スーザン~物語を聞かせてよ 001
【登場人物】
菅沼八讃(スガヌマハッサン):物書き&フリーター。二十八歳。
スーザン:フサフサの茶色の毛の雌猫。八讃の夢の中で人間の女性になる。
○八讃のアパート・二階建て・外
一階の八讃の部屋の前に、スーザン(雌猫)がチョコンと座ってい
る。
そこへ、コンビニの袋を持った菅沼八讃(二十八、少し酔っている)
が帰って来る。
スーザンに気づき、
八讃「あれ、今夜は可愛い猫ちゃんが、お出迎えしてくれてらぁ」
スーザンに近寄って行く。
と、スーザンは、素早く少し離れて行く。
八讃「(その場に座り)何もしないよ。仲良くしようよ」
スーザン、八讃をジッと見る。
八讃「綺麗な目をしてるね~。そんなに警戒するなよ。もしかして、誰かに虐待されたのかい? ていうか、どうして僕の部屋の前に座ってたんだい? はじめましてだよね? そっか、お腹が空いてるんだね。でも、キャットフードは買って来てないんだよ。ねぇ、ちょっと待っててくれよ。すぐそこのコンビニで買って来るからさ。(立ち上がり)どっかに行っちゃうなよ。(と走り出す)」
○同・外
八讃が、コンビニの袋を持って走って来る。
部屋の前に、スーザンはいない。
八讃「(立ち止まり)やっぱいないか。だよなぁ…」
と、アパートの脇から、スーザンが出て来る。
八讃「(それを見つけ)よかった。いたのか」
急いで、袋からキャットフードと紙皿を出し、スーザンの前に持って行く。
と、スーザンが、二、三歩、後ずさりする。
八讃「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。ほら、食べろよ」
スーザンは動かず、ジッと八讃を見ている。
八讃「わかった、わかった。僕は部屋に入るから、ゆっくり食べてくれ。(カギを開け、部屋に入る)」
スーザン、辺りを見回し、餌の所へ行き、食べ始める。
と、八讃が部屋のドアを少し開けて覗き見る。
八讃「(小声で)よし、食べてる。…可愛いなぁ。キャットフードを買っておくから、また来いよ。あ、そうだ。名前を付けよう。え~とね、僕が八讃だから、サンの付く…う~んと…ていうか、左の耳がカットされてるからメスだね。保護猫なんだね、君は。そうだ、こないだ、古い映画を観たんだけど、それに出ていた女優さんに一目惚れしちゃったんだよね。スーザン・ジョージさんていうんだよ。だから、今日から君を、スーザンと呼ぶね。スーザン、美味しいかい? って、キレイに食べたね~」
と、スーザンが、夜の闇に消えて行く。
八讃「スーザン、またね。おやすみ。(ドアを閉める)」
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