見出し画像

藤野英人さんのコロナ暴落時代「インベストメント・トリアージ論」に寄せて(3/28 追記増補版)

(追記 3/28 22:39)情勢の変化を受けて、記事の内容に追記し、増補しました(執筆は3月26日)。全文は、同じ内容で私の有料メルマガ『人間迷路』にもございます。以前、当記事をご購入いただいた方にも、追記・増補内容をお送りしたいと存じます。

 ひふみ投信でおなじみ、藤野英人さんがnoteに論考を掲載しておられました。電車の中で興味本位で読み始めたら、近くに立っていたおっさんが連れの女性に向かって「今夜、君と濃厚接触したい」と口説き始めてそっちに気を取られ、note閲覧どころではなくなりました。

 電車を降りてから読み始めたら「我が意を得たり」の部分あり、また投資をする者として悩むところもあり、思うところを書いてみようと思いました。ただ、こりゃちょっと手の内書き過ぎかと書き終ってから思ったので、後半部分だけ有料にし、メルマガ『人間迷路』に回したいと思います。

 まず、一般的に「トリアージ論」で言えば、パニックの進行とともにみんな何となく冷静になってきて、最初は全面安となっていたものが、銘柄ごとに「こいつは利益を出しそうだし生き残るんじゃね?」という選別が進み、劣後の業績のところは引き続き売られ、選択的に「この会社は拾っておこう」という優良銘柄が残るよという話です。

 全面安になり相場を示す画面が真っ赤になって、投資家も追証が相次ぐようなことになれば、口座を置いている証券会社に資金を厚めに持つため何でもいいから売ろうという話にはなりやすい。日本で投資をしている人は日本円に戻し、ドル建ての投資家は米ドルを買い戻す動きが進んで、あらゆる相場から一気に資金が引き上げられて「Cash is King」という情勢になるわけです。

 一方で、今回のトランプさんの演説のように「お前ら、緊急事態やぞ」「みんなで危機を乗り越えるんやで」と呼びかけると、それを呼び掛けているのがトランプさんであるにもかかわらず、みんな「おっ、そうだな」という気分になります。不思議ですね、普段あんなにトランプさんを馬鹿にしていた市場関係者も、なんとなく冷静になったりして、3月13日はトランプさんの緊急事態宣言後に暴騰しました。

 これの収録は3月9日時点だったのですが、いわゆる暴落相場の最初は、このトランプさんの緊急事態宣言で社会的に引き締めるところでいったんは止まりはするんですよ。そこから先は、投資家各位の相場観の話になってきます。

 藤野さんは「戦う前提で相場を見ていくこと」を説いています。おそらく、他の人のお金を預かる立場として、責任もって相場に関わっていきますよという宣言であって、見ようによってはそういうポジションだという話であり、非常に大事なプリンシプルを示したものだと思います。

 私らのように、自分のカネを相場に突っ込んで勝負している側からすると、今回のコロナ騒動というのはあくまできっかけであって、相場全体のトレンドが変わる入り口であったと理解します。上記の動画でも説明しましたように、全体的に優良銘柄はそのほとんどにおいてクソ割高になっており、市場のトレンドが「まだまだ世界経済は成長していくのや」「世界各国はクソ金利と言われようとゼロ金利いたいな状態を続けてジャブジャブに資金を供給する体制になり、日本以外もゴミのような低金利であって、現金預金を銀行に置いとくぐらいなら相場を張ったほうがマシという過剰流動性のある異常な時代が続く」と思っていたから、理論的に証明できないような鬼割高銘柄でも「まあ、来年にはもうちょっと上がっているだろう」と価格に目をつぶって買い続けていたんです。

画像1

 「世界経済のネタ帳」さんとこからのダウ平均のグラフを見ていただければ分かると思うんですが、戦勝国である大正義・アメリカ様の経済は、ご覧のような株価神話によって彩られてきました。バフェット好きなあの子も長期投資イズベストの私も「アメリカが世界の中心であり、最先端の技術と最強の軍事力を持って世界を緩やかに統治している」という時代観から、アメリカ・アズ・ナンバーワンの信仰を持ち、優れた子どもはアメリカで教育を受けさせ経済の中心であるアメリカとの軍事同盟を(多少の理不尽は感じながらも)堅守してきたわけです。

 これらは、開かれたアメリカと、世界の自由な貿易体制、それを支える世界的な資金供給量の拡大によって実現してきた半世紀規模の大相場のトレンドだったんですよね。

 それが、米中対立構造になって、アメリカ対中国という覇権争いになっていけば、当然のことながらアメリカだけが人材を吸い寄せ、技術を独占し、コルレス口座の仕組みで世界の金融を一定の支配下に置くということはできなくなっていきます。ペンス副大統領が一昨年末に演説をした通り、中国に対抗することではなくて、中国「的な」専制国家が優れていると他国に政治体制パッケージが経済援助付きで輸出されることに対する戦いだという話に発展していくことになります。

 コロナウイルス禍というのは単純にそういうパンパンに膨れ上がった過剰流動性の中で、むしろ「いままで、実はワイらはバブルの真っただ中におったのでは?」ということに気づかされる事態であり、単純にコロナウイルスの流行に対する恐怖で一気にブロック経済化し、かつ、感染拡大防止のための集会禁止などの自粛ムードが実体経済を押し下げることになります。

 リーマンショック的なものは、ジャブジャブの資金が乗って浮いていた株価が、実は実態がなかったということでドーンとファンダメンタルズのところまで叩き落された状態でした。しかし、今回のコロナウイルスは株価が下がる、調整するという側面よりも先に、実体経済が回らなくなり、最初にしわ寄せがいくのが貧乏人やお年寄り、子どもたち、家族から切り離されたシングルマザーであるということになります。

 そのように補助線を引いていまの現状を理解しようとするならば、一過性のトレンドとして恐慌的に暴落して、あとは冷静になれば自律的に株価が回復していくよ、とはなかなかならないのではないか、とも感じられます。いま優良だと思える企業の株価は、本当に現在、三か月後、一年後に、それに見合う経常利益を出すことができるのかというところから考えていかなければなりません。藤野英人さんの説くトリアージは、単に不況時の銘柄選択というよりは、崩れたファンダメンタルズでも利益を上げられる企業を選ぶことであり、米中対立の構造になってもなお自由主義陣営の一角として価値のある集団を見極めることに他ならないのです。

 なので、私自身の相場観で言えば、いまなお「Cash is King」であり続けます。日本を拠点にしているのであれば、大部分の資産を日本円にし、インフレを怖れるの出れば需要が間違いなくある人口密集地(湾岸や港区千代田区など)の不動産に替えておくべきです。

 トランプさんの緊急事態宣言の後に、いったんは一気にダウ平均が改善し、おそらく来週は日本も欧州もそこそこ値を戻すでしょう。その後の相場の流れはこうじゃないか、という目論見については、確率の問題になってくるのですが、次のように思っています。

 私は、日本も政治的に強い立場を示す、中国も、アジアも、欧州も立て直しに向けて政治的なリーダーシップを発揮して、見た目は各国の強い意志でやり直すのだという機運で市場が一時的に盛り返すんじゃないかと。

ここから先は

5,719字 / 1画像

¥ 300

神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント