菫色の実験室vol.5|アンヴァンテール|菫嬢のブドゥワール
今日の実験室へは、白衣ではなく、アンティークのティドレスを纏って訪問するようにとの指示でした。ルネ・ヴィヴィアンの古い写真を彷彿とさせる、総レースの白——長廊下のスミレの群生に、霧が降りるように裳裾が触れてゆきます。
スミレの砂糖漬けの甘い香りを辿ってゆくと、ある扉の前で、少し重めの白粉の香りがふんわりとひらきました。薔薇の優美も含んだパウダリーがレース模様の隙間に沈んでゆき、ロマンティックな旅行への準備が整いました。
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旅券を片手に入室したお部屋は