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【大学入試数学解説】第n次導関数を漸化式を用いて求める(出典:東大・理系2005第1問)

こんにちは。今回は東大の問題を取り上げつつ、第$${n}$$次導関数と漸化式の活用について解説していきます。


問題

まずは、問題文を見てみましょう。余裕のある人は下にスクロールせずに自力で解いてみましょう。

東大・理系2005年第1問

概要

出題範囲:微分法(Ⅲ)、数列(B)
難易度:9(1 ⇦ 簡単  難しい ⇨ 10)
標準解答時間:30分

第$${n}$$次導関数を求めるという入試問題としてはありがちな問題で、漸化式を求める(1)までは絶対に拾いたい問題。(2)で連立漸化式を解くことになるがここが難関ポイント。教科書には載っていないようなテクニックを使わないと解くのが難しい漸化式の問題です。

解説

(1)の解説

まず、すべての自然数$${n}$$に対して

$${f^{(n)}(x)=\displaystyle\frac{a_n+b_n\log x}{x^{n+1}}\ \ \ \cdots(\text{A})}$$

となることを示さなければなりません。問題文の「$${n=1,2,\cdots}$$に対し」という部分でピンとくる人もいると思います。数学的帰納法ですね。しかも数学的帰納法は漸化式ととても相性がいいです。方針としては数学的帰納法で間違いないでしょう。

まず、$${n=1}$$のときを確かめます。要は、$${f'(x)}$$を計算しろということですね。素直に微分します。$${f'(x)=\displaystyle\frac{1-\log x}{x^2}}$$ですから、$${a_1=1,\ b_1=-1}$$とすれば$${(\text{A})}$$式が成り立ちます。

次に、$${n=k}$$のときに$${(\text{A})}$$式が成り立つと仮定します。つまり、$${f^{(k)}(x)=\displaystyle\frac{a_k+b_k\log x}{x^{k+1}}}$$を仮定します。このとき、

$${f^{(k+1)}(x)=(f^{(k)}(x))'=\displaystyle\frac{-(k+1)a_k+b_k-(k+1)b_k\log x}{x^{k+2}}}$$

となるので、$${a_{k+1}=-(k+1)a_k+b_k,\ \ b_{k+1}=-(k+1)b_k}$$とおくと、$${n=k+1}$$のときも$${(\text{A})}$$式は成り立つ。これにより、数学的帰納法で式$${(\text{A})}$$がすべての自然数について成り立つことを示すことができました。また、先ほどの式の$${k}$$を$${n}$$に変えて、漸化式も得られます。

(1)の答え

証明は上の通り、$${a_{n+1}=-(n+1)a_n+b_n,\ \ b_{n+1}=-(n+1)b_n}$$

(2)の解説

ここからが本番です。(1)で求めた$${a_{n+1}}$$と$${b_{n+1}}$$の式を見比べると、$${b_{n+1}}$$の式に$${a_n}$$が登場しないため、$${b_n}$$を先に求められそうです。

さて、$${b_{n+1}=-(n+1)b_n}$$の式ですが、漸化式に慣れている人なら瞬殺かもしれません。$${b_1}$$から追っていくとわかりやすいです。

 $${b_2=-2\cdot b_1=-2\cdot (-1)=2}$$
 $${b_3=-3\cdot b_2=-3\cdot 2 =-6}$$
 $${b_4=-4\cdot b_3=-4\cdot (-6)=24}$$

数列$${b_n}$$は次の項に行くときに、前の項に$${-1}$$と$${n+1}$$を掛けるような数列だということです。つまり、$${b_n=(-1)^n\cdot n!}$$です。また、この部分は次のような別解もあります。

$${b_{n+1}=-(n+1)b_n}$$の両辺を$${(n+1)!}$$で割ると、

$${\displaystyle\frac{b_{n+1}}{(n+1)!}=-\frac{b_n}{n!}\ \ \ \cdots(\text{B})}$$

となり、$${c_n=\displaystyle\frac{b_n}{n!}}$$とおくと、$${c_{n+1}=-c_n}$$となるので、数列$${\left\{c_n\right\}}$$は初項$${c_1=\displaystyle\frac{b_1}{1!}=-1}$$、公比$${-1}$$の等比数列である。よって

$${c_n=(-1)^n}$$
 $${b_n=n!\cdot b_n=(-1)^n\cdot n!}$$

となり、$${b_n}$$の一般項を求めることができました。$${(\text{B})}$$式のように$${(n+1)!}$$で割ることで、数列のインデックス部分と分母を揃えたわけです。この手法は慣れないうちは難しいですが、かなり強力なので難関大を目指す人は是非習得したいところです。実際、ここから$${a_n}$$の一般項を求めるときにこの手法を使わなくてはなりません。

$${a_{n+1}=-(n+1)a_n+b_n}$$の式に先ほど求めた$${b_n}$$を代入します。

$${a_{n+1}=-(n+1)a_n+(-1)^n\cdot n!}$$

両辺を$${(n+1)!}$$で割ってみましょう。

$${\displaystyle\frac{a_{n+1}}{(n+1)!}=-\frac{a_n}{n!}+(-1)^n\cdot \frac{1}{n+1}}$$

ここで、$${d_n=\displaystyle\frac{a_n}{n!}}$$とおいてみましょう。

$${d_{n+1}=-d_n+(-1)^n\cdot\displaystyle\frac{1}{n+1}}$$

$${d_n}$$の前についている負符号が邪魔ですね。そこで、さらに両辺を$${(-1)^{n+1}}$$で割ってみましょう(積をとってもいいです)。

$${\displaystyle\frac{d_{n+1}}{(-1)^{n+1}}=\frac{d_n}{(-1)^n}-\frac{1}{n+1}}$$

$${e_n=\displaystyle\frac{d_n}{(-1)^n}}$$とおくと、あとは階差数列の一般項を求めるだけになります。

$${e_{n+1}=e_n-\displaystyle\frac{1}{n+1}}$$
$${e_n=e_1-\displaystyle\sum^{n-1}_{k=1}\frac{1}{k+1}\ \ \ (n\geqq 2)}$$

$${e_1=-1}$$ですから、問題文中の$${h_n}$$を使って$${e_n=-1-(h_n-1)=-h_n}$$となります(これは$${n=1}$$のときも成り立ちます)。よって、

$${a_n=n!\cdot d_n=n!\cdot (-1)^{n}\cdot e_n=(-1)^{n-1}\cdot n!\cdot h_n}$$

となります。

(2)の答え

$${a_n=(-1)^{n-1}\cdot n!\cdot h_n,\ \ b_n=(-1)^n\cdot n!}$$

まとめ

第$${n}$$次導関数を漸化式により求める方法を理解できましたでしょうか。このテーマはよく問われる頻出問題です。今回の問題はその中でもとりわけ難しい問題を取り上げました。(1)の内容だけでもマスターしてください。(2)の内容もマスターしたいという方は以下の例題にチャレンジしてみてください。ここまで読んでくださりありがとうございました。

例題(解説は近日公開します)

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