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やたらデカい謎の黒い虫にビビる私

帰宅後、明日の弁当と晩飯づくりを始める矢先のことです。
キッチンの窓あたりから「ブブブブブ…」と羽根の音がしました。
一旦聞くと不快な気持ちになる、害虫の羽音でした。

最初はスクリーンカーテンに隠れていると思いました。
くるりと開けてみても、奴はいません。
今度は蛍光灯を付けてみます。奴はそこにいました。

尻に短い突起がある、黒い虫でした。
ハチかアブと思い、ビビリました。

本当はスタエフの料理配信をするはずだったのに、料理する気が失せました。
しかしここは冷静になるのがキモ。殺虫剤を探しました。我が家には強力タイプの殺虫スプレーが置いてあり、有事の際はそれで害虫駆除をしています。
しかし見つけたのは、キンチョールとアリ用の殺虫剤。強力タイプはいくら探しても見当たりませんでした。
あるだけマシなので、右手にキンチョールを装備します。その時奴はリビングの照明に移動していました。タイミングを見計らいながら、奴の動きを観察します。

程なくして、奴は私がいる方向に姿を現しました。その刹那、キンチョールを噴射しました。

…届きません。

何度目掛けてキンチョールをシューしても逃げ惑う奴。早く倒れろと願いながら照明付近をジッと見つめる私。
奴は防衛本能に従ったのか、私めがけて突進しようとしてきました。

これにはさすがの私もヤバかった。
ハチだったら生命危機なので、すぐに2階の自室に退避しました。
それから20分後、マスククリームを塗るために1階へ下がってみると―奴の姿がありません。羽音もしなかったので、その隙に弁当のおかずと晩飯を作りました。晩飯は安全を考慮して2階で食べました。

母が帰ってきて、家の中に虫がいることを話しました。
すると母は、リビングの片隅に横たわっている小さな虫を発見しました。
なんとその虫は、あれだけ私をビビらせた奴ではありませんか!

奴はハエの一種に値する個体でした。
あれだけ私をビビらせた謎の黒い虫は、大した毒性も凶暴性も皆無に等しかったのです。

母は「あんな小さい虫なんて、虫にすら値しない」と吐き捨てて、奴の躰をティッシュに包みました。

どこからかやってきた名もなき虫は、虚勢で巨大な幻を作り上げて一人の人間を震え慄かせた後、息絶えました。
誰もいないリビングで、キンチョールまみれになりながら最期まで羽音をブブブと鳴らしたのでしょう。

そう書くと「小さな命でもカッコよく散ったんだな」と印象付けられますが、これから料理する場で虫が屯するのは正直言って嫌です。
願わくば…二度と家の中には入ってこないでほしいですね!

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