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【色々28選】恋をキリトル140字の物語 21

◇1
いい子だねって言われる私。
でもやっと気づいたの。
私が人気者なのは
私が何者でもないからだって。
何か大きなことがしてみたい。
生きてる確かな証が欲しい。
「いい子じゃないお前も絶対好きだよ」
彼氏に言われてほっとして、
とりあえず髪を切ってみた。
キラキラ光る未来の私。
まずはそのための第一歩。
◇2
「こないだ動物ドキュメンタリー観たんだけどさ、チーターの狩りってエロいのな。怯えるインパラの腰に両手を添えて動きを止めてさ、ゆっくり喉にキバたてんの。その間、絶対にインパラから視線を離さない。ずっと見てんだ。目の前の獲物を」
そして彼はニヤリと笑う。
「あんた、インパラに似てるよな」
◇3
BFの部屋でゾンビ映画。
このチョイスで私の立ち位置把握したよね。
彼にとって、私はただのオタク友達。
期待した私がバカみたい。
でも途中で彼がこう言った。
「彼女がゾンビになっても愛し続ける。純愛やろ。好きな女と絶対一緒に観たかったんや」
突然ギュッと握られる手のひら。
近づく唇。
ときめく胸。
◇4
歩道でいきなり男性がふらついた。
支えてベンチに座らせる。
(どうしよう。スマホ、ない)
誰かがすっと横にきて
「医者です。よく支えましたね。大方の人は怯えて手が出せないんですよ」
脈をとる彼の額には汗の粒が浮いていて。
胸の鼓動が早まったのは
きっとホッとしたせいと、
その時の私は思っていた。
◇5
「美穂先生耳かして」
ナオキくんに言われてしゃがんだら
右のほっぺにチュッとされた。
それを見てたリョータくんが
「先生は僕のもんだぞ」
左のほっぺに同じくチュッ。
実習3日目の出来事に
私の胸はあっけなくドキドキ。
私を挟んで睨み合う5歳児。
好きなものを好きって言える
君たちの未来はきっと明るい。‬ 
◇6
「男なんて視線一つで落とせるわよ」
スナックのママさんがアドバイスくれた。
「そうかなぁ。全然ピンとこないよ」
「俺で試してみ」
「…こう?」
「…全然ダメ。こうやんだよ」
色っぽい目で見つめられ
心臓がとくんと音を立てる。  
「バカねえ。落とされてどうすんのよ」
笑うけどこれ
ママさんのせいだよ。‬ 
◇7
「鰐さん可愛い」
爬虫類ゾーンでしゃがむ彼女。
可愛いのは君の方だと思うけど
反論祭りになるから黙っとく。
うふふ、とまるで小動物を愛でるみたいに愛しげな微笑み。
なあまさか俺に惚れてくれたのって
強面だから、なんてないよな?
まあどっちでもいいんだけどさ。
人外にすらざわつく胸に恋心を再確認。
◇8
1週間森の中にいってきますと
有給とった総務のあの子。
たった1人で
斜面を使った木琴作りに精を出してた。
インスタに上げられる途中経過。
組み上げられてく長い木琴。
コロコロと玉が転がって美しいメロディ奏でてく。
ああ…なんていい音だろう。
好きなことやってるだけですから、と
笑う姿が頭に浮かぶ。
◇9
「僕と結婚してください」
片手を差し出しプロポーズ。
すかさず彼氏がしゃしゃり出た。
「残念だったな。彼女は俺のものなんだよ」
「ちょっと、小学生に何言ってんの」
「馬鹿言え。十分オスの目だ」
可愛い手のひらに飴を乗せ
「ごめんね。そういう事なんだ」
たちまち肩を落とし俯く君。
初恋をありがとう。
◇10
唸られてる。
睨まれてる。
嫉妬深いと聞いてたけど怖すぎる。
隙を見て飛びかかろうとかまえてる。
私は彼女のライバルだと一目見てわかったみたい。
残念だな。友達になりたかったのに。
同じ相手を愛してしまったから仕方ない。
地味な彼の秘めたる魅力に誰より早く気がついた。
目利きの金色ポメラニアン。
◇11
女子会でプロポーズのセリフを尋ねられ
「便利だから手放せない」
正直に答えると空気が凍った。
「物扱い?!」
「引くわ…」
「やめれば?」
口々に反対されたけど誰も知らない。
毎日家まで送ってくれて
痴漢からは助けてくれて落ちてる時は察してくれて。
完璧な王子に足りないのは
言語化能力だけってこと。
◇12
優しくて賢くて働き者の君が
突然彼女が欲しくなり
傾向と対策練っている。
3時間相談に乗って気がついた。
要点間違えとるわ。
君に必要なのは気さくさだよ。
高嶺の花で遠巻きにされとるの。
決してモテないわけじゃない。
勘違いしたらドツボにはまるで。
君の立ち位置天界やから。
まずは下界へおりといで。
◇13
年に一度の逢瀬でも
貴方に会えるなら私幸せ。
晴れのち雨の天気でも
恋ができるならそれで満足。
そっと目を開き貴方が来るのを待っている。
貴方に出会うまで恋なんてファンタジーだと思ってた。
細胞の欠片まで変わった私を隅々まで見てちょうだい。
舞台に上がって頭を下げる。
お出迎えの準備はできてる。

他の人とデートした。
君の気を引くために。
でも逆効果。
君は私が嫌いになった。
いつも私を見つけると
目を細めて近寄って来たのに
今ではまるで透明人間。
視線が素通りしていくわ。
あんなことしなきゃ良かった。
仕事ばかりの君をこらしめたくて。
ヤバいって思わせたかったの。
後悔してるわ。愚かな行為。
◇14
交差点で君とすれ違った。
10年前に別れた彼女。
「貴方は私を向上させる人じゃない」
そんな台詞で居なくなった君を
僕はずっと恨んでた。
相変わらず生真面目な顔で
すこし顎をあげて歩くんだね。
血のにじむような想いも甘い夜も
今では全てが懐かしい。
君はやっぱり僕に気づかず
ただ前を見て去っていった。
◇15
「お前だったらもっと可愛い彼女出来るだろ」
「俺にとっては世界で1番可愛いんだよ」
「うっわ。甘っ!それ以上喋んな。蟻が来る」
「彼女にもやめろって言われるんだよな。俺の愛が深すぎるんだって。けどまあ可愛いんだからそりゃ言うよな」
デレついた顔。
つまんねーな。
俺だけのお前だったのにさ
◇16
一度くらいなら許してあげる。
でも君は何度も求めてくるでしょう。
おかげで一睡もできそうにない。
大事なプレゼンあるのに最悪だわ。
やめてって瞳で訴えても追い払っても諦めないのね。
果敢に向かってくるところ
呆れながらも感心するわ。
玉砕覚悟の特攻隊。
臆病な私とは真逆な君は
命懸けのモスキート。
◇17
「内なる悪魔は存在する。だけど押さえこんで死ねたらお前の勝ちだ。お前は運命を切り開いてきた。好きだぜそういう生き方」
両目から涙がこぼれ落ちる。
なんで君が大嫌いな君が
憎まれ口ばかりの君が
冷血漢の君がそれを言うの?
お前は悪くないって誰かにずっと言って欲しくて。
どうしよう
涙止まらない。
◇18
化粧を落とすと別人なのです。
芸能人ってバレません。
だから共演中の人気俳優にナンパされて
面白がってついていきました。
サプライズで笑わそうと思ってたのに
普段の彼が好青年すぎて
ネタばらしなかなか出来ません。
こんなに真摯に話すんですね。
いつもはチャラけてばかりなのに。
素顔の君に恋しそう。
◇19
「番号一応教えるけど絶対私を好きにならないでね!」
「えっ?」
「ちょっと何驚いてんの」
「んーっと」
「だから何?」
「もう手遅れっつーか…とっくに好きになってるわ」
「削除するからスマホかして!」
「嘘だよ。まだ好きじゃない」
「本当に?」
「5分後には好きになるけど」
「やっぱりスマホ返せ!」
◇20
「男なんて網はってりゃいくらでも引っかかるでしょ」
「好きでもない人を引っかけてもなあ」
「意味が無い?たった1匹を釣り上げようなんて非効率だよ。だからアンタはひとりぼっちなんだよ」
「そうかなぁ」
「試しにほらやってみな」
ママさんの煽りに店内を見回す。
網の張り方もっと詳しく私に教えて。
◇21
一緒にいてもはにかむしかできない。
そんな私を1番好きと言ってくれる。
君はもしかしたら神なのかな。
君がいなかったら私はきっと
永遠に1人ぼっちだったと思う。
そんな馬鹿なって笑うけど
冗談じゃないよ。
ほんとの気持ち。
見つけてくれてありがとう。
ずっと好きでいる事で、この恩返させてもらいます。
◇22
「BFの1人でいいからステージに上げてくれませんか」
「無理です。だって好きじゃない」
「では嫌いですか?」
「嫌いになれるほど貴方を知りません」
「じゃ何故好きじゃないと言えるんですか?結論出すの早すぎですよ。長い目で見てください」
「…案外しぶといんですね」
「幸せにする自信ありますから」
◇23
魚捌くの凄く上手いね。
変な魚も三枚に下ろすね。
味付け見事。魚博士と呼んでいいかな。
私の彼が好きなもの。
魚に料理にそれから私。
小骨をとった魚の煮付け、あーんでお口に運んでくれる。
身が柔らかく舌先で蕩けて私の体も食べ頃になる。
いつものルーティン。
甘く楽しく最高な魚まみれの豊かな毎日。
◇24
‪いつもの店で白いモヘアを手に取ったら
「やめとけ。お前が着るとマタギになる」
毒舌スタイリストは相変わらず。
「ささやかな胸の女にはダーツのブラウスが合うんだよ」
「見栄張って1サイズ下げても着られないなら意味ねーぞ」
結局紙袋2つ分のお買い上げ。
こんな男に片思いなんて
私は多分Mなんだろう。
◇25
「アイツに告るのは俺を倒してからにしな」
「や、もう、いいです!」
奴はバタバタ逃げてった。
弱い男に宝物はやれねえ。
家に帰れば妹がドラマ見ながら溜息ひとつ。
「彼氏欲しいなー。なんで私モテないんだろ」
「心配するな。俺が一生面倒見たる」
「わーい」
ケラケラ笑う無邪気な天使。お前は俺の宝物。
◇26
妹がどうやら恋をしている。
潤んだ目に甘いため息。
リップの色も微妙に変わった。
つまらん奴なら許さんぞ。
俺の大事な宝物
容易く渡してなるものか。
「大丈夫だよ振られたから」
涙目で教えられ頭の中が沸騰する。
誰だよこんな可愛い子を振っちまうバカは!
成敗してやる。
本当はかなりホッとしてるけど!
◇27
「優しい人の振りが得意なんです」
3時間話を聞いてくれた後に言われた言葉。
自虐なのか否定が欲しいのか
牽制か何も考えていないのか。
君の心はまるで読めない。
でも…振りか本気かは知らないけど
君の3時間を私にくれた。
それだけは絶対間違いないから。
私にとって君は紛れもなくとてつもなく優しい人。
◇28
ニコリともしないクールビューティ。
ダメ元で告ったらOKだった。
「なんで俺なの?他にもライバル一杯いたでしょ!」
「笑えって言わないの君だけだったから…楽だと思った」
「そんな理由?!」
「今の私じゃない私を期待されるのは結構キツいよ」
いつか絶対笑わせてやるって
密かな願望黙ってて良かった。


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