12開店前
「お前ってさあ、もうちょいリアクションしろよ」
「すみません」
「そうじゃなくってさあ」
鉄板を素手で持ってしまった私を前に、店長のお説教は続いてる。
処置が良かったのか火傷はない。
でも店長はなんだかまだ怒ってるようだ。
「私、とろくて……迷惑ばかりかけて……本当にダメダメですよね……」
責められてる間に落ち込んできた。
店長ってすごく一生懸命だから。
パンを愛してるのわかるから。
なんの夢もない私は、店長の力になることだけを目標にして、毎日頑張ってたつもりなのに……。
ダメだなあ。
いつも空回り。
お役に立ちたいだけなのに……。
かえって足ばかり引っ張ってる。
こん、と額をつつかれた。
「いたっ」
「的外れな落ち込みすんじゃねーよ。心配なだけだ。そんなにリアクション薄いとさあ、助けに行けないだろ?」
「そんなことないです!」
私はついムキになる。
「今日だって……助けてくれましたし……これからもきっと……」
そう。
いつも助けられてばかりだから……何か恩返しを私もしたくて。
でも、しっかりすることくらいしか、今の私にはできそうにない。
「……ありがとうございました。パン、作りますね!」
笑顔で言って作業場に向かう。
と、肩をつかまれて、強引に椅子へ座らされた。
「少し休んどけ」
「でも」
「命令だ」
大股で作業場に向かう後ろ姿。
小さな胸が、とくん、と鳴った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?