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【メンター15選】恋をキリトル140字の物語 9

◇1
お別れの会で助教授が「やぎさん郵便」を歌った。
「僕は色が黒いから黒やぎさん。皆は白やぎさん。卒業してもメール下さいね」
いつもの優しいバリトンに、私の涙腺一気に崩壊。
先生、明日メールします。
好きでした、って。
先生のおかげでとっても楽しい毎日でした。
片思いからの卒業を心に誓う春の朝。‬ 

◇2
ルックスが好みの子を好きになりゃいいじゃねーか。
口きいたことないのに無理って?
ばーか。だからこその見た目なんだろ。
見るだけならな、出会いはどこにだって転がってるんだ。
お前みたいに女の前でテンパる奴は
まず好きなることから始めるんだよ。
そしてとことん片想いを味わえ。
全てはそこからだ。

◇3
家の鍵盤が軽すぎて音をうまくつかめない。
「言い訳はいいから指を動かせ」
鬼コーチにバッサリやられてメンタル降下。
私絶対才能ないよ。
「愚痴ったら構ってもらえると思ってるだろ」
はい。当たり。
頭ポンポンのルーティン。
レッスン終わったらいつものパフェに連れてって。
今はピアノより先生が好き。

◇4
「君顔は整ってるんだけどさ、何かが足りないんだよな」
「それは何でしょう。教えてください。モテ師匠!」
「うーん」
近づく顔。観察されてる。
「愛嬌…はあるな。ないのはそう、色気だな」
「どうすれば身につきますか!」
「個人指導してほしい?」
「もちろん!」
「じゃ上むいて目を閉じて」
「はいっ」

◇5
1人で空を見ている君に私は今日も会いに行く。
「お弁当余ってるの。食べない?」
「うぜーな」
「お願い。一緒に片付けてよ」
眉をしかめてぱくつく君。
可愛いなあ。
学年1の不良だなんてフェイクでしょ
私ちっとも怖くない。
チャイムが鳴るまでひっついてる。
「離れろバカ」
やだよ。お弁当のご褒美回収。

◇6
「徹夜3日目?!バッカじゃないの?」
白い指がMacを強制終了。
「こら納期明日…!」
「体壊したらプログラムどころじゃないでしょ。3時間後に起こしてあげる。私は幼なじみの健康管理に協力してあげてるの。感謝なさい」
仕方なく従い目覚めたら朝。
「ごめんなさい。一緒に寝ちゃった…」
可愛いから許す。

◇7
故郷の彼女に電話して変わらない声にほっとした。
「ちゃんと食べてる?春になったら遊びに行くね」
半年分のハグを送りたいのに会えない距離がもどかしい。
僕は秒速で変わっていくよ。
見た目も心も以前とは違う。
でも君だけはそのままでいて。
港の景色を失いたくないから。
わがままな僕をどうか許して。

◇8
バイト先に裏番長。
半径5メートルを死守するチキンな私。
帰宅中の公園前酔っ払いに絡まれた。
怖い。嫌だ。誰か助けて。
「離れろこのバカ」
酔っ払いに蹴りを入れ私の手を掴み走る彼。
「あの道暗いから心配だった」
偶然じゃなくて見ててくれたの。
突然ヒーローになっちゃった君に胸の鼓動が止まらない。

◇9
族の頭に告白され震えながら断った。
「だよな。ごめん」
済まなそうな苦笑い。
翌日土砂降りの公園で小猫を抱きあげる彼を見た。
「孤独なもん同士仲良くやろうぜ」
大事そうにコートにくるみ歩き出す。
思わず駆け寄り傘をさしかける。
視線があって心臓が跳ねる。
猫を助ける強面を女は決して無視できない。

◇10
同期のBFに誘われいつものバーへ。
営業部の王子が一緒にいた。
わー。やっぱり凄く可愛い。
肌は真っ白。
肩幅狭くて隣りのゴリラとは大違い。
「この後俺、抜けるからさ。頑張れよ」
彼に耳打ちされて両目を見開く。
「やだ。いてよ」
「え?お前コイツのファンなんじゃ…?」
「攻めがいないと萌えられない」

◇11
子供みたいな丸顔が大嫌い。
そう言って嘆く俺の彼女。
正直さ
丸だろうが四角だろうが
顔の形なんてどうでもいいのよ。
居てくれるだけで十分なのよ。
もうさ、それだけで輝いてるから。
でもなちっとも喜ばないんだ。
変化に気づいて欲しいと怒られちまう。
多分俺は残念彼氏。
愛の量には自信あるんだけどな。

◇12
誰かにとって都合のいい自分であろうと必死だった私。
ありのままでいいと言ってくれる君にムカついた。
ダメな私を肯定するなんて
見る目がないとさえ思えた。
究極に間違えない完全体を目指してた私。
ロボットにでもなりたかったのかな。
君のおかげで目が覚めたよ。
等身大の私を愛してくれてありがとう。

◇13
痛みなんてない。
悲しくなんかない。
辛くない。
寂しくもない。
どうして過去と向き合わなきゃならないの。
見て見ぬふりで生きてたいのに。
あなたが私の手を引いて深海へと潜ろうとしてる。
きっと2人して溺れるわ。
そんなの嫌よ。ほっといてよ。
鋼のような愛に息が止まるわ。
地獄など行かない。絶対に。

◇14
ネガティブシンキングな頭の中。
グルグルグルグルやな事ばかり。
あなたは扇風機みたいな人で
ゴミだらけの頭の中をフーって吹きとばしてくれる。
その速さが惜しいのよ。
もっと付き合って欲しいんだ。
私の中のグルグルは深くてでかくて間が悪い。
寄り添って慰めてくれなくちゃ
シンデレラにはなれないの。

◇15
絞り出すように祈るように
たどたどしく言葉を紡ぐ女の子。
まるで以前の僕みたいだ。
不器用な自分が大嫌いで小器用なスキルで身を守って
いつしか本当に器用になってスレて。
でも君を見て気づいたよ。
痛くて青いあの僕こそ本当の僕だった、って。
胸がちぎれそうな程君が愛しい。
お願いだ。変わらないで。


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