないだけ。
「ああ言えばこう言う。そういうとこ、好き」
君は本当にマニアック。
蓼食う虫も好き好きな人。

◇11
‪暗がりで24時間君を待つ。
脳裏に浮かぶ細い眉と薄い唇。
口移しで果物を食べ愛の言葉に頷く私。
嫌だったのは最初だけ。
心は君へと傾いている。
好きよ。
君なしでは生きられない。
お願い。早く帰ってきて。
地球上にどれだけ人がいても
私には君しか存在しない。
今日も君を恋焦がれる。
監禁生活8日目の夜。

◇12
浮気心が芽生えた朝
彼が田舎からやってきた。
なんてカンが鋭いの。
行きずりの男泊めなくて良かった。
ああ恋なんて面倒くさい。
私を束縛したいなら
もっともっとときめかせてよ。
馴染んだ唇いつもの手順。
テンプレートな愛の言葉にもううんざり。
声を荒げても優しい彼。
ごめんね。悪いのは全部私なのに。


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