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古着の記憶/それは試着室で甦る 001-2/映像脚本

○STRESS・外
   音楽「脳を占領する…変な記憶…」イン。
   店の中から正臣(マサトミ)が出て来て、『急用のため一時閉店』のプ
   レートをドアに下げ、店内へ戻って行く。

○同・内・試着室
   桜木(オウギ)がしゃがみ込んでいる。
桜木「いきなりなんだよ!? なんなんだ!? 脳の中に出て来やがって! 鮮
 明でクリアだけど、オレの記憶じゃない! 止めろよ! 勝手に 暴れる
 な! オレの脳を占領するな! 変な記憶を埋め込むなよ! ていうか誰
 だよ!? 誰なんだ!?」

○京子のオフィス・内
   桜木が、京子の前で土下座している。
   と、京子が座り、桜木の頭を膝の上に乗せ、頭を押さえる。
桜木「(頭を動かそうともがく)や、止めてください!」
   音楽、アウト。
京子「あなたの部下は、無能揃いなの? またあなたにこんな真似をさせ
 て。静かにしなさい。謝罪に来たんでしょ?」
桜木「(もがくのを止め)本当に、申し訳ございません!」
京子「(桜木の頭をなぜながら)いいのよ。そのたびにあなたがこうして来て
 くれるんだもの」
桜木「社長…」
京子「ほら、また」
桜木「いえ、高原社長。お願いですから、もう止めてください」
京子「あら、いいの? ウチとの取り引きがなくなっても」
桜木「え? あ、あの…」
   京子、勢いよく立ち上がる。
   桜木、おでこを床にぶつけ、悶絶する。
京子「ごめんなさい! 痛かったでしょ? でも、あなたが悪いのよ。いつ
 までも言うことを聞かないから」
桜木「(身体を起こし)何度も言いますが、私には婚約者が…」
京子「一度、その婚約者に合わせてよ。私よりも美人さんなのかしら?」
桜木「ミキには手を出さないでください! お願いします!」
京子「ミキさんて言うのね」
桜木「あッ! いえ、あの…」
京子「(頷きながら)もういいわ。帰りなさい」
桜木「(立ち上がりなから)お願いですから、彼女には何もしないでくださ
 い!」
京子「大丈夫よ。家も何にも知らないんだから。そうでしょ?」
桜木「(深々とお辞儀をして)本当にお願いします。彼女には何もしないでく
 ださい。失礼いたします。(オフィスを出て行く)」
   京子、デスクの上のスマホを取り、電話を掛ける。
京子「あ、私。一条健一の周辺を探って、ミキという女の住所を調べて。す
 ぐにね。(ニヤリと笑い、電話を切る)」

○YMマンション前の道路
   黒塗りの高級車が走って来て停まる。
   運転手が降りて来て、後部座席のドアを開ける。
   と、中から京子が降りて来る。
京子「荷物を持って、一緒に来て」
運転手「え? は、はい。(車から大きな荷物を出す)」
京子「早くして。行くわよ」
運転手「は、はい」
   二人、マンションへ入って行く。

○同・エントランス
   京子、部屋の番号を押す。
ミキ「(声)どちら様ですか?」
京子「一条さんにお世話になっております、高原と申します」
ミキ「(声)あ、はい、お世話様です。それで、ご用件は?」
京子「一条さんに頼まれて、ミキさんにお届け物です」
ミキ「え? あの、一条さんに確認させていただいてもよろしいですか?」
京子「(運転手を引き寄せ)ちょっと重い荷物ですので、とりあえず、入れてい
 ただけませんか?」
ミキ「(声)あ、すみません。どうぞ」
   オートロックが解錠され、京子と運転手が中へ入って行く。

○同・エレベーター・内
   京子が運転手に耳打ちする。
運転手「(驚き)え!?」
京子「上手くやったら、一生遊んで暮らせるお金を上げるわ」
運転手「で、でも…」
   エレベーターが停まり、扉が開く。
京子「いい、しっかりやるのよ!」
運転手「は、はい…」
   二人、エレベーターを降りる。

○同・ミキの部屋・リビング
   京子は椅子に座り、運転手は荷物をテーブルに置き、傍らに立つ。
   ミキがお茶を持って来て、二人の前に置く。
京子「ありがとうございます。(運転手に)座ってご馳走になりなさい」
   運転手、椅子に座ろうとして躓き、お茶をこぼしてしまう。
京子「何してるの!」
運転手「申し訳ありません!」
   ミキ、キッチンに布巾を取りに行く。
京子「ごめんなさいね、ミキさん」
   そう言いながら、ミキのお茶に睡眠薬を入れる。
   ミキ、布巾を持って戻って来る。
京子「(布巾を受け取り)私がやりますから、お茶を飲んでください」
ミキ「あ、すみません。新しいお茶を持って来ますね」
京子「(テーブルを拭きながら)いえ、大丈夫です。それより、お茶を飲みま
 しょう」
ミキ「え、ええ…」
   京子とミキ、お茶を飲む。
   落ち着かない運転手も、残ったお茶を飲み干す。
ミキ「(運転手に)お代わりをお持ちしますね」
   と言って立ち上がると、バッタリと倒れる。
京子「(ニヤリと笑い)よく効く睡眠薬ねぇ。(運転手に)さぁ、やっちゃっ
 て!」
運転手「は、はい。(と躊躇する)」
京子「早くしなさい!」
運転手「(意を決し)わかりました」
   そう言ってミキを抱き上げ、寝室へ行く。
   京子、残ったお茶をゆっくりと飲み干す。

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