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短編小説集

99
私の書き下ろした短編をまとめたものになります。
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2021年2月の記事一覧

静 霧一 『戯羅偽良』

 私の左目から視る景色は青く腐食していた。  ヒソヒソと気味悪がる観衆、孤独の檻に鍵をか…

38

静 霧一 『星天に君は瞬く(下)』

※前の話はこちらから   夕暮れが、少しづつ顔を沈め、だんだんと夜が迫る。  僕はその光…

33

静 霧一 『星天に君は瞬く(中)』

※第一話はこちらから 「あ、天城!」  僕は焦りながら彼女に駆け寄り、傘を差した。 「遅…

36

静 霧一 『星天に君は瞬く(上)』

   どうして人は星に惹かれるのだろうか。  僕は夜空に瞬く星に、指をさしながら一つ一つ数…

37

静 霧一 『耳なし霧一』

 耳がもげるほど痛い。  先日まで春の陽気だったというのに、今日になって、2月の冷たさが…

48

静 霧一 『感染性バレンタイン失恋症候群』

  「ねぇ、昨日彼氏と別れちゃった」  あっけらかんとした表情で咲はランチのサラダを頬張っ…

47

静 霧一 『ネオン街の多重露光』

 渋谷の街に、ネオンの色が光り輝いている。  その光景は、幼き日に見た夢の国のエレクトリカルパレードのようであった。  現実と空想の狭間に、私は漂う。  ふと、目線を上げると、そこには鳥居ほどの大きさはあるであろう、白い光を放つ白熱電球に照らされたアーチ状の入り口があった。  そこには「Main street」と大きな文字がちかちかと点滅を繰り返しながら、眩く光っている。  そして、入口から真っ赤な色をしたレッドカーペットが、どこまでも続くネオンの街の果てまで、まっすぐに伸

静 霧一 『空の舞姫』

「―――痛っ!」  私は挫いた足首に顔を歪ませる。  左足を使って恐る恐る床に座ると、私は…

57

静 霧一 『愛Qと算盤』

  「57826」  緑色の数字がブザーの音ともに、黒い画面に表示された。  私は即座に頭の中…

54

静 霧一 『水天一碧』

(序)   冷たい水の中に溺れてゆく。  不思議と、苦しいとは感じなかった。  むしろ「あぁ…

45

静 霧一 『バレンタインなんて大嫌いだ、ばか』

『バレンタインなんて大嫌いだ、ばか』  もう私は何度、この言葉を口ずさんだろうか。  煌…

41

静 霧一 『朝と踊る』

   凍りついた夜が溶けていき、地平線の彼方が青と赤に滲んでいく。  私はその様子を眺めな…

55

静 霧一 『眩暈』

   真っ暗な部屋の中に、ポツンと僕だけがいた。  カーテンの微かな隙間から、外の光が漏れ…

64

静 霧一 『月詠の珈琲』

   私が白いカップに入ったコーヒーを見つめると、そこには白い満月が浮かんでいた。  ふと上を見え上げると、それは部屋に吊るされた和紙で包まれた照明であった。  それは夜空に浮かびながらほんのりと淡い光を照らす満月に似ていた。  最近はずっとこの部屋に引きこもって小説を書き綴っている。  外に出たいのは山々だが、世間は未曽有の事態だというものだから、こうやって机の上のパソコンに向かい合って、黙々と言葉を紡いでいるものだ。  このような未曽有の事態は、歴史上、幾度となく形を