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菫色の記録室|1|最終幕〜菫色の小部屋展

菫色の小部屋をずっと見守ってくれた
エントランスのクレマチス・アーマンディ

 吉祥寺で見る最後のクレマチス・アーマンディの季節が去り、花水木も花びらを落としました。輝くばかりの新緑を眺めながら、移転準備作業に勤しむ巡るましい日々を過ごしています。

 《最終幕〜菫色の小部屋》展(2023年12月)から季節は巡り、迎えた初夏。敬愛するアーティストの皆様が最終幕に寄せて下さった作品とメッセージを、感謝を込めてひとつひとつ辿りながら、これからやってくる未来へと思いを馳せています。改めまして、小さなギャラリーを大切に思って下さったアーティストの皆様とお客様へ、心からの御礼を申し上げたいと存じます。

 此処は、在りし日の菫色の小部屋の記録室。咲き誇る一輪一輪を、ぜひご高覧下さいませ。アーティスト作品、霧とリボンへの温かなメッセージ、霧とリボン主宰ミストレス・ノールからアーティストの皆様への返礼を掲載しています。

 移転を控えている関係で本当にささやかとなりましたが、《最終幕〜菫色の小部屋》展の売上の一部を、日本赤十字社を通して令和6年能登半島地震災害義援金として寄付致しました。

Arii Momoyo Pottery|陶器ブランド →HP
宗教的なモチーフ、アンティークの要素を取り入れた陶芸作品を制作。

Arii Momoyo Pottery|漆黒の花煙壺(2023年)

Arii Momoyo Pottery 様より——

霧とリボン様へ寄せて

ノール様ならではのご提案によって私の今後の制作に強く影響していくであろう作品をいくつも出品させていただいたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。夏の個展では菫色のお部屋にそんな作品を並べさせていただきましたことが大切な宝物です。
制作の面だけではなく、ノール様の細やかなお心遣いにはいつも尊敬の念を覚えております。本当にありがとうございました。また次の菫色のお部屋にてお会いできますこと楽しみにしております。

同前

Arii Momoyo Pottery 様へ——

いにしえの欧羅巴の何処かのキャビネットに、ひそやかに飾られてきた空気感を纏うArii Momoyo Pottery様の作品。宗教モチーフへの聡明な好奇心と時の奥行きを紡ぐ指先とが綾なす陶器作品は、持ち主のキャビネットで懐かしく新しい神話を語り出すことでしょう。
拙ポプリブランドとのコラボレーションで発表頂いた美しき花煙壺やポプリ壺は、次の菫色の小部屋へと夢を繋いでくれる逸品。昨夏、有井さまとお喋りした格別なひとときも忘れられない想い出です。

Text|ミストレス・ノール(霧とリボン主宰)

アンヴァンテール|フランスアンティーク&ブロカント店 →HP
遠い昔の誰かの記憶を感じる物語性のある佇まいに魅了され、2008年より福岡とパリを行ったり来たりしながらアンティークを集めています。

アンヴァンテール|ロビーヌの秘密セット

アンヴァンテール 様より——

私が出品させて頂くお品はアンティークですので、展覧会の度にテーマに即したお品が見つかるかどうかドキドキしながらの買付けでしたが、不思議なことに、毎回テーマにピッタリなお品がフラリと私の前に現れてくれ、まるで霧とリボン様の菫色の魔法でお品が引き寄せられているかのようでした。
菫と蝶のC&S、アイリスのイヤリング、鳥の羽飾りの少年ドール、菫の燐寸ケース、etc・・・今でもふとした瞬間に思い出します。

ノール様の妥協無き美意識ときめ細かさで作り上げられた菫色の小部屋。なんと美しくなんと胸を打つ、稀有な場所だったことでしょう。
新たな地での菫の開花便りを楽しみにお待ちしております。

アンヴァンテール|1960年頃ヴィンテージスワロフスキー
アンヴァンテール
19世紀末頃の菫色クリームポットと皿セット

アンヴァンテール 様へ——

海を越えて折々に届く巴里便りに、どれほど心震わせたことでしょう。彼方から流れ着いた菫色やすみれ花が、小部屋に異国の情趣を運んできてくれました。確かな審美眼で選ばれたアンティーク品から、アンヴァンテール様がひとつひとつ歩いて見つけた誠実な足跡が香り立ちます。
霧とリボンが所蔵する、ポプリ調香において最も重要な植物である「アイリス」モチーフのアンティーク・コレクションは全て、アンヴァンテール様のお見立てです。

Text|ミストレス・ノール

un jour|キャンドル作家 →HP
存在を主張しない美しさを思想とし、自然を紡ぎながら丁寧にひとつひとつ手仕事で作品を制作しています。

《月を詠むウィステリアとla nuit porte conseil》
綿密な植物画でありながら風景画的なマリアンヌ・ノースの作品はその空間へと私を連れて行ってくれるものでした。マリアンヌがウィステリアを描いた時にその場所に寄り添っていた香りを想像し、しなやかに凛と咲く植物を重ねました。夜の先を優しく灯すあかりでありますように。

Text|un jour
un jour
月を詠むウィステリアとla nuit porte conseil(2023年)

un jour 様より——

霧とリボンさまでの展覧会は本当に舞台を観ている様でその物語の中に自然と惹き込まれて行きました。菫色の小部屋から時代と世界を超えて自然に寄り添った展がとても印象的でした。
マリアンヌ・ノースの植物と香りの舟旅は壮大で美しい記憶に残るものとなり、個の中にあるあかりを優しくいつまでも灯し続けてくれることと想います。

同前

un jour 様へ——

un jour様の思想を写した端正なる真白きパッケージから、誰もが静謐な灯りの風景を想起することでしょう。そこにあるだけで空間が浄化されるような凛とした佇まい。ソイワックスのやわらかな炎と清廉な香り。キャンドルのぬくもりが自身と向き合うひとときをもたらしてくれます。
「香りの詩人」たるun jour様の手仕事に触れるたび、粛々と理想を追い求める折り目正しい感性を学びます。un jour様のキャンドルを通してマリアンヌ・ノースに出会えたこと、大いなる歓びでした。

Text|ミストレス・ノール

Under the rose | ビーズ刺繍アクセサリーブランド →X
碧い茨に隠された『秘密』(Under the rose)という名の宝飾店。
月が差し込む硝子ケースの舞台には 天鵞絨で着飾った
多様な動植物が集う ミラの星が輝く晩
仮初の自由を手に 一夜限りの宴が始まる…  
「空想宝飾店」をテーマに、昆虫をはじめとした動植物のアクセサリーを制作・販売しております。
ビーズ刺繍で着飾った、華やかで不可思議な世界をあなたに。

Under the rose
ビーズ刺繍の昆虫ブローチ No.33「ヴィオレッタ イヴェール」
(2023年/デザイン発表2022年)

Under the rose 様より——

憧れ続けた菫色の小部屋。当店からは、そのフィナーレに相応しい自慢の菫達をお届け致します。
霧とリボン様とご縁をいただくきっかけとなったビオラの作品「ビビ アンティーク」。菫を冠し、数々の展覧会を彩ってくれた蝶の作品「ヴィオレッタ」。思い出深い菫達を全色ご用意致しました。

この展覧会の盛況とこれからのご発展に願いを込めて。絢爛な最終幕を私自身も楽しみたいと思います。

Under the rose
ビーズ刺繍の昆虫ブローチ No.29「ヴィオレッタ」
(2023年/デザイン発表2022年)
Under the rose
ビーズ刺繍のビオラのブローチ No.8「ビビ アンティーク」
(2023年/デザイン発表2021年)

Under the rose 様へ——

一瞬で射抜かれた、ビオラのブローチ「ビビ アンティーク」。ガラスビーズやフレンチワイヤーでひと針ひと針装飾された特別な一輪が菫色の小部屋に届けられた日のことは忘れられません。以来、折に触れて秘密の宝飾店への扉をくぐり、お花や昆虫たちが華麗に舞う光景に心を奪われています。
モーヴ街8番地「ヴィヴィアンズ百貨店」にてオンライン個展をご開催頂いたこと、最終幕の小部屋にてご挨拶が叶ったこと。時の流れにビーズ刺繍された素敵な想い出を大切にしてゆきます。

Text|ミストレス・ノール

内林武史|美術作家・アーティスト →HP
東京都生まれ。木材、金属、鉱物、電気部品…など様々な素材で立体、オブジェ作品を制作。機械、都市、宇宙、時間をテーマに展覧会を開催。

内林武史|物語の街 −塔がみえる窓−(2023年)

内林武史 様より——

街に灯がともる、本の形をしたオブジェ『物語の街』は2020年に参加した企画展【ディケンジング・ロンドン】に出品した作品です。その思い出を振り返りながら前回の「街角」とは違う、遠くから鐘の音が聴こえてくる様な「塔がみえる窓」を制作しました。今回もスイッチの切り替えで夕暮れ色の「黄昏」と青白い「霧の月夜」の二つの光景が楽しめます。
本棚から引き出し、明かりを灯す度に菫色の小部屋の記憶が蘇ります。

同前

内林武史 様へ——

時の歯車が巻き戻され、工作少年の夢の中で戯れる時間。物語の扉をくぐり、新しい世界に出会う興奮。望遠鏡の先にワープして、異次元に身をゆだねる浮遊感。精巧に設えられた作品から溢れ出る魅力は尽きません。
少年の頃から変わらない創作への情熱が、表には見えないディテールにまで行き届く内林武史様の美意識の矜持。人の手が作り出す技巧とセンスの極みでありながら、同時に自然物のような存在感持つ作品に、多くの人が希望をみつけているに違いありません。

Text|ミストレス・ノール

宇山あゆみ|昭和の少女洋品コレクター・人形作家 →HP
昭和時代の「懐かしくて可愛い」をテーマにコレクションと創作で活動中。ケンエレファントとのコラボカプセルトイ「昭和ノスタルジック」シリーズのプロデュース担当。「少女スタイル手帖」新装版が(河出書房新社)2022年10月より発売開始。「昭和45年女」(クレタパブリッシング)にて連載中。

《菫色の仔鹿》
「霧とリボンの空間に辿り着いた菫色の仔鹿は、長い旅を終えて、ついに自分の居場所を見つけたのでした。」というイメージで作りました。

Text|宇山あゆみ
宇山あゆみ|菫色の仔鹿(2023年)

宇山あゆみ 様より——

物語には必ず終わりがありますが、ノールさんがご自身のお好きな世界を、作家の皆様と絶えず創り続けられた美しい想い出は、これからもずっと心の中にあります。ノールさんのあたたかなお人柄と実行力で、また新たな夢の世界を見せて頂けることに期待しています☆

宇山あゆみ 様へ——

昭和時代の暮らしの中で愛しまれてきたアイテムの膨大なコレクションを有する宇山あゆみ様。時の風化から救い出し、方々に散逸した時代の息吹をもう一度よみがえらせる心意気は、他の追随を許しません。
愛情と博学で培われた感性は同時に人形創作へも注がれ、モードも素敵なポーズ人形や愛らしいぬいぐるみとしてお披露目されてきました。分身であり、親友であり、外つ国へ共に旅する心強い味方でもあった小さな友を、宇山様の作品に触れるたび、懐かしく思い出すのです。

Text|ミストレス・ノール

影山多栄子|人形作家 →HP  
山吉由利子(球体関節人形)、宮崎優人(市松人形)に人形制作を学ぶ。石粉粘土と布を中心に様々な素材を使い、ひとりひとり違うお話を感じさせるような可愛らしさと不思議さを持った人形作りを心がけています。[個展]2003年 「うきわ」ギャラリー古桑庵、2004年 「まくら」ギャラリーNonc Platz。以後数年おきに個展を開催。ほか企画展、グループ展など多数。2007年創作人形専門誌「Doll Forum Japan 49号」表紙掲載。2018年 作品集「遠くをみている」発行。

《すみれすみれ》シリーズ
霧とリボン様の企画展初参加は2018年の《三編みのレッスン》でした。
その三編みから今までのひとつひとつ大切な展覧会と楽しかった思い出の数々を小さなふたりの人形につめ込んで、最終章の菫色の小部屋に送り出します。

Text|影山多栄子
影山多栄子
[左]すみれすみれ(輪)/[左]すみれすみれ(線)
(2023年)

影山多栄子 様より——

《レース模様の図書室》のように、ひっそりと美しい場所を作って下さって、本当にありがとうございました。これからの展開も楽しみにしています。

影山多栄子|すみれすみれ(輪)

影山多栄子 様へ——

見知らぬ異国の骨董屋に陳列されている佇まいと、懐かしさつのる民藝品の風合いを併せ持ち、私たちのすぐ側にいながら、「遠く」を運んできてくれる影山多栄子様のお人形たち。
メンデルスゾーン「夏の夜」、ダンセイニ卿、宮沢賢治『春と修羅』——魅惑の展覧会テーマは影山様との対話の中から浮かび上がってきたものです。優しい視線の先に、この世に存在することの「小暗さ」を常に見据えていること。影山さまの人形に惹きつけられる最も大きな理由です。

Text|ミストレス・ノール

金田アツ子|画家 →X
絵を描いて、個展やグループ展などで時々発表しています。静かな喫茶店とピアノの音が好きです。

金田アツ子|菫色の小部屋へ(2023年)

金田アツ子 様より——

菫色の招待状が届いたハームズ&モペスン、旅の先には美しい菫色の小部屋が待ってしました。なんだか懐かしい気持ちのふたりです。ふたりは覚えてないようですけれど、冒険はここから始まったのですよ。
菫色の冒険は、これからもずっとずっと続きます。いつでも終わりだけれど、いつでも始まりなのです。

金田アツ子|菫色の招待状(2023年)

金田アツ子 様へ——

猫国のベイカー街で珍道中を繰り広げるハームズ&モペスン。愛すべき二人組をこの世界に届けて下さったこと、詩人エミリー・ディキンソンを身近に感じることができたこと、植物への愛がいっそう深まったこと——金田アツ子様のチャーミングで優しい、そして気高い画業から得た発見と喜びは数え切れません。
新しく始まる菫色の小径の先には、アツ子様に見守られたハームズ&モペスンが待ってくれています。今度はどんな冒険になるかしら? 

Text|ミストレス・ノール

河井 いづみ|イラストレーター・アーティスト →HP 
鉛筆画やリトグラフによる独自のテクスチュアを生かした、躍動と静けさが同居する世界観が魅力。2003年より3年間フランス・パリのアーティストインレジデンス等で活動。現在は東京を拠点に、書籍装画、広告、ファッションやパッケージのイラストやデザインなど、幅広い分野で仕事をする他、国内外での個展やアートフェア参加など展示も多数行う。

河井いづみ|夜空の足跡(2023年)

河井いづみ 様より——

霧とリボンの空間や、そのテーマカラー「菫色」「アブサン色(グリーン)」を想った時、私の目の前には澄んだ夜空が広がりました。菫色の小部屋の窓から、無重力に浮かび上がり、星々と遊びたい。そんな気分を絵にしました。
ノールさんの小さな宝箱の中に入れてもらっているような、霧とリボン店内に流れる菫色の香りと空気が好きでした。今後の新たな展開を楽しみに待っています。

河井いづみ|スミレの雫(2023年)
河井いづみ|月夜のふくろう(2023年)

河井いづみ様 へ——

紙面という真白き世界に反響する、リトグラフの色彩と質感のモダニティ。鉛筆で描かれたモノトーンの静物や風景には、人の気配がそよそよと渡っています。
身近なモチーフが、不思議なパターンや造形との組み合わせにより新しく出会う世界への断片となり、日常に鮮やかなスリットを入れてみせる河井いづみ様の作品群。幅広いご活躍ジャンルは、しなやかな感性の証。これから出会う「断片」の飛翔が楽しみでなりません。

Text|ミストレス・ノール

川島朗|造形作家 →HP
1997年より、個展・グループ展などで作品を発表。空想によって創り上げた架空の物語・神話・歴史・映画をもとにボックスオブジェやコラージュ作品、樹脂を使用したアクセサリーなどを制作している。
近年の主な個展に2019年『失われゆくものたちのソナタ』(霧とリボン・東京)、2018年『アルマ・ランガーの秘密の部屋 〜アルマ・ランガー コレクション 〜』(antique Salon・愛知)などがある。

《霧の小部屋にて》
小箱に忍ばせた小さな試験管に、封じ込められた遠い霧の記憶。どこか遠い街の架空の小部屋のイメージと、霧とリボンの美しい室内の思い出を重ね合わせて制作したオブジェです。

Text|川島 朗
川島 朗|霧の小部屋にて(2023年)

川島 朗 様より——

細やかな心遣いと美意識に裏打ちされた『霧とリボン』という稀有な空間で、個展『失われゆくものたちのソナタ』を開催させていただけたこと、僕の作家生活の中でも一際美しい思い出として残っております。その節は大変お世話になりました!新たな地に移られても、密やかなる美意識はそのままに、さらに奥深く美しい物語が紡がれますこと、楽しみにしております。

同前

川島 朗 様へ——

つかまえられないけれど、確かに存在している「時」という存在。川島 朗様の憂愁の作品に出会うたび、時が持つ幾つもの不思議をこころに留めます。
蓋をあけると待っている記憶の苑。立ち込めた霧は時の残滓。その中を彷徨っていると、朽ちてゆくもの、失われゆくものたちが奏でるソナタがどこからともなく流れてきます。
楽の音の方へ、歩いていきましょう。奏者は今日も霧深いアトリエで、美しき記憶の断片を爪弾いているに違いありません。

Text|ミストレス・ノール

 この後、「菫色の記録室」は三部屋続きます。配信状況は後日改めて、霧とリボンのSNSにて告知致します。ぜひまた、ご高覧頂けましたら幸いです。

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