【超良問】東大数学史上最高傑作ともされる2020年度入試を語る

今日はいつもとは異なり、少し雑談したいと思います。今回のトピックは東大数学2020です。数学に関する内容ですが、数式を一切使わない記事になると思います。また、解説も一切しないつもりですので、気楽に読んでください。


最高傑作との出会い

僕の考える東大数学史上最高傑作となる問題セットは2020年度入試だと考えています。その理由は大きく分けて2つありますが、それは後ほど述べるとして、まずはこの問題との馴れ初めを紹介していきます。
実は、2020年度入試は僕が初めて解いた東大数学です。僕は2022年度入試を受けた学年ですので、2020年度入試が行われた時点ではまだ高1でした。当時東進が行っていた東大同日模試を初めて受験し、そこで初めて東大数学と対面しました。最初の印象はとにかく問題文の威圧感がエグいという感じでした。何言ってるかわからないのは勿論、わかったとしてもどう解いたらいいのか検討がつきませんでした。とはいえ第1問が2次関数の証明で完答、第2問や第3問、第6問での部分点を稼いで50点弱、と高1にしては悪くない点数であった気がします。ただ、今までの模試とは格の異なる難易度の問題に直面して、少し楽しかった覚えがあります。

問題を見てみる

問題を見てみましょうか。

第1問~第3問
第4問・第5問
第6問

この年は、東大数学に頻出な分野である確率、整数、複素数平面が全く出なかった年でした。これからこの問題セットが良セットである理由をいくつか紹介していきます。

出題範囲のバランスが良い

例えば、6問すべて整数や確率に関する問題だった場合、そういった分野が得意な人(思考力が高い人)が有利になり、決して公平な試験とはなりません。入試問題はあらゆる分野から出題されることが望ましいのです。この問題セットの内容は下のようになっています。

  1. 不等式に関する論証(論証力)

  2. 純粋な図形問題(思考力)

  3. 微分積分の標準問題(計算力、微積への理解度)

  4. ある数列が係数の多項式に関する問題(思考力、対応力)

  5. 求積問題(空間把握能力)

  6. 解の存在条件に関する問題(論理力)

と、それぞれの問題で求められる能力にほとんどかぶりが無いことがわかります。また、数学の分野に関しても3と5の積分が少し被っただけで、あらゆる分野からの出題となっています。

難易度調整も見事

あらゆる分野から出題されていたとしても、全問難しくて誰も解けなかったら、部分点競争の運ゲーになってしまいます。適度な難易度にすることが求められます。
確実に取っておきたい問題が1と3、差がつきやすい問題が2と5、数学が得意な人向けの問題が4と6という感じになっています。幅広い難易度の問題がちりばめられていて、丁度良い難易度設定になっています。4と6は難しいとはいえ、時間をかければ何とか答えにたどり着くくらいの難易度で、試験場で解くのは不可能ということはありません(東大は何回か試験場ではほぼ完答不可能な問題が出題されています。例えば2009,2010,2023の第6問を参照してみてください)。

個々の問題の独特さ

他大学の入試問題では、よく問題集に掲載されているような有名問題、典型問題が多く問われます。ですが、東大はその逆で、基本的に真新しい問題が多い傾向にあります。実際に2020年の問題を見てみると、典型問題が1個もなく、強いて言うなら5に似た問題が他に何個かあるかなというくらいです。
1に関してはもはや衝撃でした。高1で習う範囲で完結しているのが珍しく、かつ東大の入試問題として機能するレベルの問題になっているということが素晴らしいです。
3は一見ただの微分積分の問題ですが、ある曲線で囲まれた領域を90°回転させてできる図形の面積を求めるという珍しいパターンの問題でした。誘導が超丁寧なので、このような問題を初めて見る人でも簡単に解けます。
4はある数列を係数とする整式について考えて、数列における関係性を見いだしていくという問題で、これもなかなかないレア物です。このセットではおそらく最も難しい問題だと思います(しかしなぜか文理共通問題…)。
そして6は個人的に好きな問題です。数学的論理力のすべてが詰まっているような問題です。誘導が一見関係無さそうでかなり強力な武器となるというアツい展開な上、「最大値」の意味をじっくり考えないと完答はできないという良問です。

最後に

東大数学2020の良さを感じとることができたでしょうか。気になった人でまだ解いたことがないよという人はぜひ解いてみてください。解き終わった頃には達成感と学んだ感で胸がいっぱいになると思います。東大数学の予想問題を作っている者としては尊敬し、見習うべき問題ばかりです。

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