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羊皮紙に印刷して木製表紙で製本した話


そうだ、魔導書を作ろう

AI使いの自称、他称の一つとしてAI術師なんてものがありますが
由来はpromptという呪文を使ってイラストを召喚するかららしいんですよね。

でも、その割に魔導書、みんな持ってないですよね。
なら作りましょう、という感じで夏コミに作って持って行った
羊皮紙+木製表紙+自家製本で作った本の製作忘備録です。


魔導書の定義

という訳でまずは本の様式の確定です。
月刊ムー・キモ・オタクなので紙はマジの羊皮紙で確定なのですが
魔導書の適切な製本方法がわかりません。

そこで、そもそも魔導書っていつ頃成立したの?という事を調べたんですが
我々が想像する魔導書は大体18~19世紀のオカルトブームに合わせて作られたものという知りたくもない現実がありました。

それだとあまりにも身も蓋もないし、
18世紀の様式で魔導書を作ると手間と予算的にヤバいということもあり、
どうにか実現可能な製本手段はないか…と探していたところ、
クトゥルフでおなじみネクロノミコンの設定に
ウォルミウスの13世紀ラテン語版の写本というものがあるというのを知りました。
往時の製本はコプト製本なので簡単で安上がりという予算都合もあり
13世紀に出来た魔導書という事で製本方法はコプト製本で確定。
様式の年代も決まったので表紙の様式も木製で確定しました。

決まってしまえば、後は作るだけです。

※ゴシック様式の製本手順動画。手間がヤバイ。そもそも道具もない。

※コプト製本の製本手順動画。簡単だし、100均のアイテムだけでいける。

材料の調達

ここの難易度は低く、意外と簡単にできました。

羊皮紙

難しいようで簡単だったのが羊皮紙の調達でした。
以下のサイトから普通に通販出来ます。

羊皮紙工房さま / 羊皮紙販売ページ
https://youhishi.com/shop

もっとも、入手は簡単ですが最安の山羊皮でも
A4サイズ(本のサイズはA5仕上り)で1枚2,860円という
ハードカバーの本一冊より高い紙ではあります。

表紙用木材

これも簡単でした。
ちょっと大きい東急ハンズなら大体置いてありますし、
任意サイズで切り出してもらえるサービスがあります。
※ホームセンターでも概ね同じようなことが出来ます。

東急ハンズ新宿店 加工サービス
https://x.gd/pDSal

ただ、基本的に日曜大工での使用を想定している品揃えなので
気の利いた感じの木材の取り扱いはありません。

当初は自分の世界観重視あたりの採用を考えていたのですが
どちらもちゃんとした木材屋でのみの取り扱いで断念。
金額のバランスがとれていたホオノキとしました。

とはいえ、時間さえあれば木材は調達自体は簡単、安価な分野なので
次回はチャレンジしてみたいですね。

製本用具

地味にそろえるのが大変だった項目。

針だけは和綴じをやった時と同じく100均でどうにかまかなえたのですが、
紙を折るヘラが羊皮紙(動物の皮)に負けて1枚でオシャカになったため
最終的に水道橋の製本専門店シカの骨のヘラを手に入れる羽目に。

http://riiburu.com/

また、往時の綴じ糸として使われた麻紐や羊毛については
織物用の太いものばかりで(当然の話)、製本に適した細いものを探して
糸の問屋まで行く事になりました。

もう人力で製本する時代じゃないのね、というのをひしひしと感じる一幕でした。

印刷

一番苦労した部分でした。

気合を入れるのであれば羽ペンで手書きなのですが、
流石に時間との兼ね合いで断念(次回は一部でもいいからやってみたい)。
とはいえ、じゃあ印刷だとなっても
人生で動物の皮に印刷した経験は0ですから、適切な形式が判りません。
また、羊皮紙の持ち込みで印刷してもらえる印刷所も流石に知りません。

何はともあれテスト印刷

ただ、嘆いても仕方ないので、ひとまず羊皮紙を手に入れてみて
自宅の家庭用プリンターでテスト印刷です。
羊皮紙とはいえ紙(紙ではない)だし何とかなるだろうと
半ばヤケクソで試してみましたが、いくつか収穫がありました。

・家庭用インクジェットプリンターでも印刷できる
最近のプリンターは優秀なのか、あっさり印刷できました。
とはいえ条件付きです。

⇒染料インクはNGで、顔料インクはOK
厳密には染料でも行けるんですが、羊皮紙には表裏が明確に存在し、
肉側外皮側染料インクの乗り方が異なります。

具体的には肉側はインクが染みるので染料でも綺麗
外皮側はインクが染みにくいため、にじむうえにインクが浮きます。

顔料インクはインクを浸透させないので表裏関係なく綺麗に出ました。

上記を受けて、インクは顔料がベストであり、
印刷所のプリンターでも顔料であれば印刷可と思われる事がわかりました。

印刷所探し

ダメもとで同人誌を印刷している印刷所に問い合わせるものの、当然のごとくNG。
近くのチラシとかを印刷しているところに問い合わせてみても
「顔料はやってないし、そんなのに印刷するの怖いわ」と一蹴。
そらそう。

考えられるすべての連絡先に問い合わせた結果、
意外と身近なところに印刷所の営業さんが居たので結構無茶を言ってねじ込んでもらいました。

次もやってくれるかはわかりませんが、
羊皮紙に印刷したい気狂いは、自分までご連絡いただければご紹介します。

中身を作る

印刷所も決まった、どうにか材料も用意したという事で次は中身です。
テキストは全部ラテン語で書くことだけは譲れないのと
真面目に値付けすると20万ぐらいになるので売り物にならないため
書いたテキストが一切日の目を見なくても文句を言わないバカ(褒めてる)を探す必要があります。

一人目はよくご一緒して結構思考がイッてることを知ってる(褒めてる)
イツメンの猫黒夏躯さんでいいか、といつものように巻き込むことにしたんですが、
ページの都合上、もう1名を探す必要が出てきました。

こういう場合、概ね852話さんを軽率に巻き込むのですが、
当時確か忙しくされていたこともあり、さすがに声をかけるのは憚られ…
Twitterで哀れな犠牲…もとい共同作業者を探していたところ、
花笠万夜さんを見つけ出しました。

何で誘ったのかはもう覚えてないです。
当時のDMを見ると「和綴じに反応していた」とか書いていたので、
多分哀れにもそういうことをしてしまったのでしょう。

結果として人選は大正解で、ニュアンスを理解してくれた上で一切日の目を見る予定のない長文を高速で起こしてくれました。

最近はいろいろ巻き込み過ぎて花笠さんにキレられてる気がしますが、
一切反省していないので、引き続きよろしくお願いします。

ラテン語に直す

AI界隈は大体いい歳したオッサンか大学生しか居ないので
以前AIけっとの打ち上げでご一緒した東大生の子のツテでラテン語を専攻している大学生を紹介してもらい、
Google翻訳で一旦全文翻訳⇒おかしい部分を大学生の子に修正してもらうという体制を取りました。

正直、事前予想では最も苦労する部分と考えていましたが、
Google翻訳のラテン語翻訳精度がとても高かった(らしい)という事もあり
拍子抜けするぐらい簡単に終わり。

Google優秀。

表紙作成

表紙っていうか表木ですけど、往時のスタイルに合わせる形で木製で作成。
これ自体は浮世絵の再現の為に版画をやろうとしていたことがあったので
彫刻用に線画を抜いた2色データさえ用意出来ればレーザー彫刻でどうにでもなることは判っていました。

こういう感じの2色データが要る

AI生成でどうやっていい感じに2色データを作るか…というところで試行錯誤していたところ、852話さんから「クリスタで出来るよ」とのご神託が。

実際にクリスタのライン抽出であっさり出来てしまい、
1週間ぐらいあれこれ悩んでたのは何だったんだとなりましたが
まあできたのならヨシ、という事で。

実際のレーザー彫刻の仕上がりもいい感じで満足でしたし、
色々と遊び幅も広そうで、応用できそうかなと思いました。

こういう仕上がりになる

製本

ここは正直話すことがない。

木製表紙だからドリルで穴開ける必要があるとか、
羊皮紙って動物の皮だからやっぱりドリルで穴開ける必要があるとか、
まあそれぐらいです。

コプト製本については下の動画を見てください(再掲)。

次の目標

予算的にヤバいんだけど、18世紀の様式で本を作ってみたいですね。
現状概算見積もりで原価100~150万ってところですけど。

ちなみにこの本の原価は大体15万ぐらいです。

さいごに

ごめん、もう終わったことでもあるので後半ちょっと飽きてやる気のない文章です。
そのうち綺麗にします。

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