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【小説講座その2】アイディアを”ネタ”として昇華させる方法

どうもきりんです。

ココナラでの書評のお仕事や、ゲームシナリオのチーフディレクターなどの職につくと、自分より若いライターさんの荒削りな作品を見る機会があります。

そんなとき、「もう少し工夫すれば面白くなるのに、もったいない」と思うプロットや作品を多く目にするんです。

具体的に何にもったいないと感じるかというと、


アイディアをそのまま形にしてる……っ!!


という作品がとても多い。


面白いアイディアが浮かんだとき、そのまま小説やシナリオを書き始める人がすごく多いんです。

そして完成してみて「あれ? 思っていたよりも面白くないな」と感じてしまう。

その原因は、「アイディア」を次のステップにきちんと昇華していないからです。

じゃあどういう風にアイディアを発展させれば良いのか、というのが今回のお題。


このnoteは、以下のような人に向けて書いています。

・面白いアイディアを思いついてもなかなか作品にできない
・面白いアイディアで作品を作っても、完成してみたら面白くない
・アイディアを面白くするコツがわからない

そもそもアイディアの出し方がわからない人や、私の経歴について知りたい方は、こちらを読んでもらえば良いと思います。

今回はアイディアの膨らませ方について、「転生したらスライムだった件」を参考に解説していきたいと思います。


【ポイント1】アイディアはそのまま使わない

「転生したらスライムだった件」は、アニメとして大ヒットし、漫画でも4コマや派生作品が出ている人気作品です。アニメはすでに2期が決定し、2020年秋に放送予定。

さて、質問。


「転生したらスライムだった件」


このタイトルを聞いたとき、あなたはどんなストーリーを思い浮かべますか?

たぶん下のような感じではないでしょうか。

現世で何らかの事故に遭って死亡した元人間の主人公は、別の世界に転生して第二の人生を始める。しかし、転生したのはなんと最弱のスライムだった……! スライムとしてどのような困難が彼を待ち受けるのか……!

私はこんな話かと思ってました(笑)
でも実際は全然違いましたね。

おそらく作者も、最初期は私のようなアイディアを持っていたのかもしれません。たぶんそんなお話しだったらここまでのヒットはしなかったと思います。

ではなぜ「転生したらスライムだった件」(以下、転スラ)がここまでヒットしたのか……


それは、アイディアをアイディアのままで終わらせなかったからに他なりません。

一言で言えば、最初期のアイディアを自分の納得いく面白さになるまで煮詰める作業を行ったということです。

ゲームの現場だと、最初に出した企画が、ゲームの完成時にはまるで元が同じとは思えないほど変更されているというのはよくあります。

アイディアは最初期のまま書き出さない。

これは創作において非常に重要なことです。

具体的にどうやるのか

それは、アイディアの元となっている要素を分解していき、その魅力を引き出す要素をピックアップしていく作業を行うこと。

転生スライムの要素を分解していき、

・スライム
・ファンタジー
・異世界転生

こんな風に分けます。

じゃあ、スライムについて見ていきましょう。

この作品ではスライムという要素をさらに

・まん丸くて愛らしいマスコット
・何でも溶かして、吸収する不思議な生き物

という2つの要素に分け、それを詰め込んだのが

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(転生したらスライムだった件 10巻より)

この物語の主人公、リムル様。

さらに、「異世界転生」という要素によって、一般常識や現在の常識、社会経験を持ち合わせていて、それによってごまかしながらも自分の国を統治していく。

スライムの愛らしさと貪欲さ、そして一般常識を持ち合わせているという、魅力的なキャラクターはこうして作られたわけです。

では、「ファンタジー」という要素がどのように分解されたのか。それはおおよそ次のような感じでしょう。

・多国の群雄割拠
・様々な種族の軋轢、争い
・魔王、勇者などの王道的な設定

転スラのよくできている部分として、国家の設定がよく練り上げられていることがあげられます。

王国や連合といった設定からはじめ、国ごとの特産品や貿易、国同士の交流関係などが細かに設定されているんですよね。

そこに、様々な種族が絡んでくる。

ドワーフの国や獣人の国、魔王が治める国などなど。

そうした国に入れないゴブリンやオーガ、リザードマンなどの魔物が、リムルのところに集まって新しく国を作る……それが、本作の主題でもあるわけです。

それぞれの魔物には特性や異なった価値観があり、さらに国の思惑も絡んでリムルの歩む道がどれほど大変なのかがうかがい知れます。


この「ファンタジー」という要素の魅力を、この作品は最大限に引き出せています。

逆にダメな例を挙げていきましょう。

せっかくファンタジーという設定なのに人間しかいない世界や、

種族が違うのに思想ややってることが一緒だったり、

中世風の設定なのに車や飛行機がガソリンで走っていたりとか。

それ、その作品でやる意味ある?

という設定や要素の多い作品が、新人ライターや学生の作品には多い気がします。

それは、その作品が持っている要素を、ちゃんと引き出そうとしていないから。

アイディアをアイディアのまま、作品にしようとしているからです。

料理で言えば、素材を一切加工せずにただ鍋に入れて煮込んでいるだけのような感じ。

それじゃあおいしくなるはずがない。


というわけで、素敵なアイディアを思いついたなら

①アイディアの面白そうな要素を挙げてみる
②その要素ごとに、魅力的な項目を挙げてみる
③それを作品の設定として活かす

というプロセスを踏んでみてください。

次回は、ストーリーの組み立て方について紹介します。





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