地方へのベンチャー企業の誘致で最適な策はあるんだろうか
先日、ベンチャー企業の誘致を行いたい自治体のセミナーを受けてきました。
withコロナと言われる昨今、都心から地方への移動の流れは、企業・個人ともに活発なように見えます。
どこのデータかは失念しましたが、東京からの流出者数も増えているそうで。テレビでもテレワークで地方移住みたいなことは騒がれています。
地方自治体やそこの住民にとってこの流れはチャンスと言えるでしょう。
東京の給料をもらっていた人間がそのまま地方に移住。そしてお金を落とすことによる経済効果は確かに期待できる物がありますから。
また、企業誘致をすることで若い人へ仕事の場を提供することもでき、結果として若者の流出を防ぐことができます。
こういった地方の企業誘致の活動は今に始まったことでなく、古くは大手メーカーの工場誘致などを行っていました。
ただ、現在はメーカーの工場なんかはより人件費の安い海外へ移転したり、そもそも工場や工業団地を建設するためには時間がめっちゃかかったりといった問題があり、メーカーを誘致するというのは現実的ではなくなっています。
そこで一部の自治体がターゲットとしているのがIT系のベンチャー。ITならPC一個あればどこでも仕事ができる側面が強く、ベンチャーという規模なら受け入れ側も空き家を改修してオフィスにするなどスピード感を持って誘致を進める事ができるというのがあります。
ここまでが前提。
とはいえ、企業側もいくらオンラインでミーティングやら商談ができるとは言え、ブランド的にも利便性面でも便利な東京から地方に移るにはそれなりのメリットがなければいけません。
地方は企業に対して何を提供できるのか。
セミナーには複数の自治体が参加しており、それぞれ「こんなメリットがあるよ」と言っていました。
よくよく話を聞いていると大きく3つの傾向に分かれているなという感じです。
①人材を供給できる(地元にプログラミングスクールとか情報科をもつ工業高校があり、IT人材を格安で確保できるよ!)
②ビジネスチャンスがある(地元の事業者や顔役への顔つなぎ、地方自治体との実証実験)
③コストの低さ(オフィスの家賃安いよ!社宅も空き家使うからタダ同然で住めるよ!)
う〜〜〜〜ん。やっぱそうなっちゃうかぁって感じですね。
②もいろいろ気になりますが、特に気になったのは①と③。
①、③が気になった理由・ツッコミどころ
・地方なので生活費がかからないという理由で報酬が抑えられる。結果地方内の他の職種に流れてしまう。万一その会社で就職しても、高い給与を求めて都市部へ転出という流れになってしまうのでは?
・単価の高い上流工程だとクライアントとの折衝があったりするんでなんだかんだで都市部にとどまりそう。結果として地方に流れるのは下流工程となる。しかし下流工程なら海外の方が安いよね、ということになり企業にとってはメリットを感じられないのでは?
・「コストが安いから」という理由だけだと企業側はよりコストを下げる方向に動く。結果として地方の中でもより賃料がかからないところ(海外含む)へ引っ越してしまうのでは?
結局メーカーが本社・営業機能を都市部へ、工場を地方へと分けていた流れとあんまり変わらん気がするんですよね。
そしてメーカーが工場を海外へ移転したように、システム開発拠点も海外へ移行するんじゃないかと(しかも施設とかメーカーほどいらんからスムーズよね)
まぁ、スタートアップとかが、とにかく人件費を下げるために地方に拠点をおく。というのなら海外へ流れるのは無いんですけど。ただ、営業しなくちゃいけないのに地方となるとやりづらそうだな。というのもある(もちろんオンライン商談とかもできるけど、扱う商材とか単価によっては対面になっちゃう)
なので今後上場を狙うようなスタートアップやベンチャーは厳しいんちゃうか?というのが個人の感想。
地方密着型のITベンチャーなら可能性はあり?
一方で、持続性や地域でのメリットという点で、②の打ち出し方は良いかなと思っています。
地元の事業者(大体飲食か観光産業だと思うけど)や顔役(商店会長さんとかだったりする)との顔つなぎって点に言及すると企業が地域を選ぶだけでなく、地域が企業を選ぶという目線も出てくる。
(地域住民がその企業が地域に必要かどうかを判断するって考え方はある意味ローカルファンディングと思想的に近い)
地域住民が必要かどうか選ぶってなると、結局地域の事業者・住民に役立つサービスとなるわけです。
となるとIT系で受け入れられるんってWEB制作やWEB広告代理店のような仕事だけじゃないかってきがします。
飲食店とか商店だと、HP制作だったり、SEO・MEO対策だったりは割とニーズありますからね。
あとは、本当にアーリーステージのベンチャーが実証実験やるくらい。
でもそういう会社ってフェーズが進むといなくなる可能性もある。
なので、逆にアーリーステージを資金面、人材面で支援する。って考え方で企業誘致。いや、それ以前の企業のインキュベートをするって考え方がいいのかもしれない。
あとは、ZOZOタウンのようなB2CでWEBサービスを展開している企業もありですね。特にEC系なら、家賃のかさむ倉庫を地方に持てるというのは利点。
まぁ、僕の住んでいる三浦の場合、高速道路の料金が高く、配送コストの面で微妙ですが。
まとめ:ITベンチャーを誘致するのではなく、産み育てるって考え方でもいいんじゃないのか?
ITベンチャーを誘致するのは、上に挙げたように微妙な点も多いです。
なんせ、メリットがそこまでなく、地方側が打ち出したい人件費の安さは結局そこまで企業側に刺さるポイントではないと考えられるからです。
とは言え、地方側も高付加価値な仕事をもたらして、税収アップや人口流出減につながるアクションをしたいという背景も理解できます。
であるならば、僕は産み育てる。というアクションこそ大事ではないだろうかと考えるわけです。
高齢化、買い物弱者など地方は都市部と比べて課題が多い一方、課題解決の担い手も少ない。
その中で課題解決に取り組んでくれる起業家や組織を行政や企業、地域が一緒になって育てていく。
課題解決の中で出来上がったサービスを全国へ展開する。そんなモデルが出来上がれば地方に高付加価値の仕事が生まれ、良い循環が起こっていく。
そんな可能性がある気がしてならないんです。
そのためには何より資金面の支援は必須でしょう。
地方の信金と自治体で共同出資してVCでも作れないものでしょうか?(そのへん法律詳しくないからなんとも言えないけど)
VCの運営者にはいわゆるコンサル上がりの人だけでなく、地元住民も加える。技術的なことやビジネスモデルの良し悪しはコンサル上がりのような優秀な人に見てもらう。
さらに、「そのサービスが地域にとって本当に役に立つのか」を住民目線で判断し、出資するかどうかを決める。
そんな仕組みがあっても面白いんじゃないかと思ったりするわけです。
この文章は別に金融に詳しいわけでもないただのベンチャー勤務の人間の戯言ですが、誰か様のアイデアになればと思います。
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