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メルカリ不正利用問題に見るKYCとAML/CFT対応の実際

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 先日、メルカリの決算が発表され、それなりの金額が不正利用対策の穴埋めに使われたという報道がありました。不正利用の穴埋めという形で表現されており、その概要は山口健太さんが記事にされています。


 当メルマガでも、メルカリの上場前から預かり金問題やKYC問題については指摘をしてきたのですが、構造上、メルカリのようなC2Cトランザクションを行うサービスが一定の不正利用の巣になってしまうこと自体は致し方なく、しばらく見ていて「悪質だなあ」と思っていた取引グループについてはメルカリも相応に努力してキャッチアップし、利用制限を掛けるなどの対策は行っていたようですので、本件の責任はメルカリだけに帰すべきものではなく、より包括的なネット上での安全な取引をどう制度上担保するのかという方向にシフトしているのは言うまでもありません。

 とりわけ、ワンタイムのクレジットカード不正利用でメルカリが踏み台にされたり、ボールペン3万円などの隠語で不適切なコンテンツや違法薬物などの取引が行われてしまうことを、サービス事業者に過ぎないメルカリに「すべて防げるようにしろ」と言ってもなかなか無理なので、ユーザー情報を基本的に信用しつつも問題取引のモニタリングを行う仕組みは弛まず続けていくしかないよねと思います。

 不正利用の観点で言うならば、クラウドファンディング大手のマクアケが大量の中華類似品プロジェクトで大揉めに揉め、同じく審査基準を強化したところ収益性の急落が問題になるなどの騒ぎに発展しました。そもそも私募の立て付けで小口出資の募集を簡便に行う仕組みである以上、法的にはインチキなプロジェクトを立ち上げた個人や法人の責任よりもその仕組みを提供したマクアケやキャンプファイアーなどマーケット事業者の側が負わなければなりません。メルカリも場を提供している形であるものの、これらのクラウドファンディングの「完成保証」を本来は募集者と同じ責任母体としてマーケット事業者が負わなければならないことを考えると、ソーシャルレンディングが違法取引の温床となったのと同様、そろそろ考えなければならない時期に差し掛かっているとも言えます。

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神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント